気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200832037A
報告書区分
総括
研究課題名
気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
一ノ瀬 正和(和歌山県立医科大学 医学部内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相澤 久道(久留米大学 医学部呼吸器内科)
  • 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
  • 大田 健(帝京大学 医学部内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気道炎症は気管支喘息の最も重要な病態で主たる治療標的であり、喘息管理の向上のためには臨床応用が可能な気道炎症評価法を確立する必要がある。本研究は、我々がこれまで免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業における研究で証明してきた非侵襲的な呼気凝縮液や呼気ガスを用いた気道炎症評価を、症状スコアや呼吸機能検査に加えた喘息管理の新しい手段として確立することを目的とした。平成20年度の研究では、気道炎症モニタリングの一般臨床応用化に向け、呼気一酸化窒素(NO)、呼気凝縮液、喀痰検査と呼吸機能、症状スコア、喘息治療効果との関連性について検討した。
研究方法
喘息症状の評価指標であるAsthma control test (ACT)、スパイロメトリー、ピークフロー測定、呼気NO測定を行い、閉塞性障害と気道過敏性を検出するNOのカットオフ値をROC解析にて求めた。また呼気NOに基づいた喘息治療の強化が、呼吸機能障害の改善に結び付くかを検討した。さらに、吸入ステロイド療法の導入前後で、スパイロメトリー、気道過敏性測定、EBC、誘発喀痰採取を行い、ステロイド治療による閉塞性障害および気道過敏性の変化と関連するEBC中の炎症物質および誘発喀痰中の炎症細胞やサイトカイン、ケモカインを検索した。また、喘息患者にダニ抗原吸入負荷試験を行い、前後でEBCの採取を行い、Cysteinyl Leukotriene (cysLTs), histamine, PGD2を測定し比較した。
結果と考察
呼気NO濃度は症状や呼吸機能(閉塞性障害・気道過敏性)と関連し、呼吸機能異常の検出において感度が高い特性を示した。さらに症状評価で過小評価した患者を呼気NO測定で検出し、より良好な状態に導くことが可能であることが明らかにされた。呼気凝縮液中の炎症物質に関しては、IL-4, RANTES, IP-10がステロイド反応性・抵抗性の識別に有用な可能性が示され、CysLT, PGF2など喘息発作関連物質の検索にも利用できることが明らかにされた。さらに喀痰中CTLA-4+CD4+25+T細胞やIL-10は喘息治療の効果判定に利用できるバイオマーカーとなる可能性が示された。
結論
喘息患者の呼気NO濃度は症状や呼吸機能と関連し、治療にも応用可能な気道炎症マーカーであることが明らかにされた。呼気NO検査の一般臨床応用に向けて、正常値や治療強化の基準値を明確にする必要がある。また呼気凝縮液検査や喀痰検査が喘息治療への反応性の予測、喘息発作関連物質の検索、治療効果の判定に応用できる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2009-03-30
更新日
-