先進諸国を中心とした海外におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析

文献情報

文献番号
200830030A
報告書区分
総括
研究課題名
先進諸国を中心とした海外におけるエイズ発生動向、調査体制、対策の分析
課題番号
H19-エイズ・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山本 太郎(長崎大学熱帯医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 奥村 順子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
2,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移動人口に焦点をあて、HIV/エイズのハイリスク集団の特定と発生動向や対策を調査する。
研究方法
本年度は、文献調査、聞き取りを中心に調査を行った。先行研究として、中国衛生部や国勢調査からのデータを基づいて、HIV/AIDSの流行と流動人口に関連する情報を調べた。バンコクに拠点を置く国際移住機関(IOM)に聞き取りを行った。
結果と考察
中国では近年、エイズ流行は高リスク群から一般住民へ拡散している。感染者は年毎に増加傾向にあり、2006年にはピークになった。感染症例が最も多い省は雲南、広西、河南省。また、5つのHIV/AIDS伝播経路が確認された。雲南、広西省においては麻薬使用と売春は主要な伝播経路であり、 売血と血液製品の汚染は河南省におけるエイズ伝播の重要な原因となっている。2006年から同性愛を含んだ性的による感染率が増加し、2007年に麻薬使用による感染を上回った。上海において、2006年11月までのHIV感染者数は2216例で、エイズ発症者は219例、死亡例は97例。新規感染は621例、そのうち46例はエイズ患者であり、死亡例は14例であった。流動人口が多い都市では、性的接触は主要な伝播経路であり、高リスク群から一般住民へ拡散する経路と考えられる。
タイでは、不法就労移民に対する、正式に1年間の就労許可を与える制度が開始し、結核、梅毒、薬物依存症、アルコール依存症などに罹患する不法就労移民の早期発見・治療を提供し、必要に応じて帰国を促すことができるようになった。この予算確保のため、就労許可にあたっては一人当たり3,800バーツの手数料(就労許可料1,800バーツ、健康保険料1,300バーツ、登録時の健康診断600バーツ、登録手続き料100バーツ)を徴収している。2004年の登録者82万人のうち結核または梅毒感染者はそれぞれ5,399人と3,092人であった。本制度の導入により、雇用主を巻き込んだ、性感染症予防啓発プログラムも実施されている。
結論
わが国におけるHIV感染者報告数は引き続き増加しており、日本に居住する外国人の数も依然少なくはない。HIV/AIDS対策先進国であるタイにおけるビザなし移住労働者に対する近年の取り組みを考察し、わが国の対策構築に役立てたることができると考える。
HIV/AIDS対策先進国ともいえるタイの事例は、外国籍滞在者が依然少なくはなく、その実態がつかめないわが国において、検討する価値があると思われる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-