自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証

文献情報

文献番号
202109006A
報告書区分
総括
研究課題名
自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証
課題番号
19FA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松平 浩(東京大学 医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 橋爪 洋(和歌山県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
5,490,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命を損なう疾患概念として提唱されたロコモティブシンドロームに対する「医療・介護が連携した総合的な対策」の重要性が説かれているものの、その評価法は十分に普及しておらず、認知度/取組についても、地域差があり十分な対策がとられているとは言い難い。
身体のみならず精神・社会的な側面を包含する広範な概念であるフレイルに対し、ロコモは運動器(身体)の脆弱化が、「ロコモ関連疾患」や、「加齢による運動器機能不全」により引き起こされた病態で、「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては、既に豊富なエビデンスが構築されており、これらを対策に利用することが出来る。しかしながら「運動機能不全」に関しては、代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ、欧米では1989年に提唱されながらも、アジアでの診断アルゴリズムが確立したのは2014年であるなど、本邦における研究の歴史は浅く、今後のエビデンスの蓄積が望まれる。申請者は、NEDOの世代人工知能技術分野において、医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉評価によりサルコペニアばかりでなく、筋力も判定可能なシステムを開発した実績を持つ。
本研究では介入法と評価法のセットで成果物を完成する予定であるが、評価においては短期間で成果が出て、様々な運動機能と関連する筋肉に着目しており、前述した超音波システムを利用する。完成した成果物が自治体において人的、経済的負担が少なくなるように留意するとともに、ロコモ度1,2の判定はもちろん、それ未満の運動機能不全に関しても早期に判定できるよう人工知能技術も応用する。
成果物の実証フィールドには、既に自治体でロコモ対策を実施している分担者のフィールドを利用して、「医療・行政が連携した総合的な対策」モデルを構築することを目標とする。
研究方法
1. 自治体におけるロコモの実態調査と評価法の標準化(2019-2020年度)
ロコモの自然経過、進行/発症の危険因子を解明するため2005年に開始されたROADコホートにて、ロコモの実態調査と筋肉の超音波評価の標準を行った。このコホートではMRI(全脊柱、脳)X線(全脊椎・股関節・膝関節・手関節)、骨密度、体組成、血液生化学、詳細な問診と健康関連QOL、身体能力テスト、整形外科専門医による身体診察など多岐にわたる検診項目を実施しており、2019年10-12月に1,000例の追跡調査を行った。
2. 文献検索と介入法開発(2019-2020年度)
ロコモに関するリスク要因および介入事例と効果を調べた観察研究、clinical trial、 meta-analysis、systematic review等の文献検索を行い、整形外科的疾患を予防する為の運動療法で多くの実績を持つ松平が中心となって、介入法を開発する。この介入法に関して実施者の意見が反映されるよう研究者間での協議を行う。リスク要因も勘案しながら、楽しさと取り組みやすさ、行動変容ステージモデルの維持期定着を目指すことにも十分配慮した介入法にする。
3. 自治体におけるロコモの介入法の実践及び評価(2020-2021年度)
2.で開発した介入法の効果検証は、ソーシャルキャピタルを勘案し、自治体で既に稼働している健康教室をターゲットとする。自治体の健康づくり、介護等の部署への介入法の指導は研究分担者・協力者の整形外科医師・理学療法士が行い、関係団体(スタッフも同時に研修を受ける。これにより、必ずしも医師が参加しなくともロコモ対策モデルが実施できる体制を構築する。介入法に関して1armでの臨床試験を実施する。
4.ロコモ介入法の教材化と普及・啓発(2021年度)
教材を作成し、関係団体とも連携し、普及・啓発を開始する。
結果と考察
昨年度のreplication studyとして埼玉県の自治体で介入研究を実施した。ランダム化、非盲検、並行群間試験で介入期間は8週間、介入内容は、運動・栄養・社会交流プログラムから構成される多要素ロコモ予防プログラムを週に1 回、教室形式で提供した。統計解析には一般化線形混合効果モデル generalized linear mixed-effects models for repeated-measures を用い、群間差を推定した。ベースライン時に内側広筋の超音波画像 AI 評価は介入群で43.1 ± 7.1、対照群で45.2 ± 7.6であり、8週間後の変化量は介入群で1.6 (-1.4 to 4.6)対照群で0.6 (-1.9 to 3.0)、主効果のp値は0.640で介入群も対照群も筋肉評価値の有意な上昇を認めなかった。
結論
筋肉評価値の上昇を認めなかったのは、元気高齢者を対象としたためのバイアスによるものである可能性は否定できない。

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202109006B
報告書区分
総合
研究課題名
自治体におけるロコモティブシンドローム対策の体制整備:臨床情報・筋肉超音波の人工知能評価を用いた効果的な予防・介入方法の実証
課題番号
19FA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
岡 敬之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松平 浩(東京大学 医学部附属病院22世紀医療センター 運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座)
  • 吉村 典子(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター ロコモ予防学講座)
  • 橋爪 洋(和歌山県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康寿命を損なう疾患概念として提唱されたロコモティブシンドローム、に対する「医療・介護が連携した総合的な対策」の重要性が説かれているものの、その評価法は十分に普及しておらず、認知度/取組についても、地域差があり十分な対策がとられているとは言い難い。身体のみならず精神・社会的な側面を包含する広範な概念であるフレイルに対し、ロコモは「ロコモ関連疾患」や、「加齢による運動器機能不全」により引き起こされた病態で、「ロコモ関連疾患」の診断と治療に関しては、既に豊富なエビデンスが構築されており、これらを対策に利用することが出来る。しかしながら「運動機能不全」に関しては、代表的なサルコペニア(筋量減少)でさえ、欧米では1989 年に提唱されながらも、アジアでの診断アルゴリズムが確立したのは2014 年であるなど、本邦における研究の歴史は浅く、今後のエビデンスの蓄積が望まれる。申請者は、医用画像モダリィティとして唯一非侵襲である超音波を用いた筋肉の定量評価が可能なシステムを開発した実績を持つ。本研究では、特別な機器がなくとも計測可能な5 回いすたち座りテストを主要評価項目として運動機能や申請者が開発したAI 筋肉超音波評価システム計測値などを継続的にモニタリングするとともに、ロコ予防プログラムを通して運動・認知機能を賦活化し、生活機能を高い状態で維持する仕組みである。しかし、こうした仕組みが健康寿命の延伸に資するか否かを判定するには、その有効性を学術的に検証し、エビデンスを構築していく必要がある。
研究方法
歌山県美浜町住民健診の後、事前説明会を開催し、希望に沿って割付を行い、専門家による助言の介入群と対照群の 2 群に割付を行った。ベースライン時、12 週後に評価測定を行い、ベースラインからの変化量の群間差を比較することで、資材のみではなく専門家による運動と食事指導の優越性の検証を行った。
健診受診時の所見情報として、年齢、身体所見、生活習慣(運動習慣等)、基本チェックリスト、その他の身体関連因子(握力、ロコモ度テスト、両側内側広筋超音波、ロコモ度テスト)を参照した。
介入開始時と4 週目±1 週に、1 セッション約 30 分間、専門家による指導を提供した。また、8 週目±1 週は、希望者のみに対し、1 セッション約 20 分間の追加の指導を提供した。
[初回指導(1 セッション目)]
開始約 20 分間で各個人の状態像に合わせて優先度の高いメニューを決めた。また、実際の運動と食生活を個別に指導した。
[継続指導(2 セッション目)]
開始約 10 分間 で 2 週間の実行状況を共有する。残りのうち、約 10 分間で追加の助言を加えた。ここでの助言は主に、運動のフォームの見直し、運動の組合せの変更、食事内容への提言、セルフケアの継続強化を行った。
[追加継続指導(3 および 4 セッション目)]
希望者のみに提供する。内容は 2 セッション目の内容に準じて実施した。
 対照群にも、介入群と同様に、介入開始時(事前説明会後)に共通の教材が配布された。ただし、介入開始 12 週間後までは教材による助言のみの期間とし、12 週間後から 24 週間後までの間に、介入群と同様の専門家による運動指導を提供した。これは住民サービスという観点から実施したものである。replication studyとして埼玉県の自治体で介入研究を実施した(R3年8月)。介入期間は8週、介入内容は、運動・栄養・社会交流プログラムから構成される多要素ロコモ予防プログラムdaru.
結果と考察
主観的改善度において「やや改善」以上との回答者は、教材+個別指導群において1月後、3か月後、6か月後で76.9 %、84.6 %、80.0 %であり、教材指導群では34.8 %、54.5 %、52.2 %と、いずれの時点でも教材+個別指導群の改善度が高くなっていた。また満足度で「やや満足」以上との回答者は、教材+個別指導群において1月後、3か月後、6か月後で96.2 %、96.2 %、92.0 %であり、教材指導群では56.5 %、68.2 %、47.8 %と、いずれの時点でも教材+個別指導群の満足度が高くなっていた。repulicationstudyにおいてベースライン時に内側広筋の超音波画像 AI 評価は介入群で43.1 ± 7.1、対照群で45.2 ± 7.6であり、
8週間後の変化量は介入群で1.6 (-1.4 to 4.6)対照群で0.6 (-1.9 to 3.0)、主効果のp値は0.640で介入群も対照群も筋肉評価値の有意な上昇を認めなかった。
結論
開発した介入プログラムの有用性を提示するとともに、システムの更なる発展の知見を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202109006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
サルコペニアの指標として超音波AI評価を取り入れた、この評価法は簡便であるため、実用化が期待される。成果は学会などで発表し大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
元気高齢者の筋肉の質的評価が可能となった。この評価を臨床現場で使用することにより患者の早期発見が可能になる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
16件
講演16件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-09-06
更新日
2023-06-22

収支報告書

文献番号
202109006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,137,000円
(2)補助金確定額
7,137,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 345,846円
人件費・謝金 802,476円
旅費 0円
その他 4,341,678円
間接経費 1,647,000円
合計 7,137,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-10-18
更新日
-