新規生体膜生合成酵素と生理活性脂質(PAF)生合成酵素の機能解析

文献情報

文献番号
200832053A
報告書区分
総括
研究課題名
新規生体膜生合成酵素と生理活性脂質(PAF)生合成酵素の機能解析
課題番号
H20-免疫・若手-028
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
進藤 英雄(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生体膜リン脂質は組織や細胞によって多種多様であり、血小板活性化因子(PAF)のような炎症性脂質も含まれる。生体膜の多様性は、リゾリン脂質アシル転移酵素によって作られるが長年分子同定されてなかった。私達はPAF生合成酵素を含む、リゾリン脂質アシル転移酵素を5種類同定した。PAF生合成酵素はtoll-like受容体4(TLR4)アゴニスト刺激で活性化や遺伝子誘導される。これらの酵素群の機能解析を行うことによって、炎症細胞での生体膜形成やPAF産生メカニズムを解明する。
研究方法
(1)2番目のPAF生合成酵素(リゾPAFアセチル転移酵素)の同定
Ca非要求性のPAF生合成酵素をマウス肺で見つけ、部分精製し、リゾホスファチジルコリンアシル転移酵素(LPCAT)1がその活性を持つことがわかった。TLR4、3、9刺激による酵素調節を調べ、LPCAT1の点変異解析も行った。

(2)新規リゾリン脂質アシル転移酵素の発見
機能未同定の遺伝子AGPAT3に注目し、網羅的にアシル転移酵素活性測定を行った。
結果と考察
(1)LPCAT1はLPCAT2と異なり、TLR4刺激による誘導も活性化もされなかった。Arg177など活性に必要なアミノ酸も点変異解析により同定した。
 LPCAT1(主に肺)は恒常的、LPCAT2(主にマクロファージ)は誘導型のPAF生合成酵素であることがわかった。これらはアラキドン酸からプロスタグランジンH2を合成するシクロオキシゲナーゼ(COX)-1(恒常型)とCOX-2(誘導型)の関係に似ている。

(2)AGPAT3はsn-2位にアラキドン酸を持つホスファチジン酸とホスファチジルイノシトールを合成するアシル転移酵素であった。酵素活性からLPAAT3に改名した。主に精巣に発現し、週齢に応じての発現量が上昇したため精巣の成熟と関連しているだろう。また、活性からアラキドン酸由来の生理活性脂質(ロイコトリエンなど)の産生にも寄与しているかもしれない。
結論
恒常的に働く新規PAF生合成酵素の発見により、2種類のPAF生合成酵素のそれぞれに特異的な阻害剤の開発が望まれる。PAF生合成メカニズムの解明は炎症やアレルギーの新しい治療方法の開発につなげられるであろう。また、新規LPAAT3は生理活性脂質の貯蔵の役割も考えられる。今後は細胞やマウス、ヒトレベルでの解析を進め、より臨床応用できる成果が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-