食餌性脂質を中心とした生理活性脂質による粘膜免疫制御ならびにアレルギー疾患との関連解明

文献情報

文献番号
200832050A
報告書区分
総括
研究課題名
食餌性脂質を中心とした生理活性脂質による粘膜免疫制御ならびにアレルギー疾患との関連解明
課題番号
H20-免疫・若手-025
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
國澤 純(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでの研究から、食餌性成分による免疫制御がアレルギー発症に関与していることが示唆されているが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究においては、これまでの申請者の研究から食物アレルギーの発症に関わることが示されているスフィンゴシン1リン酸(S1P)の代謝制御にビタミンB6が重要であるという報告に基づき、ビタミンB6とS1P、粘膜免疫の三者間相互作用による粘膜免疫制御と食物アレルギーへの影響を明らかにする。
研究方法
ビタミンB6の機能を抑制するために、ビタミンB6のアンタゴニストを飲料水に加え自由摂取させた。アンタゴニストを2週間摂取した後にフロイントの完全アジュバントを用いニワトリ卵白アルブミン(OVA)で全身感作を行った後、OVAを経口頻回投与することでアレルギー性下痢を誘導した。これらのマウスにおける下痢症状を観察すると共に、各種免疫担当細胞の分布をFACS法やELISA法等の免疫学的手法を用い検討した。
結果と考察
アンタゴニストを投与したマウスにおいては、アレルギー性下痢の発症が抑制されていた。これらのマウスにおいてはマスト細胞の浸潤抑制が観察されたが、血清中IgEの産生には有意な差が認められなかった。またIgA産生細胞においても細胞数の減少はほとんど観察されなかった。この作用は同じS1Pを標的とした免疫抑制剤であるFTY720とは異なるものであることから、マスト細胞はT細胞、B細胞と異なるS1P依存的経路を用いていることが示唆された。
結論
ビタミンB6の機能阻害によるS1Pの代謝制御は食物アレルギーの発症を抑制することができ、その主作用細胞はマスト細胞であった。今後この遊走制御機構に関する分子メカニズムを同定することで、新たなアレルギー予防・治療法を開発できると期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
-