文献情報
文献番号
202108010A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の家族・遺族に対する効果的な精神心理的支援法の開発研究
課題番号
19EA1013
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
明智 龍男(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 精神・認知・行動医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 藤森 麻衣子(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 支持・サバイバーシップTR研究部 支持・緩和・心のケア研究室)
- 久保田 陽介(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 加藤 雅志(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センター がん医療支援部)
- 浅井 真理子(日本医科大学 医学部 基礎科学 医療心理学教室)
- 宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
- 山岸 暁美(一般社団法人コミュニティヘルス研究機構 コミュニティヘルス研究部)
- 鈴木 伸一(早稲田大学人間科学学術院)
- 石田 真弓(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
6,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、がん医療のより一層の充実を推進するために、がん患者・家族に対する効果的な精神心理的支援法を開発する。具体的には、家族・遺族の精神心理的苦痛に関する内外の知見を系統的にレビューするとともに、その有病率と危険因子を同定し、これらをもとに効果的なスクリーニング方法を開発する。あわせて家族・遺族の精神心理的負担の軽減に資する介入法の開発も行う。
研究方法
各研究毎に記した。
研究Ⅰ【系統的レビューの実施と家族・遺族及び医療従事者向け支援ガイドの作成】
Ⅰ-① Mindsガイドライン作成マニュアルに基づき、国内・海外論文の系統的レビューを行い、ガイドライン作成を行った。
Ⅰ-② 国内外の参考資料(パンフレット等)を収集するとともに、多職種の意見も踏まえ、一般医療従事者に向けた遺族ケアのための手引きを作成した。
研究Ⅱ【つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
Ⅱ-① がん患者対象の多施設遺族調査(J-HOPE研究)、及び一般市民対象の遺族調査研究、これらを統合した計25,000名の大規模遺族データの解析を行い、PHQ-9の第9項目目をアウトカムに遺族の希死念慮のリスク要因の同定を行った。
Ⅱ-② コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得るために、遺族ケア・グリーフケアの実践団体、人材育成に携わる団体、遺族ケア・グリーフケアの学識者等、31名を対象にインタビュー調査を実施した。
がん患者の遺族のためのホームページ開設を通じて、情報提供を開始した。
研究Ⅲ【こころの病気予防および回復プログラムの開発】
Ⅲ-① うつ病等の予防および治療を目的に、わが国のがん患者の遺族に適した行動活性化療法・精神療法を開発する。
研究計画に関して、倫理委員会を受審し、承認された。
Ⅲ-② 遺族を対象にした支援プログラムを開発し、予備的な介入試験を完遂する。
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科「遺族外来」を受診したがん患者遺族を対象に抑うつ改善およびうつ病などの疾病予防を目的とした心理教育を中心に構成されたプログラムを実施した。
研究Ⅰ【系統的レビューの実施と家族・遺族及び医療従事者向け支援ガイドの作成】
Ⅰ-① Mindsガイドライン作成マニュアルに基づき、国内・海外論文の系統的レビューを行い、ガイドライン作成を行った。
Ⅰ-② 国内外の参考資料(パンフレット等)を収集するとともに、多職種の意見も踏まえ、一般医療従事者に向けた遺族ケアのための手引きを作成した。
研究Ⅱ【つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
Ⅱ-① がん患者対象の多施設遺族調査(J-HOPE研究)、及び一般市民対象の遺族調査研究、これらを統合した計25,000名の大規模遺族データの解析を行い、PHQ-9の第9項目目をアウトカムに遺族の希死念慮のリスク要因の同定を行った。
Ⅱ-② コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得るために、遺族ケア・グリーフケアの実践団体、人材育成に携わる団体、遺族ケア・グリーフケアの学識者等、31名を対象にインタビュー調査を実施した。
がん患者の遺族のためのホームページ開設を通じて、情報提供を開始した。
研究Ⅲ【こころの病気予防および回復プログラムの開発】
Ⅲ-① うつ病等の予防および治療を目的に、わが国のがん患者の遺族に適した行動活性化療法・精神療法を開発する。
研究計画に関して、倫理委員会を受審し、承認された。
Ⅲ-② 遺族を対象にした支援プログラムを開発し、予備的な介入試験を完遂する。
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科「遺族外来」を受診したがん患者遺族を対象に抑うつ改善およびうつ病などの疾病予防を目的とした心理教育を中心に構成されたプログラムを実施した。
結果と考察
研究Ⅰ【系統的レビューの実施と家族・遺族及び医療従事者向け支援ガイドの作成】
Ⅰ-①遺族の精神心理的苦痛のケアに関する臨床疑問(CQ)が設定され、SCOPEとともに外部評価を受けた。CQに基づき、系統的レビューを実施した。
Ⅰ-② がん患者・遺族を含めた専門家パネルを設け、一般医療従事者の遺族支援のあり方、遺族ケアの現状や課題、解決策等に資する原案を作成した。これをもとに、一般医療従事者に向けた遺族ケアのための手引きを作成した。
研究Ⅱ【つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
Ⅱ-①直近2週間以内に希死念慮を有する割合は11%で、うつ症状を有するものでは42%だった。リスク要因としてうつの既往があること、患者療養中の家族の健康状態が良くないこと、死別に対する心の準備状況が十分でなかったことがあげられた。
Ⅱ-② コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得た。
ホームページの運用を継続し、研究班で得らえた成果を掲載した(https://grief-care.info/)。
研究Ⅲ【こころの病気予防および回復プログラムの開発】
Ⅲ-① うつ病等の予防および治療を目的に、わが国のがん患者の遺族に適した行動活性化療法・精神療法を開発する。
3名が参加に同意した。そのうちの1名は途中からオンラインに移行したため脱落とした。2名は抑うつ)、不安ともに改善傾向であり、行動面が活性化する傾向が見られた。また2名はプログラム7回全てに参加した。以上より、遺族の抑うつに対する行動活性化療法の実施可能性が示された。
Ⅲ-② 遺族を対象にした支援プログラムを開発し、予備的な介入試験を完遂する。
支援プログラムを実施した結果、介入後、3/6/12か月後において抑うつの有意な改善が確認された。
Ⅰ-①遺族の精神心理的苦痛のケアに関する臨床疑問(CQ)が設定され、SCOPEとともに外部評価を受けた。CQに基づき、系統的レビューを実施した。
Ⅰ-② がん患者・遺族を含めた専門家パネルを設け、一般医療従事者の遺族支援のあり方、遺族ケアの現状や課題、解決策等に資する原案を作成した。これをもとに、一般医療従事者に向けた遺族ケアのための手引きを作成した。
研究Ⅱ【つらさを抱える遺族に適切なこころのケアを届けるための体制構築】
Ⅱ-①直近2週間以内に希死念慮を有する割合は11%で、うつ症状を有するものでは42%だった。リスク要因としてうつの既往があること、患者療養中の家族の健康状態が良くないこと、死別に対する心の準備状況が十分でなかったことがあげられた。
Ⅱ-② コミュニティベースの遺族ケア・グリーフケアの実態を把握し、今後の当該ケア提供体制構築および実装に資する基礎的な知見を得た。
ホームページの運用を継続し、研究班で得らえた成果を掲載した(https://grief-care.info/)。
研究Ⅲ【こころの病気予防および回復プログラムの開発】
Ⅲ-① うつ病等の予防および治療を目的に、わが国のがん患者の遺族に適した行動活性化療法・精神療法を開発する。
3名が参加に同意した。そのうちの1名は途中からオンラインに移行したため脱落とした。2名は抑うつ)、不安ともに改善傾向であり、行動面が活性化する傾向が見られた。また2名はプログラム7回全てに参加した。以上より、遺族の抑うつに対する行動活性化療法の実施可能性が示された。
Ⅲ-② 遺族を対象にした支援プログラムを開発し、予備的な介入試験を完遂する。
支援プログラムを実施した結果、介入後、3/6/12か月後において抑うつの有意な改善が確認された。
結論
本研究で得られた知見は、がん医療の質の向上のみならず、5大疾病の一つとして位置付けられている精神疾患対策にもなり、ひいては、がん患者の家族としてわが国で生活する多くの国民の生活の質改善に寄与することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2022-06-09
更新日
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