アトピー性皮膚炎のかゆみの解明と治療の標準化に関する研究

文献情報

文献番号
200832029A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎のかゆみの解明と治療の標準化に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学大学院医学研究院 皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 高森 建二(順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院)
  • 相馬 良直(聖マリアンナ医科大学 皮膚科学)
  • 秀 道広(広島大学医学部 皮膚科)
  • 佐伯 秀久(東京大学大学院医学系研究科 皮膚科学)
  • 遠山 正彌(大阪大学大学院医学系研究科神経機能形態学講座)
  • 稲垣 直樹(岐阜薬科大学機能分子学大講座薬理学研究室)
  • 大矢 幸弘(国立成育医療センター第一専門診療部アレルギー科)
  • 浜崎 雄平(佐賀大学医学部小児科学)
  • 中村 晃一郎(埼玉医科大学皮膚科)
  • 天谷 雅行(慶應義塾大学医学部皮膚科)
  • 玉利 真由美(理化学研究所ゲノム医科学研究センター呼吸器疾患研究チーム)
  • 野口 恵美子(筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻遺伝医学分野)
  • 林 純(九州大学大学院医学研究院感染環境医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アトピー性皮膚炎と痒みのメカニズムを臨床的、モデル実験的、遺伝子解析的に研究し、最新EBMを収集して広く公表する。
研究方法
(1)EBMに関する研究
漢方、合併症、環境アレルゲン、シクロスポリン、心身医学、評価法・評価表、紫外線、抗ヒスタミン作用薬、スキンケア、タクロリムス、ステロイド、食物アレルゲン除去、民間療法の最新EBMをまとめる。
(2)かゆみの臨床的・基礎的な解析
アトピー性皮膚炎における、1)タクロリムス軟膏と2)保湿外用剤による坑痒み効果、3)痒みの実態調査、4)汗アレルギーとの関連、5)痒みと炎症の関連、6)皮膚の損傷治癒と神経再生、7)マウスモデルでの掻痒発現機序の解析を行った。
(3)アトピー性皮膚炎の遺伝子解析研究
アトピー性皮膚炎における、8)痒みと炎症の機序の解明、9)疾患感受性遺伝子、10)角層機能遺伝子の解析を行った。
結果と考察
(1)現在、各分野3-191件の該当論文候補を精査中。
(2)かゆみの臨床・基礎的な解析
1)データ解析中。2)倫理委員会申請中。3)抗ヒスタミン薬は樹状細胞のTARC産生を抑制する。4)汗アレルギーはアトピー性皮膚炎患者に多く、重症例ほど頻度が高い。5)表皮内神経伸長にはMMP2による基底膜構成蛋白の分解が関与する。6)表皮損傷・再生にはKlk8、AP2α、Keratin1,10の発現高下が関連する。7)NC/Ngaマウスのダニ抗原誘発皮膚炎では活発な掻き行動がみられた。
(3)アトピー性皮膚炎の遺伝子解析研究
8)S罹患同胞対連鎖解析によりSMAD3の多型、10)症例対照研究でTh2ケモカインMDC多型、9)石垣島コホートで、フィラグリン遺伝子変異との関連の可能性がみられた。
タクロリムス軟膏や保湿剤の坑痒み効果、抗ヒスタミン作用薬の新たな作用メカニズム、汗アレルギーの関与は臨床的に重要な発見である。また、マウスモデル他を用いた研究は、新たな掻破行動抑制物質の発見が期待される。加えて、従来の知見にとれわれない新規関連因子の探索には、現在進行中の複数のゲノムワイドの遺伝子多型解析が重要である。

結論
本研究での基礎的、臨床的新知見により、アトピー性皮膚炎の痒みの病態や治療が進み、かゆみ・EBMサイトのアップデートにより治療の標準化と普及が推進され、国民に貢献する。

公開日・更新日

公開日
2009-06-05
更新日
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