ヒト・アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法の確立を目指して

文献情報

文献番号
200833041A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト・アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法の確立を目指して
課題番号
H19-こころ・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松本 陽((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大倉良夫((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 蕨 陽子(柴崎陽子)((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
  • 神山邦子((財)東京都医学研究機構 東京都神経科学総合研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
29,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病は認知障害を主症状として中年以降発症する神経疾患である。我が国では120万人以上の患者が存在すると推定されているが、今後、人口の高齢化に伴い、患者数が急増することは確実である。治療法の開発は医学的にも、社会的にも、また経済学的にも極めて重要な解決課題である。
   我々は有効で、安全性の高い治療法を確立する目的で、DNAワクチンを開発した。DNAワクチンは1回の投与で長時間体内にとどまりDNAでコードされたAβペプチドを緩徐に作り続けるため、過剰な免疫反応を避けられるからである。
研究方法
哺乳類細胞発現ベクターにAβ-protein(1-42)及び付属のシークエンスを挿入して3種類のアルツハイマー病非ウイルス性DNAワクチンを製作した。(1) Aβ 1-42のみを挿入したもの(K-Aβワクチン)、(2) 発現タンパク質の分泌を向上させるためにマウスIgκシグナルを付加したもの(IgL-Aβワクチン)、(3) 分泌したタンパク質の安定性を向上させるためにImmunoglobulinのFc領域を付加したもの(Aβ-Fcワクチン) の3種類である。
   これらのワクチンをモデルマウスや老齢サルに免疫して、Aβ削減効果と安全性を検定した。
結果と考察
アルツハイマー病のモデルマウスに投与すると、既にAβ沈着が認められた12ヶ月齢から開始した治療的投与群においては対照群の50%までAβ沈着が減少していた。(Okura, Y. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 103, 9619-9624, 2006)。平成20年度は、その作用機序を検索し、DNAワクチンによって産生された抗Aβ抗体が脳内に移行して老人斑に付着し、ミクログリアノドン職能を活性化すること明らかにして報告した (Okura, Y. et al., J Neuropathol Exp Neurol, 67, 1063-1071, 2008)。さらに、これらの作用機序に基づいて新型ワクチンを開発し、モデルマウスにおいて顕著なAβ削減効果を観察している。また、老齢サル実験においても、DNAワクチン投与群で有意のAβの減少を観察している。
結論
アルツハイマー病に対するDNAワクチン療法は有効で安全性が高く、ヒト疾患の治療薬になり得る。現在、得られた成果に基づいて非臨床試験を開始した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-