脳画像にもとづく精神疾患の「臨床病期」概念の確立と適切な治療・予防法の選択への応用についての研究

文献情報

文献番号
200833051A
報告書区分
総括
研究課題名
脳画像にもとづく精神疾患の「臨床病期」概念の確立と適切な治療・予防法の選択への応用についての研究
課題番号
H20-こころ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
福田 正人(国立大学法人 群馬大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 針間 博彦(都立松沢病院 精神科)
  • 住吉 太幹(国立大学法人 富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 笠井 清登(国立大学法人 東京大学 大学院医学研究科)
  • 檀 一平太(独立行政法人 農業食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)
  • 大西 隆(国立精神・神経センター 精神保健研究所)
  • 山末 英典(国立大学法人 東京大学 大学院医学研究科)
  • 橋本 謙二(国立大学法人 千葉大学 社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳構造画像(磁気共鳴画像MRI)・脳機能画像(近赤外線スペクトロスコピィNIRS)・神経生理画像(事象関連電位ERP)の検査所見を利用することで、統合失調症や双極性障害について「臨床病期clinical staging」の概念を確立し、それぞれの臨床病期に適切な治療・予防法の選択と計画立案に応用することを目的とした。
研究方法
 臨床病期についての世界的な研究状況を調査し、脳画像についての研究はほとんど見られないことを明らかにし、脳画像研究の成果のすみやかな臨床応用を可能とする汎用システムを確立した。①MRIについては、画像解析ソフトの設定がすべてなされているDVD1枚のLinuxシステムを開発し、利用者が撮像したMRI画像解析にすぐにとりかかれる環境を構築した。②NIRSについては、そのデータを補助的撮像なしに標準脳座標系に表現し、fMRIに用いられる4種類の代表的解剖アトラスと対応化させるシステムを実現した。
結果と考察
 統合失調症患者について臨床病期ごとの検討を行い、以下の4点の成果を得た。①認知機能研究:36名を対象にBACS-J(日本語版BACS)により評価した認知機能については、言語性記憶の障害は病期にかかわらず認めるが、言語流暢性の障害は病期により異なる傾向を認めた。②MRI研究:134名を対象にMRIにより評価した灰白質体積については、両側のシルビウス裂周辺の島回・下前頭回・上側頭回の体積減少はいずれの病期にも共通するが、前頭前野の内外側や側頭葉の広範な領域の体積減少は病期の進行とともに拡大した。③NIRS研究:55名を対象にNIRSにより評価した前頭葉機能については、全般的社会機能レベルGAFとの強い正の相関、精神病未治療期間DUPとの負の相関を認めた。④ERP・MEG研究および生体内物質研究:脳磁図MEGにおけるミスマッチMMN磁場により評価した注意機能については、NMDA受容体グリシン結合部位の内因性アゴニストであるMMNがd-serineの血漿中濃度と関連することを見出した。
結論
以上の結果から、脳画像検査所見を用いることで臨床病期概念をさらに発展できることが明らかとなった。これらの研究成果にもとづき先進医療への申請を行い、2009年4月より「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」が承認となった。これは精神科としては初めての先進医療である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-13
更新日
-