肝炎ウイルスワクチン実用化のための基盤的研究

文献情報

文献番号
200831028A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスワクチン実用化のための基盤的研究
課題番号
H20-肝炎・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田 隆字(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 明里 宏文(医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 加藤 孝宣(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 中村 紀子(東レ株式会社 医薬研究所)
  • 松本 美佐子(北海道大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
59,506,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は持続感染化し、肝細胞癌を発症する重大な感染症である。しかし、インターフェロンおよびリバビリンによる治療効果は不十分である。HCVワクチンが、HCV感染に対する新たな予防法および治療法となれば、多くの患者の社会復帰を可能にし、医療保険のコスト軽減に寄与できると考えられる。また、予防用ワクチンを世界に先駆けて開発することにより、HCVキャリアー率の高い国々への国際協力が可能となる。
研究方法
HCVワクチン開発に必要な下記の研究を遂行する。
1. ワクチン実用化に向けたウイルス産生法および精製法向上に関する研究
2. 効果的な免疫法に関する研究
3. Genotypeに関わらず感染中和活性を誘導できるワクチンの開発
4. ウイルス様中空粒子産生系およびウイルス抗原を用いた安全な組換えワクチンの開発
5. ワクチン効果を実証できる動物モデルの開発
6. 感染中和機構に重要なHCVの初期感染過程の解析
結果と考察
ワクチン候補として、エンベロープ蛋白質発現系を開発し、その系で開発されたエンベロープ蛋白質を用いて、ワクチン効果を判定するためのHCV抗体検出系を作製した。また、2種類のプラスミドのトランスフェクションにより、single-roundな感染性HCV様粒子の産生に成功した。
動物モデルとしてGBV-B急性感染期を経たサル個体について長期経過観察を行い、GBV-Bはマーモセットにおいて長期持続感染し慢性肝炎を呈することが明らかとなった。
 HCVJFH1株を用いた感染実験より、アポトーシスを起こしたHCV感染肝細胞を骨髄系樹状細胞が取り込み、TLR3-TICAM-1依存的シグナルでNK細胞を活性化することを明らかにした。
結論
・エンベロープ蛋白質発現系を開発し、ワクチン効果を判定するためのHCV抗体検出系を作製した。
・E2蛋白質およびHCV粒子をマウスに免疫する系で、E2蛋白質に対する抗体の誘導を促進する2種類のアジュバントを見出した。
・モノクローナル抗体のエピトープ解析から、新たな中和エピトープを見出した。
・プラスミドトランスフェクションでのsingle-roundな感染性HCV様粒子の産生に成功した。
・マーモセットGBV-B感染モデルが慢性C型肝炎のモデル動物確立に向けたブレークスルーとなる可能性を見出した。
・骨髄系樹状細胞のエンドソームTLR3シグナルによるNK細胞活性化の分子メカニズムを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2009-04-06
更新日
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