乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究

文献情報

文献番号
202107024A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児の発育・発達、栄養状態の簡易な評価手法の検討に関する研究
課題番号
21DA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
横山 徹爾(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部)
  • 多田 由紀(東京農業大学応用生物科学部栄養科学科)
  • 小林 知未(武庫川女子大学 食物栄養科学部)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 森崎 菜穂(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
  • 和田 安代(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児の身体発育の客観的な評価は、わが国ではほぼ10年ごとに実施されている乳幼児身体発育調査による発育値と比較して行われる。しかし、最新の同調査は新型コロナ感染症拡大の影響で延期され、また近年調査協力率が低下していることから、今後の調査手法について検討する必要が生じている。一方、身体発育に大きな影響を与える栄養状態の評価も重要であり、早い年齢で確立される食習慣等についても、乳幼児健診時だけでなく、家庭や保育所等でも養育者やその支援者が、児の栄養状態・食習慣等を評価できることが望まれる。本研究では、テーマ1で我が国の特徴を踏まえた簡易な乳幼児の栄養状態評価手法の開発を行い、テーマ2で今後の乳幼児身体発育調査の方法に関する検討を行うことを目的とする。
研究方法
[テーマ1]
①文献レビューによる検討では、英語文献はPubMed、日本語文献はJ-DreamⅢおよび医学中央雑誌を用いて検索を行い抽出した。
②平成27年度乳幼児栄養調査の2〜6歳児2431名のデータを用いて、体格指標のカテゴリを従属変数とし、調査票の質問項目を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。
③乳幼児健診の問診項目と乳幼児の体格との関連についての縦断分析では、愛知県内9市町のデータを用いて、平成27年度に出生し、同一の市町で1歳6か月児健診と3歳児健診を受診した4,404人を解析対象とした。3歳児健診時点の肥満度と健診の問診項目との関連を分析した。
④甲州市母子保健縦断調査結果を活用した分析では、同市の乳幼児健診データのうち平成25年度に出生した193人を対象とし、妊娠届の提出時から5歳児健診までの縦断データの突合と記述統計量を整理した。
[テーマ2]
①各国の身体発育曲線はどのようなデータを用いて作成されているのか文献調査等により確認し、わが国でも類似の活用が可能か検討した。
②わが国の既存データとして、乳幼児健診、就学時健診、保育所での身体計測、出生届、診療データ等のデータの利用可能性についても検討した。
③乳幼児健診及び学校保健統計を活用する場合には、健診の実施時期によって年齢分布が不連続となる可能性があるので、その場合の乳幼児身体発育曲線作成上の技術的な問題点を検討した。
④高い精度で乳幼児身体発育曲線を作成するために必要な年月齢別調査対象人数を検討するための方法を開発し、平成22年乳幼児身体発育調査を参考にして試行した。
結果と考察
[テーマ1]PubMed からは、ガイドライン1 件、レビュー50 件、その他11 件が抽出された。医学中央雑誌およびJ DreamⅢからは、レビュー1 件、その他10 件が抽出された。文献研究と乳幼児栄養調査等で体格と関連が認められた項目には、野菜や甘味飲料の摂取頻度、朝食欠食、家族との共食、運動時間や起床時間、母乳育児、母親の喫煙が挙げられた。文献研究と乳幼児栄養調査等のいずれかのみで用いられる項目にも、乳幼児の体格との関連が認められるものがあった。
[テーマ2]海外の身体発育曲線の多くは、身体発育曲線の作成を目的として測定が実施されている調査の結果をもとに作成されていた。既存情報から作成された身体発育曲線も広く使われていた。わが国における既存データとしては、3~4 か月児、1 歳6 か月児、3 歳児健診から偏りが少なくデータが得られる可能性があるが、他の年月齢データの取得は難しく、とくに3 歳より後の年齢については、乳幼児健診データを利用できる可能性は低いと思われた。これを補完する候補として、保育所における記録の利用が最も実効性が高いと考えられた。そのような年齢が不連続のデータを用いて身体発育曲線の作成を試みたところ、年月齢別の調査人数について十分な検討が必要と思われた。そこで、年月齢調査人数と、発育曲線の誤差率・バイアスとの関係をシミュレーション可能な計算プログラムを開発し、平成22年乳幼児身体発育調査の調査人数を参考に試行したところ、年月齢別の誤差率の特徴などが明らかになり、今後の調査設計における年月齢別人数の検討が重要であることが確認された。これにより年齢が不連続の状況も容易にシミュレーション可能で、母集団の発育曲線を正しく再現できるかを確認できるようになった。
結論
[テーマ1]食生活を含む生活習慣や育児環境に関する項目から、乳幼児の栄養状態の評価に用いられるものが抽出できた。しかし、文献研究と乳幼児栄養調査等のいずれかのみで用いられる項目もあり、我が国の乳幼児の栄養状態との関連はさらに検討が必要である。
[テーマ2]わが国で既存情報を活用する場合には、3~4か月児、1歳6か月児、3歳児健診に加えて保育所における記録の活用も想定された。従来の調査方法および既存情報を活用する場合で、最適な年月齢別調査人数についての検討を行うための方法論を開発した。

公開日・更新日

公開日
2022-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202107024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,130,000円
差引額 [(1)-(2)]
870,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,368,538円
人件費・謝金 1,650,416円
旅費 0円
その他 2,111,676円
間接経費 0円
合計 8,130,630円

備考

備考
研究費の効率的執行により少ない研究費で研究を遂行できたため返納が生じた。

公開日・更新日

公開日
2023-03-15
更新日
-