国際比較可能ながん登録データの精度管理および他の統計を併用したがん対策への効果的活用の研究

文献情報

文献番号
202108037A
報告書区分
総括
研究課題名
国際比較可能ながん登録データの精度管理および他の統計を併用したがん対策への効果的活用の研究
課題番号
20EA1026
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松田 智大(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 国際政策研究部)
研究分担者(所属機関)
  • Charvat Hadrien(シャルヴァ アドリアン)(順天堂大学 国際教養学部)
  • 堀 芽久美(静岡県立大学 看護学部)
  • 宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
  • 中田 佳世(山田 佳世)(大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
  • 柴田 亜希子(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 がん登録センター)
  • 杉山 裕美((公財)放射線影響研究所疫学部)
  • 大木 いずみ(埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科)
  • 西野 善一(金沢医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室)
  • 加茂 憲一(北海道公立大学法人札幌医科大学 医療人育成センター)
  • 伊藤 ゆり(大阪医科薬科大学 研究支援センター医療統計室)
  • 片野田 耕太(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策研究所 予防検診政策研究部)
  • 雑賀 公美子(弘前大学大学院 医学系研究科 医療情報講座)
  • 伊藤 秀美(愛知県がんセンター  がん情報・対策研究分野)
  • 倉橋 典絵(国立がんセンター がん対策研究所 コホート研究部)
  • 木塚 陽子(サイニクス株式会社 マーケットアセスメント)
  • Gatellier Laureline(ガテリエ ローリン)(国立がん研究センター 国立がん研究センターがん対策研究所 国際政策研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のがんに関する統計データを、単独または既存統計を併用・突合して解析することにより、欧米諸国と同等のがんサーベイランス体制を築くことを目的とする。がん登録情報のがん対策への利活用を一層推進することが求められ、一歩踏み込んでがん登録データと既存データをリンケージまたは併用した活用、最新統計手法による分析方法を示す必要がある。
研究方法
一定の精度基準を満たすデータより2012-15年診断症例の生存率を算出する。罹患率、生存率、患者死因等の分析を行い、諸外国との比較をして、我が国のがん負担の把握をする。がん診療連携拠点病院と、その他医療機関別に集計し、医療機関種別の院内がん登録体制や、受療患者群の特性を都道府県別に把握する。NCDのデータと悉皆性のある住民ベースデータとの連携方法を提示する。最新の統計モデル手法を国や都道府県のがん対策に活用する。がん登録データに詳細な診療情報を個別に突合追加することで患者群の特性および診療内容を把握する。大規模コホート研究など疫学研究へのがん罹患・生存情報の活用方法について検討し、突合上の問題や、研究から得られる成果の検証を行う世界の医療情報収集・提供状況を、国際ネットワークを利用して調査する。個別データの移送をせずに共同研究をする方法(Federated Learning)を導入する。
結果と考察
47地域がん登録の20012~15年の全国がん生存率の推計を行うための準備をした。アジアの希少がん解析として、RARECAREnet listに基づいた日本の生存率を算出した。また、2011-18年の日本の住民ベースがん登録に登録された5,640,879例について、18種類のFamily、68種類のTire-1のがん、216種類のTier-2のがんに分類し、罹患数・率を算出した。2016–18年診断のAYA世代(15–39歳)の新規がん罹患数は年間約20,000例で、年齢調整罹患率は人口10万人当たり53.3(男性35.1、女性72.1)であった。がん医療均てん化の状況を評価するため36県について地域がん登録の登録精度の確認を行った。新型コロナウイルス感染拡大のがん診療に及ぼす影響評価を、院内がん登録集計結果を用いて実施した。臓器がん登録データや人口動態調査票情報との併用時の課題や突合時の注意点を明らかにした。地域がん登録データを用いて、食道がんおよび肺がんの組織型別、進展度別年齢調整罹患率の増減を検討した。米国Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) registry データを用いて、Serous CarcinomaにおけるGrade分布およびGrade別の生存率を人種別に比較した。6府県の住民ベースのがん登録資料より1995~2015年診断症例を2016年末までフォローアップしたデータを用いて、がん種別、性別、年齢階級別、進行度別にサバイバー生存率を計算した。がん登録では初期報告より多い数が後年報告される傾向を踏まえ、追加報告される数に関する挙動のメカニズムを数理モデルによって表現することを試みた。SEER*Statを利用して、都道府県のがん登録実務者が集計できるようにすることを目的とし、SEER*Stat用のデータベースを研究班で作成した。SEER*Statの運用マニュアルを作成し、集計したい単位で集計するように指導した。がん登録データにおいても、NDB特別抽出データと同水準での管理となれば、疫学研究での利活用が発展すると考えられること、海外共同研究者へのデータ提供が可能となることで世界や日本におけるがん予防につながることなどの意見を厚労省研究班に提出した。欧州でのデータの提供方法、利用方法や範囲についての調査票を精査・修正し、国際がん登録協議会へ事前調査を行った。併せて、個別データを外部に一切持ち出さずにデータを集約する手法Federated Learningに基づいて、頭頸部がんに焦点を当て、日本と台湾、イタリアで実際の分析を実施した。
結論
匿名データでは、全国生存率集計のデータ利用申請、希少がん、小児がん等の国際分類に基づいた集計、食道がんや肺がん、卵巣がんの詳細集計を継続し、臓器別がん登録や人口動態統計との併用を進めた。遅れて登録された症例を考慮した推計方法の検討も行った。非匿名データでは、コホート研究とのリンケージの問題を整理した。都道府県庁において独自に統計解析ができるような支援体制の整備、諸外国のがん統計の利活用の現状の調査、個別データを移動させずに仮想の集合データを作成する最新手法の検討なども試みた。リンケージ利用などデータを活用する方法を開発するとともに、国際比較を行い、データ収集及び利活用について提案を行う。

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202108037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,950,000円
(2)補助金確定額
13,977,000円
差引額 [(1)-(2)]
973,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,412,397円
人件費・謝金 3,498,545円
旅費 143,777円
その他 4,472,682円
間接経費 3,450,000円
合計 13,977,401円

備考

備考
人件費・謝金に不確定要素が多く、すなわち予定していた人材募集がうまく進まなかったり、既に雇用している職員が退職、求職したりして、計画通りに研究費執行ができなかった。また、その他として計上している印刷やウェブサイト構築といった委託業務も、正確な見積もりのもとに予算立てをしているわけではないので、想定より安価に業務遂行ができた。更に、新型コロナウイルスの感染拡大はひとまず落ちついたものの、学会等への出張や、研究班会議への分担研究者の召集の予測がつかず、所属施設のルールに従って、リモートでの会議出席を余儀なくされた者が多く、旅費の支出が少なかったことも理由として挙げられる。

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
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