がんゲノム医療に携わる医師等の育成に資する研究

文献情報

文献番号
202108005A
報告書区分
総括
研究課題名
がんゲノム医療に携わる医師等の育成に資する研究
課題番号
19EA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大江 裕一郎(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
  • 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科)
  • 土原 一哉(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター トランスレーショナルインフォマティクス分野)
  • 内藤 陽一(国立がん研究センター東病院 先端医療科)
  • 角南 久仁子(関原 久仁子)(国立がん研究センター 中央病院 臨床検査科)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学教室)
  • 小山 隆文(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 先端医療科)
  • 高橋 秀明(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
  • 浜本 康夫(栃木県立がんセンター薬物療法科)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 中谷 中(三重大学医学部附属病院)
  • 武田 真幸(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画の分野別施策「がん医療の充実」に掲げられている重要課題である。質の高いがんゲノム医療の提供には、がんゲノム医療に携わる人材の育成が必要不可欠であるが、現場で対応する医師等に関しては、備えるべき知識や資質等が明確でなく、またそれらを修得するためにどのような研修が必要か明らかにされていない。質の高いがんゲノム医療を均てん化するには、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上、標準化が不可欠である。本研究では、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成およびがんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成を行い、質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等により、がんゲノム医療が実施されることにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することを目的とした。
研究方法
本研究事業では、1)がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成方法の研究(吉野小班)、2)がんゲノム医療中核拠点病院以外のがんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成の研究(西尾小班)を両小班の連携のもと実施した。
結果と考察
吉野小班では、模擬症例50例を25例×2回に分割し、がんゲノム医療拠点病院エキスパートパネルを対象に、前半、後半の2回のトライアルを実施した。前半、後半のトライアルの中間で、日本臨床腫瘍学会と共催の教育セミナーを行なった。327施設から753名の医師の参加があった。主要評価項目は、後半の模擬症例25例で、エビデンスレベルが高い遺伝子異常への正解率90%以上かつ治療薬のあるエビデンスレベルが低い遺伝子異常への正解率40%以上を達成するがんゲノム医療拠点病院の割合(Accreditation Rate)とした。27のがんゲノム医療拠点病院エキスパートパネルが参加した。Accreditation率は55.6%(P<0.001)と主要評価項目を満たした。前半、後半のトライアルの中間で行われた日本臨床腫瘍学会と共催の教育セミナーにより正解率の向上が認められた(58.7%から67.9%へ向上)。
令和3年8月にCPG検査としてctDNA検査が保険適応されたことを受け、進行固形癌に対するctDNA検査の適正使用に関するExpert Panel Consensus Recommendations作成目的で、関係者(分担・協力者)と班会議を行った。
西尾小班では、主としてがんゲノム医療中核拠点病院等以外に勤務し、がん診療に携わる医師等を対象にがんゲノム医療に携わる医師等が備えるべき知識や資質についての検討内容を基に、身につけるための方策を検討の上、医師等を対象に、講習会を実施し、形成的評価及びアンケート調査を行った。講習会は令和3年10月9日(WEB開催)に開催した。参加者は858名であった。事前事後問題結果を用い教育効果の評価を行った。事前事後問題の解答率の中央値は事前問題3.5点/8点、事後問題4.4点/8点(p<0.0001、Mann-Whitney test)であり、教育効果が示された。講習会の実施を通じて研修実施者の育成をおこなった。アンケート調査結果を基に小班会議(令和3年10月9日、WEB開催)を開催し、改善点を話し合った。事前・事後問題の解答をWEB上(https://ca-genome-edu.jp)に掲示した。
がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践し、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成を系統だって実施することにより、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上が期待される。がんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践することで、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等を育成することが期待される。
結論
標準化された質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療に対する高度な知識と経験を有する医師等が、がんゲノム医療を実施することにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することにより、生存率の向上および医療経済的なメリットが期待される。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)を介して、がんゲノム医療を受ける患者のゲノム情報、臨床情報を収集することにより、がんゲノム医療の学術的な発展をもたらすとともに新薬の開発などで社会的に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202108005B
報告書区分
総合
研究課題名
がんゲノム医療に携わる医師等の育成に資する研究
課題番号
19EA1007
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
大江 裕一郎(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 呼吸器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 達也(国立研究開発法人 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター)
  • 吉野 孝之(国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院 消化管内科)
  • 土原 一哉(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター トランスレーショナルインフォマティクス分野)
  • 内藤 陽一(国立がん研究センター東病院 先端医療科)
  • 角南 久仁子(関原 久仁子)(国立がん研究センター 中央病院 臨床検査科)
  • 西尾 和人(近畿大学医学部 ゲノム生物学教室)
  • 小山 隆文(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 先端医療科)
  • 高橋 秀明(国立がん研究センター東病院 肝胆膵内科)
  • 浜本 康夫(栃木県立がんセンター薬物療法科)
  • 櫻井 晃洋(札幌医科大学 医学部遺伝医学)
  • 中谷 中(三重大学医学部附属病院)
  • 武田 真幸(近畿大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんゲノム医療は、第3期がん対策推進基本計画の分野別施策「がん医療の充実」に掲げられている重要課題である。質の高いがんゲノム医療の提供には、がんゲノム医療に携わる人材の育成が必要不可欠であるが、現場で対応する医師等に関しては、備えるべき知識や資質等が明確でなく、またそれらを修得するためにどのような研修が必要か明らかにされていない。また、質の高いがんゲノム医療を均てん化するには、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上、標準化が不可欠である。本研究では、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成およびがんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成を行い、質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等により、がんゲノム医療が実施されることにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することを目的とした。
研究方法
本研究事業では、1)がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成方法の研究(吉野小班)、2)がんゲノム医療中核拠点病院以外のがんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等の教育、育成の研究(西尾小班)を両小班の連携のもと実施した。
結果と考察
吉野小班では、がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材およびがんゲノム医療中核拠点病院以外のがんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等が備えるべき知識や資質等を検討した。
模擬症例50例を用いたトライアルから、全12のがんゲノム医療中核拠点病院エキスパートパネルでエビデンスレベルが高い(A/B/R)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされている一方、エビデンスレベルが低い(C/D/E/F)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされていないことがわかった。模擬症例50例を25例×2回に分割し、がんゲノム医療拠点病院エキスパートパネルを対象に、前半、後半の2回のトライアルを実施した。前半、後半のトライアルの中間で、日本臨床腫瘍学会と共催の教育セミナーを行なった。主要評価項目は、後半の模擬症例25例で、エビデンスレベルが高い遺伝子異常への正解率90%以上かつ治療薬のあるエビデンスレベルが低い遺伝子異常への正解率40%以上を達成するがんゲノム医療拠点病院の割合(Accreditation Rate)とした。27のがんゲノム医療拠点病院エキスパートパネルが参加した。Accreditation率は55.6%(P<0.001)と主要評価項目を満たした。
西尾小班では、主としてがんゲノム医療中核拠点病院等以外に勤務し、がん診療に携わる医師等を対象にがんゲノム医療に携わる医師等が備えるべき知識や資質について検討した。
講習会(令和3年10月9日、WEB開催)を実施し、形成的評価及びアンケート調査を行った。参加者は858名であった。事前事後問題結果を用い教育効果の評価を行った。事前事後問題の解答率の中央値は事前問題3.5点/8点、事後問題4.4点/8点(p<0.0001、Mann-Whitney test)であり、教育効果が示された。事前・事後問題の解答をWEB上(https://ca-genome-edu.jp)に掲示した。
がんゲノム医療中核拠点病院等で開催されるエキスパートパネルを構成する専門的な人材が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践し、エキスパートパネルを構成する専門的な人材の教育、育成を系統だって実施することにより、がんゲノム医療中核拠点病院等のエキスパートパネルの質の向上が期待される。がんゲノム医療連携病院などで、がんゲノム医療に従事する医師等が備えるべき知識や資質等を明らかにし、人材育成に資する研修資料や研修プログラムを作成・実践することで、がんゲノム医療や分子標的治療に対する高度な知識と経験を有する医師等を育成することが期待される。
結論
標準化された質の高いエキスパートパネルの判断に基づき、がんゲノム医療に対する高度な知識と経験を有する医師等が、がんゲノム医療を実施することにより、適切ながんゲノム医療を広く国民に提供することにより、生存率の向上および医療経済的なメリットが期待される。がんゲノム情報管理センター(C-CAT)を介して、がんゲノム医療を受ける患者のゲノム情報、臨床情報を収集することにより、がんゲノム医療の学術的な発展をもたらすとともに新薬の開発などで社会的に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2022-06-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202108005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
12のがんゲノム医療中核拠点病院エキスパートパネルでエビデンスレベルが高い(A/B/R、「次世代シークエンサー等を用いた遺伝子パネル検査に基づくがん診療ガイダンス(2020 年 5月 8 日 第 2.1 版)」)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされている一方、エビデンスレベルが低い(C/D/E/F)遺伝子異常に正確なクリニカル・アノテーションがなされていないことがわかった。
エキスパートパネル間の質を比較した研究は、国際的にもあまりなされていない。
臨床的観点からの成果
主にがんゲノム医療中核拠点病院等以外に勤務し、がん診療に携わる医師等を対象にがんゲノム医療に携わる医師等が備えるべき知識や資質を明らかにし、がんゲノム医療に必須の知識を身につける際に求められる研修資料、教育プログラムの策定、講習会の実施と評価法の策定を行った。約1200名の医師が講習会に参加したことにより、ゲノム医療を実践する医師の臨床レベル向上に寄与した。
ガイドライン等の開発
2021年8月にCPG検査としてctDNA検査が保険適応されたことを受け、進行固形癌に対するctDNA検査の適正使用に関するExpert Panel Consensus Recommendationsを作成した。事前に模擬症例作成コアメンバーで14のCQを設定し、関係者でCQの適切性を検討した。CQに対する推奨文は関係者と対面・WEBハイブリッド型の班会議で討議およびvoting(がんゲノム医療がん中核拠点病院 12施設代表者が投票者)を行った。
その他行政的観点からの成果
近い将来エキスパートパネルの負担はさらに増加すると考えられ、全症例(All)から必要な症例(Some)に絞って行う(複雑な症例や教育的な症例をより重点的に検討)というエキスパートパネルの最適化が必要である。合わせて臨床医個人レベルのクリニカル・アノテーションの教育を日本臨床腫瘍学会・日本癌治療学会・日本癌学会と協働して行うことが重要である。また、AI診断システムを用いたエキスパートパネルの開発が望まれる。
その他のインパクト
がんゲノム医療中核拠点病院およびがんゲノム医療拠点病院のエキスパートパネル、さらにがんゲノム医療に携わる医師の育成に資する教育資材作成およびセミナーが実施された。今後も日本臨床腫瘍学会の教育委員会主導でエキパネ道場は年始セミナーとして継続されることになった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
55件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン(厚生労働省) 血中循環腫瘍DNAを用いたがんゲノムプロファイリング検査の適正使用に関する政策提言(3学会合同ゲノム医療推進タスクフォース)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sunami K, Naito Y, Aimono E, Amano T, Ennishi D, Kage H, Kanai M, Komine K, Koyama T, Maeda T, Mori
The initial assessment of expert panel performance in core hospitals for cancer genomic medicine in Japan.
Int J Clin Oncol. , 26 (3) , 443-449  (2021)
原著論文2
Sunami K, Naito Y, Aimono E, Amano T, Ennishi D, Kage H, Kanai M, Komine K, Koyama T, Maeda T, Morit
Correction to: The initial assessment of expert panel performance in core hospitals for cancer genomic medicine in Japan.
Int J Clin Oncol. , 26 (3) , 443-449  (2021)
原著論文3
ImaI M. Nakamura Y. Sunami K. et al
Expert panel consensus recommendations on the use of circulating tumor DNA assays for patients with advanced solid tumors: Cancer Science
Cancer Science  (2022)
10.1111/cas.15504

公開日・更新日

公開日
2022-06-17
更新日
2023-02-16

収支報告書

文献番号
202108005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
19,475,000円
差引額 [(1)-(2)]
525,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 543,000円
人件費・謝金 587,000円
旅費 33,000円
その他 13,697,000円
間接経費 4,615,000円
合計 19,475,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-09-29
更新日
-