Duchenne型筋ジストロフィーのエクソンスキッピング誘導治療

文献情報

文献番号
200833043A
報告書区分
総括
研究課題名
Duchenne型筋ジストロフィーのエクソンスキッピング誘導治療
課題番号
H19-こころ・一般-019
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法は確立されていない。申請者は、ジストロフィン遺伝子のエクソンのスキッピングを誘導し、mRNAのアミノ酸読み取り枠を修正してインフレームにする独自のDMD治療法を着想した。そして、一部の症例で着想通りに骨格筋にジストロフィンを発現させることに世界で初めて成功した。本研究は、申請者の提唱する治療法の適応を拡大するため多数のDMD症例の治療が可能となる「エクソン45のスキッピング誘導」を導くアンチセンスオリゴヌクレオチドの臨床応用への展開を世界に先駆けてはかるものである。そのため、以下の研究を行うものである。①DMD患者の骨格筋の培養細胞を用いて、治療効果が最も良く得られるエクソン欠失型あるいは患者年齢について明らかにする。②最も有効性が高いと判明した遺伝子欠失の型と年齢に合致したDMD患者を対象として医師主導の治験を実施する。そして、治療の有効性に関する科学的証拠を得るものである。
研究方法
「エクソン45のスキッピング誘導」するアンチセンスオリゴヌクレオチドであるRNA/ENAキメラを合成する。合成したRNA/ENAキメラを先に樹立した患者培養筋細胞に導入する。そして導入した筋細胞で標的としたエクソンがスキッピングしたジストロフィンmRNAの産生をRT-PCR法で確認する。ついで、蛍光免疫染色法を用いて培養細胞レベルでジストロフィンの発現を確認する。
結果と考察
in vitroのスプライシング系で、エクソン45の変異ではスプライシング産物として潜在的スプライシスサイトが活性化されたものが得られ、エクソン45は強いエクソンに分類された。エクソン45では、人工的なスプライシング誘導において潜在的スプライス部位の活性化が発生する可能性が指摘された。また、DMD治療の適応と評価法を確立するためにDMD症例のバイオマーカーの検討を行った。DMD患者での標準的なCKの年令変動表の作成に成功した。この表は今後のDMD治療の適応と評価に際して極めて有力と考えられた。
結論
本研究課題でエクソンスキッピング誘導の当面の標的としているジストロフィン遺伝子のエクソン45は、強いエクソンであることが判明した。今後、そのスキッピング誘導に際しては潜在的スプライス部位の活性化の可能性に特に注意を払う必要があることが明らかとなった。また、DMDのバイオマーカーに関する検討結果の応用をはかる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
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