透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究

文献情報

文献番号
200831002A
報告書区分
総括
研究課題名
透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究
課題番号
H18-肝炎・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 隆(東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科)
研究分担者(所属機関)
  • 森兼啓太(国立感染症研究所 感染症情報センター 主任研究官)
  • 安藤亮一(武蔵野赤十字病院 腎臓内科 部長)
  • 佐藤千史(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科 教授)
  • 藤岡知昭(岩手医科大学 泌尿器科学講座 教授)
  • 小林光樹(東北大学医学部保健学科 消化器病学 教授)
  • 中井 滋(藤田保健衛生大学短期大学 専攻科 准教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
29,018,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、我が国の慢性透析患者のC型肝炎ウイルス感染の実態を記述し、C型肝炎ウイルス感染が予後に与える影響を調査する。また、透析診療内容を調査して、HCVウイルス感染経路を明らかにし、また感染の防止法を策定することで、慢性透析患者のC型肝炎ウイルス感染を撲滅することにある。

研究方法
慢性透析患者のHCV感染の実態を、14年前に調査した慢性透析患者のその後の経の記載、皆悉的な地域での患者と一般住民の経年的な調査、日本透析医学会の全国統計調査から、HCV感染率や新規感染率、新規感染を起こすリスク分析、標準化有病比などを算出した。一方導入時にすでに感染している可能性を検討するため透析導入時のHCV陽性率を調査し、一般献血者と比較した。地域のアンケート調査により、HCV患者の治療内容を調査した。また本邦の感染関連治療内容を全国アンケート調査した。欧米のHCV感染に対する診療内容を調査し、本邦と比較した。これらの知見をもとに「院内感染対策マニュアル」の改定をおこない、全国の透析施設に送付し、啓発を諮った。また本マニュアルの遵守状況を経年的に調査し、診療内容が変化したか検討した。
結果と考察
東京女子医大の透析導入時のHCV陽性率は7.3%で一般献血者の0.15%と比べ有意に高度で、日本の慢性透析患者のHCV抗体陽性率は9.84%、陽性化率は1.04%、岩手県の標準化有病比は女性5.42倍、男性8.39倍だった。14年間の死亡率はHCV抗体陽性者55%、陰性者50%と陽性者で高い傾向で、この間の糖尿病肝硬変・肝癌による死亡8名はHCV抗体陽性者にのみだった。HCV抗体陽性256症例の治療は観察例60.9%、治療例は、ウルソデオキシコール酸7.4%、グリチロン製剤(注射)26.6%、(経口)0.4%、インターフェロン4.7%と積極治療の症例は稀だった。院内感染を防止する診療は、欧米ではHCV患者隔離を行う国と行わない国が混在し、我国では67%がベッド固定を行っていた、この調査に基づき、「院内感染対策マニュアル」の改定を行い、感染対策の啓発と浸透をはかった。この結果、感染予防操作は、年々浸透していった
結論
「院内感染予防に関するマニュアル」の発行啓発やESAのプレフィルドシリンジ化等により、HCV抗体陽性率は1999年15.5%と比べ年々減少し、2007年には9.84%と低下し、かつ、陽性化率は2001年の2.1%と比べ2007年は1.04%と半減し、感染防止効果が観察され,介入の効果が確認できた。透析導入時の陽性患者のウイルス排除が次の課題である

公開日・更新日

公開日
2011-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200831002B
報告書区分
総合
研究課題名
透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究
課題番号
H18-肝炎・一般-002
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 隆(東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 血液浄化療法科)
研究分担者(所属機関)
  • 森兼啓太(国立感染症研究所 感染症情報センター 主任研究官)
  • 安藤亮一(武蔵野赤十字病院 腎臓内科 部長)
  • 佐藤千史(東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科 教授)
  • 藤岡知昭(岩手医科大学 泌尿器科学講座 教授)
  • 小林光樹(東北大学医学部保健学科 消化器病学 教授)
  • 中井 滋(藤田保健衛生大学短期大学 専攻科 准教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、我が国の慢性透析患者のC型肝炎ウイルス感染の実態を記述し、C型肝炎ウイルス感染が予後に与える影響を調査する。また、透析診療内容を調査して、HCVウイルス感染経路を明らかにし、また感染の防止法を策定することにある。
研究方法
透析導入時のHCV陽性率を調査し、一般献血者と比較した。HCV感染率を一般人口と比較した。HCV感染の予後への影響を観察するため、14年前に行った慢性血液透析患者の現状と、日本透析医学会統計調査の結果を解析した。欧米のHCV感染に対する診療内容を調査し、本邦と比較した。院内感染防止ガイドラインの遵守状況を経年的に調査し、診療内容が変化したか検討した。
結果と考察
透析導入時のHCV陽性率は7.3%と一般献血者の0.15%と有意に高度だった。2007年の日本の慢性透析患者のHCV抗体陽性率は9.84%、陽性化率は1.04%、岩手県の透析患者の標準化有病比は女性5.42倍、男性8.39倍だった。さらに新規感染のリスクは女性で低く、高齢者・高齢者で高かった。14年間の死亡率はHCV抗体陽性者55%、陰性者50%で陽性者で高い傾向だった。この間の糖尿病肝硬変・肝癌による死亡8名はHCV抗体陽性者にのみにみられた。欧米ではHCV患者の隔離を行う国と行わない国が混在しており、我国では67%がベッド固定を行い、感染予防操作は、年々浸透していた。
結論
透析導入時のHCV陽性率は一般献血者より有意に高く、導入前からの持ち込みが少なからず存在した。相変わらず導入後のHCV感染も一般人口より5?8倍と高頻度だった。HCV感染は透析患者の予後を悪化し肝硬変・肝癌死亡を増加していた。一方、感染対策マニュアルが浸透し、感染予防に関する透析操作は年々改善していた。今後も「マニュアル」の浸透が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200831002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究から作成された「院内感染予防に関するマニュアル」の浸透により、慢性透析患者のHCV抗体陽性率は1999年15.5%と比べ年々減少し、2007年には9.84%と低下し、かつ、陽性化率は2001年の2.1%と比べ2007年は1.04%と半減し、感染防止効果が観察され,本研究による介入の効果が確認できた。
臨床的観点からの成果
母子感染、薬物常用者と並んで、HCV感染の危険グループである慢性透析患者での新規HCV感染を減少することができた。透析患者でのHCV感染を撲滅して、生命予後を改善する見通しができただけでなく、社会にとっても危険グループの排除のめどがたった。
ガイドライン等の開発
透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル(三訂版)を作成し、厚労省Webに掲載された。
www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/jinshikkan_a_0001.pdf
その他行政的観点からの成果
透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル(三訂版)を作成し、厚労省Webに掲載された。
その他のインパクト
第24回日本環境感染学会総会においてシンポジウム「透析医療における感染対策」が開催され
「透析医療における院内感染予防マニュアル」秋葉 隆(東京女子医科大学)を述べた。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
10件
日本透析医学会、人工臓器学会、急性血液浄化学会等でシンポジウム、ワークショップ、教育講演

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kikuchi K, Yoshida T, Kimata N, et al
Prevalence of hepatitis E virus infection in regular hemodialysis patients.
Therapeutic Apheresis and Dialysis , 10 (2) , 193-197  (2006)
原著論文2
Ando M, Shibuya A, Tsuchiya K, et al.
Reduced capacity of mononuclear cells to synthesize cytokines ageinst an inflammatory stimulus in uremic patients.
Nephron Clinical Practice , 104 (3) , 358-362  (2006)
原著論文3
Nakai S, Wada A, Kitaoka T
An overview of regular dialysis treatment in Japan (as of 31 December 2004)
Therapeutic Apheresis and Dialysis 1 , 10 (6) , 476-497  (2006)
原著論文4
大澤正樹 加藤香廉 藤岡知昭
岩手県透析患者の悉皆的コホート研究:2年間の追跡調査結果報告
日循予防誌 , 42 (2) , 193-203  (2007)
原著論文5
森兼啓太
欧州感染対策事情
感染制御JICP , 4 (5) , 413-418  (2008)
原著論文6
安藤亮一 秋葉隆
血液透析施設におけるウイルス性肝炎に対する院内感染防止対策の現況
透析会誌 , 42 (6)  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-