プライマリーケアで使用可能な、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成

文献情報

文献番号
200833056A
報告書区分
総括
研究課題名
プライマリーケアで使用可能な、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成
課題番号
H20-こころ・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 長久(国立精神・神経センター)
  • 中川 伸(北海道大学大学院医学系研究科)
  • 内田 周作(山口大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 高精度で診断を補助できる客観的な診断指標の確立は、プライマリーケアにおけるうつ病診断技術を向上させ、うつ病の早期発見と早期治療導入を促進する。本研究は、従来の限られた測定値に依拠するものと異なり、DNAチップを応用して白血球内のmRNA発現を網羅的に解析し、その発現パターンを基にプライマリーケアで使用可能なうつ病の診断指標を確立することを目的とする。
研究方法
 研究に参加することについて文書により説明し同意を得たものを対象とした。診断は、DSM-IVに準拠した。採血は、午前10時から午後1時までの間に医師または看護師が、安静下に肘静脈より行った。うつ病の重症度はハミルトン評価尺度で評価した。外来診察終了後に血液5-10mlを採取した。キアゲン社製mRNA抽出用試験管を用いてmRNAを抽出した。抽出したmRNAを行い、アジレント社製DNAチップを用いて遺伝子mRNA発現量を網羅的に解析し、クラスター解析を行った
結果と考察
 平成19年度までの、未治療うつ病を、感度83%、特異度92%という高い精度で、健常者から識別することに成功した。平成20年度は、新たに共同研究体制を組み直し、この所見を別のうつ病集団で追試するために、症例集積を継続した。同時に、双極性障害、不安障害および精神病性障害の症例の集積をはかった。集積した遺伝子発現パターンと臨床データとの関連を解析し始めている。それとともに定量性に優れるリアルタイムPCRを用いていくつかの特定標的遺伝子のmRNA発現量の解析を進め、phosphodiesterase 4B (PDE4B)、glyoxalase-1、neurotrophic factorsの発現がうつ病で、transforming growth factor-β receptor 2が統合失調症で、NCAM-140が双極性障害で変化していることを見出した。
結論
 これらの所見は、白血球mRNA発現を指標として、うつ病の診断マーカーの確立が可能であることを示している。これらのmRNA発現変化は、うつ病で見られる神経内分泌系、精神免疫系あるいは自律神経系などの異常を反映していると思われるが、うつ病の中枢異常と直接関連する変化を含む可能性もある。現在の研究を発展させ、臨床現場で使用できるうつ病の客観的指標を確立することができる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-