文献情報
文献番号
200831006A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスにより惹起される炎症性誘発要因及びウイルス増殖に対する人為的制御による肝炎征圧
課題番号
H19-肝炎・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下遠野 邦忠(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 高久 洋(千葉工業大学 工学部)
- 堀田 博(神戸大学大学院医学研究科)
- 加藤 宣之(岡山大学大学院医歯薬総合研究科)
- 西口 修平(兵庫医科大学 内科学)
- 小原 恭子(熊本大学大学院 医学薬学研究部)
- 落谷 孝広(国立がんセンター研究所 分子腫瘍学・再生医学)
- 杉山 和夫(慶應義塾大学 医学部)
- 丸澤 宏之(京都大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
52,258,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
C型肝炎ウイルス(HCV)は肝炎発症、および肝がん発症の危険因子である。本研究では、HCV感染・増殖それ自体が細胞変化をもたらす原動力になっているとの考えのもとに、細胞が受ける各種変化を明らかにし、その原因となるウイルス側要因を解明し、それらの機構を明らかにして、HCV感染による肝疾患を予防、あるいは治療するための方策を見出すことを目的とする。
研究方法
以下の研究項目について研究を推進する。
(1)ウイルス複製を制御する細胞側要因の解析。
HCVゲノム自立的複製細胞あるいはHCV感染・増殖細胞を用いてウイルス複製、粒子産生に関与する細胞側の種々の要因を明らかにする。
(2)間葉系幹細胞から分化した肝細胞を用いたHCV感染実験を行い、その有用性を明らかにする。
(3)C型肝炎患者血清中に存在する欠失型HCVゲノムの存在頻度および意義を調べる。
(4)ゲノム不安定化に関与する宿主因子の発現制御機構をHCV感染との関連で解析する。
(1)ウイルス複製を制御する細胞側要因の解析。
HCVゲノム自立的複製細胞あるいはHCV感染・増殖細胞を用いてウイルス複製、粒子産生に関与する細胞側の種々の要因を明らかにする。
(2)間葉系幹細胞から分化した肝細胞を用いたHCV感染実験を行い、その有用性を明らかにする。
(3)C型肝炎患者血清中に存在する欠失型HCVゲノムの存在頻度および意義を調べる。
(4)ゲノム不安定化に関与する宿主因子の発現制御機構をHCV感染との関連で解析する。
結果と考察
(1)HCVゲノム自立的複製細胞あるいはHCV感染・増殖細胞を用いてウイルス複製、粒子産生に関与する細胞側の種々の要因の中で、特に脂肪代謝および脂肪輸送に関わる因子が感染性ウイルス粒子を細胞外に放出するのに重要であることを明らかにした。
(2)HCVゲノム複製を制御する因子として、HSp90、ATM、Chk2等を明らかにした。
(3)HCV感染後期に核小体肥大が生じることを見いだした。核小体サイズの肥大化はHCVを排除することにより回復することも明らかにした。さらに、HCV感染に伴いRBがん抑制タンパク質が減少することを明らかにした。また、HCV 感染により発現する宿主因子がp53の機能を抑制することを明らかにした。
(4)DNAに変異を導入する宿主因子のひとつ、AIDがHCV蛋白質、あるいはTNF-a刺激によりヒト肝細胞に異所性に発現誘導されることを明らかにした。
(5)間葉系幹細胞から分化誘導した肝細胞を利用したHCV感染及び評価系の開発を行った。
以上の研究成果は、HCVの複製阻害剤の開発に寄与すると共に、感染による肝疾患の分子機構の解明にも寄与する。
(2)HCVゲノム複製を制御する因子として、HSp90、ATM、Chk2等を明らかにした。
(3)HCV感染後期に核小体肥大が生じることを見いだした。核小体サイズの肥大化はHCVを排除することにより回復することも明らかにした。さらに、HCV感染に伴いRBがん抑制タンパク質が減少することを明らかにした。また、HCV 感染により発現する宿主因子がp53の機能を抑制することを明らかにした。
(4)DNAに変異を導入する宿主因子のひとつ、AIDがHCV蛋白質、あるいはTNF-a刺激によりヒト肝細胞に異所性に発現誘導されることを明らかにした。
(5)間葉系幹細胞から分化誘導した肝細胞を利用したHCV感染及び評価系の開発を行った。
以上の研究成果は、HCVの複製阻害剤の開発に寄与すると共に、感染による肝疾患の分子機構の解明にも寄与する。
結論
HCV感染により引き起こされる細胞の増殖制御として、脂肪蓄積、脂肪輸送、アポトーシス誘導、ミトコンドリア機能異常、ゲノム変異などにより細胞の質的な変化が生じること、さらにp53, RBの機能異常が、病態の進行に寄与している可能性が示唆された。これらの変化の分子機構を解明することにより、エビデンスに基づく治療方法の開発が可能になるので、そのためにはさらに精力的に研究を進めることが必要である。
公開日・更新日
公開日
2009-04-15
更新日
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