統合失調症陰性症状の成因解明と治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200833026A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症陰性症状の成因解明と治療法開発に関する研究
課題番号
H19-こころ・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
富田 博秋(東北大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は①免疫細胞の機能ゲノム研究、②画像研究、③死後脳研究を統合することで統合失調症の陰性症状の形成・進行及び脳萎縮に関わる分子遺伝学的機序を解明し、陰性症状の治療法・予防法の開発に繋げることを目的とする。
研究方法
①免疫細胞の機能ゲノム研究:統合失調症罹患者及び健常対照者の臨床症状を評価した上でTh1・Th2ヘルパーT細胞等の免疫細胞を細胞ソーティング装置で単離し、マイクロアレイを用いて全ゲノムの遺伝子発現量を評価する。②画像研究:①と同じ対象者の脳画像所見を集積しゲノム情報を統合して統合失調症陰性症状及び脳組織の萎縮の形成・進行に関与する分子を特定する。③死後脳研究:罹患者及び健常者の死後脳組織を対象とするレーザー・マイクロディセクション法により各細胞種で統合失調症陰性症状に関与する分子遺伝学的変化を特定する。
結果と考察
①世界に先駆けて特定の免疫細胞を単離して包括的な遺伝子発現プロファイルを行なう技術を確立し、統合失調症罹患者群と健常者群のTh1・Th2細胞の遺伝子発現の比較を行った。Th1細胞において統合失調症群に発現の高い51の遺伝子と統合失調症群で発現の低い402の遺伝子、Th2細胞において統合失調症群に発現の高い92の遺伝子と統合失調症群で発現の低い90の遺伝子を認めた。このうち、陰性症状の強さと有意に相関する28の遺伝子を特定した。②画像研究:統合失調症罹患者と健常者とで灰白質の容積と作業記憶課題施行時の血流量そのものには差を認めなかったが、灰白質の容積・血流量が低いほど陽性症状が強いという負の相関を認めた。③死後脳研究:神経細胞や各種グリア細胞由来の培養細胞を用いて死後脳組織において精神疾患の分子病態を特定する上で重要な交絡因子である死亡時の低酸素状態への暴露の影響を評価するための方法を検討し、次年度の死後脳研究に備えた。
結論
陰性症状を含む臨床症状と認知機能を評価した統合失調症罹患者と健常者を対象に構造および機能MRI撮像を行った上で特定の免疫細胞を単離し陰性症状や脳の構造・血流変化と相関する免疫細胞の遺伝子発現プロフィールの特定を中心とする研究を行った。平成21年度は症例を増やしてこれらの知見を確認するとともに、死後脳研究の結果と併せて統合失調症陰性症状に関与する分子群の特定を行う。

公開日・更新日

公開日
2009-05-22
更新日
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