文献情報
文献番号
200833023A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞組織工学的手法を用いた中枢神経障害に対する根治的治療法の開発
課題番号
H18-こころ・一般-024
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田口 明彦(国立循環器病センター 研究所 循環動態機能部)
研究分担者(所属機関)
- 加藤 英政(株式会社 ニコン 新事業開発部)
- 高木 睦(北海道大学大学院 工学研究科 細胞培養工学)
- 飯田 秀博(国立循環器病センター 研究所 放射線医学部)
- 松山 知弘(兵庫医科大学 医学部 脳血管内科)
- 齋藤 敬(東京大学大学院 工学研究科 バイオエンジニアリング専攻バイオデバイス分野 ナノバイオデバイス研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者要介護者発生原因の約半数が脳血管障害など中枢神経障害であり、これらの疾患に対する新しい治療法の開発は、厚生労働行政にとって極めて重要な課題であるが、脳血管障害に対する単なる神経幹細胞移植では、ほとんど神経幹細胞が生着せず、かつ治療効果もほとんどないことが、基礎研究および臨床試験においても明らかにされている。本研究では、中枢神経障害部位における血管網の再構築と共に、神経幹細胞の誘導や移植を行い、中枢神経機能障害患者に対する全く新しい治療法の確立に向けた研究を行った。
研究方法
本研究において、我々は血管新生を基盤とした幹細胞nicheへの神経幹細胞移植後、移植神経幹細胞の分化過程におけるapoptosis誘導因子を阻害することにより、神経幹細胞生着の生着が飛躍的に高まることを明らかにしてきたが、本年度は生着した神経幹細胞が障害された脳神経機能向上に寄与させるため、臨床応用に適した神経幹細胞の開発、移植神経幹細胞の神経細胞への分化誘導の促進、および再生医療の評価系構築に向けた無侵襲イメージングおよび定量的指標の開発を行った。
結果と考察
脳梗塞巣においては、側脳室周囲や海馬における神経幹細胞とは異なる障害誘導型神経幹細胞が存在し、in vitroでの増幅後に血管内皮細胞シートとの併用移植により神経機能向上の可能性を示唆する結果を得ている。移植神経幹細胞のin vivoでの分化誘導に関しては、適切な分化誘導を可能にする反面、炎症の増大や移植神経幹細胞の細胞死を誘導することがあり、精密なコントロールが今後の課題として残された。非常に巧妙かつ複雑に制御されている中枢神経系の機能再生医療の実現には多くの解決すべき課題があるが、本研究で得られた新しい知見は、神経幹細胞移植治療の実現・発展に不可欠な非常に重要な知見であり、また本研究で達成した細胞加工や画像評価に関する技術開発を用いて、画期的な治療法の開発に発展・貢献することができると考えている。
結論
脳神経機能の改善には、傷害された神経回路網の厳密な再生は必ずしも必須ではなく、新生介在ニューロンなどによる既存の神経回路網の再構成でも可能であると考えられており、本研究で得られた神経幹細胞移植に関する知見は、極めて対象患者数が多い中枢神経障害患者に対する画期的な治療法の開発・発展に必要不可欠であると考えている。
公開日・更新日
公開日
2009-04-10
更新日
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