小児がんの子どもに対する充実した在宅医療体制整備のための研究

文献情報

文献番号
202108043A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がんの子どもに対する充実した在宅医療体制整備のための研究
課題番号
21EA1003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大隅 朋生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 余谷 暢之(国立成育医療研究センター総合診療部緩和ケア科)
  • 中村 知夫(国立成育医療研究センタ- 周産期診療部 新生児科)
  • 前田 浩利(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野)
  • 紅谷 浩之(オレンジホームケアクリニック)
  • 長 祐子(松川 祐子)(北海道大学病院 小児科)
  • 名古屋 祐子(宮城大学 看護学群)
  • 荒川 ゆうき(埼玉県立小児医療センター 血液・腫瘍科)
  • 荒川 歩(国立がん研究センター 中央病院小児腫瘍科)
  • 湯坐 有希(東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科)
  • 横須賀 とも子(神奈川県立こども医療センター 血液・腫瘍科)
  • 倉田 敬(長野県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 岩本 彰太郎(三重大学医学部附属病院周産期母子センター)
  • 西川 英里(国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学 医学部附属病院 小児がん治療センター)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
  • 古賀 友紀(九州大学医学部小児科)
  • 岡本 康裕(鹿児島大学医歯学総合研究科小児科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 西川英里 名古屋大学医学部付属病院 (令和3年4月1日~令和4年9月30日)→ 国立成育医療研究センター (令和3年10月以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
小児がん在宅診療に求められる主な役割は終末期緩和ケアである。我々は令和元年度よりがん対策推進総合研究事業の支援を受け、「小児がん患者に対する在宅医療の実態とあり方に関する研究」を実施してきた。
 本研究班の目的は第1に上記の研究班の調査および活動を継続・解析し、さらに新規分担研究も加えて発展させた上で公表することである(2021年度)。第2に、そこから得られた課題を議論し、必要あれば統合した上でその解決法あるいは改善法についてのモデルケースを医療者に対して共有することである。第3に、小児がん終末期の患者、家族に対して、療養場所の選択に関する意思決定支援につながる情報提供を行うため資料作成をすることである(2022年度)。
研究方法
小児がん在宅医療に関する様々な課題について、分担研究として解決に取り組む。詳細は下欄に記す。
結果と考察
1.終末期調査の完結
【終末期の現状調査】
小児がん診療施設から600例以上の死亡症例について、療養場所の選択肢が提示されたか、死亡場所、死亡前の医療処置などの情報が収集された。日本小児科学会、日本緩和医療学会での成果発表を行い、その後論文化を進めている。
【在宅移行の障壁調査】
小児がん診療医師200名以上から、在宅移行を含めた終末期の障壁に関する情報が収集された。日本小児科学会で成果発表を行なっており、論文化を進めている。
2. 分担研究の継続・発展
【在宅輸血】
小児では終末期に輸血需要がある場合が多く在宅移行の障壁となる。前研究で小児がん診療病院を対象に在宅輸血の全国調査を実施した。赤血球は指針が整備されそれに添った好事例が存在するが、血小板は指針などがなく各施設が独自に工夫して実践していることがわかった。本研究では2021年度に日本赤十字社から提供されたデータをもとに、在宅輸血実施期間を対象に在宅輸血に関する調査を行った。日本血液学会および日本小児血液・がん学会で成果発表を行う。得られた知見をもとに、血小板輸血の指針作成をめざす。また協力者の大橋を中心として成人で運用されている血液在宅ねっとのweb在宅輸血リソースマップと連携し、小児に対応可能な施設に関しても公開することをめざす予定である。
【病院と家以外の看取り場所】
病院で最期まで過ごす場合、療養環境の改善は本研究の目標である選択肢が公正に提示されることにつながる。前研究で、小児緩和ケア病室に関する全国調査を実施し、好事例を収集した。本研究では2021年度に好事例施設を対象に二次調査を実施し、運用や問題点などについての情報収集を行っている。日本血液学会での成果発表を行い、論文化を進める。
【社会資源の情報共有のためのWeb講演会】
在宅移行を検討する際、地域で利用可能な社会資源を探しアクセスすることが最初のステップとなる。その役割は医療ソーシャルワーカー(MSW)が主体となることが多い。前研究で分担施設のMSWを中心に在宅移行のTipsや悩みなどを共有し議論するための講演会を開催し多数の多職種が参加し活発な意見交換を行った。本研究では、2021-22年度を通じて全国の施設で使用可能なパンフレットを作成し、それの試験運用を行なったのちに、ワークショップ形式でその有用性や改善点について議論を進めていく予定である。
2.新規研究
【多職種調査】
小児がん終末期診療および在宅移行には医師以外の多職種の子どもと家族への関わりが不可欠であり、彼らが実践している工夫や感じている課題や悩みを収集することは非常に重要と考える。一方でその職種は病院ごとに異なるため、職種横断的なアプローチが求められる。2022年に多職種を対象とした調査研究を実施する計画を進めている。
【在宅死亡での病理解剖】
在宅で看取りとなった子どもの遺族が病理解剖を希望される場合があるが、様々な困難がありその実現は難しい。遺族は、医学の発展へ貢献したいという思いや、子どもを苦しめたがんを取り除きたいという思いなどをもつ。在宅死亡でも病理解剖を受ける選択肢があれば、そのような遺族の思いが叶えられるだけでなく、在宅医療の評価そして質の向上につながる可能性がある。2021年2月に、成人においてすでに在宅死亡後の病理解剖をおこなっている医師の講演や、在宅死亡後に病理解剖を受けたケースの遺族インタビューを紹介した。今後、モデルケースとなる仕組みを研究班内で作ることをめざす。
結論
前研究で取り組んだ調査研究に関して公表が進み、論文の形でデータを還元する準備が順調に進んでいる。在宅輸血の指針や在宅医療について患者・家族に案内するパンフレットの作成をし、在宅移行が円滑に進められるような施策に取り組んでいる。新規研究では、在宅死亡後の病理解剖の仕組みづくりに取り組んでおり、小児がん在宅医療のみならず、在宅医療の質の評価・向上につながる研究と考えている。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108043Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,070,000円
(2)補助金確定額
5,044,000円
差引額 [(1)-(2)]
26,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,216,140円
人件費・謝金 1,061,613円
旅費 0円
その他 596,687円
間接経費 1,170,000円
合計 5,044,440円

備考

備考
自己資金 440円

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-