一般用医薬品の販売における薬剤師等による管理及び情報提供の適切な方法・実施体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202106003A
報告書区分
総括
研究課題名
一般用医薬品の販売における薬剤師等による管理及び情報提供の適切な方法・実施体制の構築のための研究
課題番号
21CA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
益山 光一(東京薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 哲也(東京薬科大学 薬学部社会薬学教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
2,869,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症拡大防止及び新たな生活様式に向けた規制改革や、デジタル時代に向けた、規制全般のデジタルトランスフォーメーションを背景に、オンライン等を活用することで、店舗管理者が実地でなくとも店舗の医薬品や従業員等の安全管理を行えるよう規制を見直すことについて、規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループにおいて議論されている。その中で、一般用医薬品(OTC薬)の販売に関して、情報通信機器を活用した店舗販売業におけるOTC薬の管理及び販売・情報提供について、薬剤師又は登録販売者がOTC薬の区分に応じて実施すべき事項や、店舗販売業者の責任において販売することなどを前提に、薬剤師又は登録販売者による情報通信機器を活用した管理体制・情報提供のあり方について検討した上で、必要な措置をとることとの指摘を踏まえ、本研究では、OTC薬を購入し使用する者の安全を確保した上で、情報通信機器を薬剤師又は登録販売者の業務に導入するために考慮しなければならない事項等を調査・検討し、必要な要件等について検討することを目的とする。
研究方法
OTC薬を購入し使用する者の安全を確保した上で情報通信機器を薬剤師又は登録販売者の業務に導入するために考慮しなければならない事項等について調査・検討を実施する。その際に必要な要件等については、日本薬剤師会等からの有識者の参加におる班会議を設置し、その中で、必要な検討を進めることとした。本班会議での検討を踏まえ、「情報通信機器を活用するにあたって一般用医薬品の販売に起こりうる課題に関する調査」として、ヒヤリハット事例の調査解析、OTC の乱用に関する専門家へのインタビュー調査や関係する国内外の文献調査等を実施した。また、「一般用医薬品の販売時に購入者の安全や適正使用のために専門家(薬剤師又は登録販売者)が行う情報提供や、店舗等において専門家の管理者が行う管理の内容等について実際の事例の調査」として国内薬局でのインタビュー調査や、「諸外国における一般用医薬品の販売制度等の調査」を実施するとともに、「一般用医薬品の販売に必要な在庫管理・品質管理・購入者及び医薬品情報の取扱い等についての調査」でのOTC薬を販売するにあたって薬剤師等の専門家の関与の必要の有無等について項目ごとに班会議メンバーにおいて検討・確認を実施した。
結果と考察
薬局ヒヤリハット事例の調査の結果からは、ヒヤリハット発見については薬剤師が発見する割合が高く、その内容のほとんどは「不適切な販売の回避であることなどから、情報通信機器を使用する際においても、専門家の確認が入る仕組みが重要であり、購入者がお薬手帳を持っている場合にはその内容を確認するシステムも重要となる。また一方で、最近、OTC薬の濫用問題、特にこのコロナ禍で、行き場を失った若者間でのOTCの過剰摂取が頻回に行われ、死亡に至るケースも発生し社会問題となっている。このような状況下では、インターネット等によってすぐに購入できるシステムの利用促進よりも、依存や濫用の可能性のある品目の再確認及びその品目の販売規制の検討が喫緊の課題であると考える。
また、米国では OTC は原則単味でその表示内容は製造会社が異なっても同じ成分は同じ表記となって、購入者がその内容を理解して購入できる点が特徴となっていること、加えて、依存性のある成分の医薬品は基本的にはインターネットで購入できない状況であることのなどが日本と異なっている。英国については、医薬品のカテゴリー分類により、コデインリン酸塩のような依存性のある成分は、インターネット販売の際には、詳細な患者情報をヒアリングする調査表を回答しなければならない点など、我が国と異なる点は、今後の円滑技術を活用する際にも参考になると考えられる。
結論
販売業許可を持つ店舗で、専門家不在の時間に遠隔技術を用いて販売することは、遠隔技術の進展を考えれば、不適切な使用を防ぐための条件を付した上で、将来的には可能になることも考えられる。しかしながら、その実用化に向けては、①このコロナ禍で問題が浮き彫りとなった濫用等のおそれのある医薬品の見直し(総合感冒薬等の新規指定の実施など)、②受診勧奨や医薬品を販売しないケース等の専門家の判断による適切な対応(購入者が気付いていない自分の疾患の状態等に専門家がどのようにして気づき対応するかなど)などの対策がまずは不可欠である。
 また、上記のような対応を常に専門家に頼るだけでなく、先進国の中で低いとされている我が国のヘルスリテラシーの向上に向け、一般用医薬品の選定をコマーシャルベースから医薬品のファクトベースに変換できるよう、国は、外箱表記等による情報提供の工夫、適切な配合剤の在り方の検討、濫用防止に鑑みた製剤上の工夫、くすりの教育等を実施していくことも必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
2023-11-07

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202106003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、オンライン等を活用することで、店舗管理者が実地でなくとも店舗の医薬品や従業員等の安全管理を行えるよう規制を見直すことへの規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループでの議論を踏まえ、必要な現状の対応や課題について整理・検討を行った。成果は、遠隔による一般用医薬品の購入の円滑化については、現在の社会的な課題ともなっている「一般用医薬品のオーバードーズ問題」がコロナ禍で顕著となり、その課題(濫用のおそれのある一般用医薬品の規制など)の抽出や必要な管理等についての考え方を明記した。
臨床的観点からの成果
オーバードーズによる致死性のある一般用医薬品の整理、インターネット販売後の救急搬送の増加、海外に比して低いヘルスリテラシーなどの我が国の課題について整理するとともに、米国英国での一般用医薬品の承認や販売の方法(配合剤ではなく一成分での販売、専門家不在の場では小包装販売など)についても比較対比し、我が国での課題を明確にした。
ガイドライン等の開発
本研究は、ガイドライン等の開発を目的としたものではなく、規制改革推進会議の指摘を踏まえ、社会的な課題等を踏まえたアカデミアの考え方をまとめたものであり、今後、規制改革推進会議からの求めに応じて、回答する際の根拠資料となる。
その他行政的観点からの成果
根拠に基づく政策決定を行う上での基礎資料となる点で行政的意義は大きい。具体的には、専門家不在時には遠隔対応可能となりうる業務またそれに対する必要条件について調査・整理の実施や、現在販売されている致死量に至る大容量パッケージや外箱表示、乱用等のおそれのある医薬品に指定されていないが実際には乱用されている成分の指定の見直しの必要性、さらに英米との制度の違いなどの海外情報の収集・整理等、今後の規制(薬機法改正等)に必要な課題等を明示している。
その他のインパクト
今回、日本薬剤師会をはじめとする薬剤師や登録販売者の専門家が所属する業界団体からの考え方や課題についても整理しており、一般用医薬品のインターネット販売に関する課題を業界団体としても参考となる資料となっている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202106003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,729,000円
(2)補助金確定額
3,422,900円
差引額 [(1)-(2)]
306,100円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 179,034円
人件費・謝金 779,504円
旅費 85,042円
その他 1,519,320円
間接経費 860,000円
合計 3,422,900円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2022-08-08
更新日
-