日中韓における少子高齢化の実態と対応に関する研究

文献情報

文献番号
202105003A
報告書区分
総括
研究課題名
日中韓における少子高齢化の実態と対応に関する研究
課題番号
20BA2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 小島 克久(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 竹沢 純子(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 中川 雅貴(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 佐々井 司(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 佐藤 格(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 蓋 若エン(ガイ ジャクエン)(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 守泉 理恵(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全世界で少子高齢化が進行する中、日中韓は、その先端を行っているといっても過言ではない。韓国では合計特殊出生率は1を切り、日本においても暫く続いた微増傾向は2016年より減少に転じ、さらに中国では一人っ子政策が撤回されても出生率は低下し続けている。日中韓における静止人口をもたらす出生水準の回復には見通しが立たない。
 一方死亡動向を見ると、いずれの国においても寿命は上昇しており、世界最高水準に至っているが、その傾向が今後も継続するのか、さらに健康寿命も延びているのかどうかは、医療・介護保険制度の効率を上げ、持続可能性をいかに保持するかにかかっている。
 日中韓の少子高齢化の進行状況は必ずしも同様ではなく、政策対応にも濃淡がある。本研究は、出生率・死亡率をはじめとした人口指標を用い、それらの変動をもたらす要因とそれに対する政策的対応の日中韓における状況を分析し、その効果を比較することを目的としている。
研究方法
以下の1~9分野について、資料収集、分析を進めた。
1. 少子化対策: 最新の韓国・中国・シンガポールの政策内容を精査・比較分析した。
2. 家族政策、出産・育児政策:年次国際会合(INLPR、OECD)に参加し日中韓及び先進諸国の情報収集を行うとともに、二次利用データの整理を行った。
3. 離家・パートナーシップ形成:韓国・シンガポールの結婚動向および人口関連政策が離家とパートナーシップ形成、家族形成に及ぼす影響の実態を既存資料に基づき分析した。
4. 子育て・介護環境:日本の社会生活基本調査を利用して子育て時間と就業、介護時間と就業の関係を解析し、子育て、介護の時間とそれに相当する生産力の金銭的価値の推定に関わる解析を行い、その結果を日本公衆衛生学会で発表した。
5. 医療制度: 国際会議(INLPR、HTAi)にて日中韓の診療報酬制度、医療技術評価等に関する医療制度比較に関し各国研究者と意見交換をし、パネルディスカッションを行った。あわせて台湾の新型コロナ感染症対策の分析を行った。
6. 介護制度: 中韓の研究協力者から収集した最新の情報をもとに、各国・地域の制度資料、統計を活用した細分類を進め、それぞれの国・地域の特徴をまとめ、制度要素を見える化した。
7. 年金制度:各国の年金制度の特徴を反映した、公的年金の給付と負担および年金財政収支に関するモデルを構築し、予備的分析を行った。
8. 外国人受け入れ施策: 東アジアにおいて外国人労働者の受け入れ政策がいち早く整備されてきた台湾・韓国に注目し、直近の動向を分析し情報収集を行った。
9. 少子高齢化関連施策の推移と要素を抽出し比較分析のための枠組みを作成した。
結果と考察
 日本、韓国に付け加え、中国も2016年の二人っ子政策から、2021年の第14次5カ年計画において、「適度生育水平」、つまり適度な出生率が目標とされ、本格的に少子化対策が始動することとなった。アジアの多くの国では家族計画を中心とした出生抑制政策から出生率増加を目標とする少子化対策への転換があったが、その転換点はシンガポールでは1987年、日本では1994年、韓国では1996年、中国では2021年であったといえる。日中韓における少子化は、伝統的な家族パターンや家族観・結婚観と、それに根ざした社会構造の中で進行しており、その流れを変えるには、人々の意識・価値観の変革を促す施策も必要となるだろう。
 日中韓三か国の公的医療保障制度は人口高齢化と医療技術の高度化による保健医療財政の持続可能性の課題に直面している。韓国では、健康保険の一元化が達成されているものの、民間インフラへの高い依存度、保険外の医療供給などに対する効果的な施策の実施が重要である。
 日本、韓国、台湾、中国の介護制度には多様性があるが、一方で共通点も多い。これは、お互いを見ながら制度を作っている、ということも影響しているだろう。制度を相互に比較することで、それぞれの施策は改善されうる。 
 急激に少子高齢化が進む日中韓において、年金制度の持続可能性を担保するための改革に付け加え、各国において日本の財政検証のような公式試算が公開され、年金財政の健全性が明らかにされることが望ましい。

結論
 日中韓の少子高齢化施策を比べると、医療制度、介護制度、年金制度と、分野が比較的確立している高齢化施策と比べ、少子化対策は、近年新たに実施されつつある施策であり、標準的な施策メニューというものが確立されるべきである。また、少子高齢化による労働力不足や人口減少に応じた人口移動施策は、国内人口移動、国際人口移動いずれについても、今後重要性を増すことになる。これら施策の要素別に各国の利用者数、財政支出、効果、アウトカムなどの統計を参照し、制度の改善につなげることが必要である。

公開日・更新日

公開日
2022-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202105003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
4,492,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,508,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,092,184円
人件費・謝金 759,097円
旅費 0円
その他 641,343円
間接経費 0円
合計 4,492,624円

備考

備考
差額624円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2022-11-11
更新日
-