HIV感染症の動向と影響及び政策のモニタリングに関する研究

文献情報

文献番号
200830016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の動向と影響及び政策のモニタリングに関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学医学部感染制御部)
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 中村亮介(東京都立松沢病院)
  • ソウケ島 茂(国立保健医療科学院政策部行政政策室)
  • サマン ザマニ(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻社会疫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
17,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV関連情報の集約と統合的分析を通じて、わが国の流行の理解と効果的・効率的なエイズ施策の推進に資する。
研究方法
(1)HIV感染及びリスク動向の統合的分析に関する研究
①近隣国・地域(中国、台湾、香港、韓国)及び主要先進諸国(米、英、仏、独、加、豪)のHIV/AIDS/STDデータを入手し、HIV/STD流行の動向を分析した。②わが国のSTD発生動向調査、母子保健統計、コンドーム統計、性行動関連データ、出入国管理統計、警察白書を収集分析し、HIV流行に対するわが国の社会的脆弱性を検討した。③全国9STD医療施設の受診者667名(男194例、女205例、風俗女性268例)に対し、無料HIV/STD検査と質問票調査を行った。④全国5施設の入院覚醒剤使用者108人と自助グループ覚醒剤使用者24人に対し、HIV/STD/肝炎感染率、注射行動・性行動を調査した。
(2)自治体のエイズ政策の評価に関する研究
 エイズ対策関連予算及びHIV/STD関連知識に関する全国世帯調査データを用いて、マルチレベル解析を行い、自治体間のエイズ関連施策の費用対効果を評価した。
(3)HIV流行の推計予測に関する研究
男性とセックスする男性(MSM)の推定人口、リスクグループ構成、HIV感染率、HIV/AIDS報告数に基づいて、決定論的・確率論敵数理モデルを構築し、MSMのHIV流行の推計・予測を行った。
結果と考察
以下の事実を明らかにした;①近隣国・地域における日本を上回るHIV流行の発生、②欧米におけるHIV/STD流行の再燃、②日本のHIV報告の若者層への偏り、③わが国の性関連現象における複雑な変化の発生(性行動↓、細菌性STD↓、ウイルス性STD↑、妊娠中絶↓、コンドーム出荷量↓)、④わが国若者の性行動の無防備さ、⑥性産業や麻薬の蔓延の悪化、⑦出入国数の増大、⑧薬物使用者における注射使用・共用の減少傾向、⑨STD受診者におけるHIV感染率の上昇、⑩自治体間でのエイズ関連施策の格差と非効率的な費用対効果の存在、⑪MSMにおける推定HIV感染率(約7%)と今後の最大予測感染率(14%、1万人)。また、Webサイトを開設して、収集したデータの一部を公開した。
結論
計画通り、HIV関連情報を集約して統合的に分析し、わが国のHIV流行と社会的脆弱性について、現状、文脈、展望を明らかにし情報発信した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
200830016B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症の動向と影響及び政策のモニタリングに関する研究
課題番号
H18-エイズ・一般-017
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
木原 正博(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻社会疫学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 小野寺 昭一(東京慈恵会医科大学医学部感染制御部)
  • 和田 清(国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部)
  • 中村 亮介(東京都立松沢病院精神科)
  • ソウケ島 茂(国立保健医療科学院公衆衛生政策部行政政策室)
  • サマン ザマニ(京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻社会疫学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV関連情報の集約と統合的分析を通じて、わが国の流行の理解と効果的・効率的なエイズ施策の推進に資する。
研究方法
(1)HIV感染及びリスク動向の統合的分析に関する研究
①近隣国・地域(中国、台湾、香港、韓国)及び主要先進諸国(米、英、仏、独、加、豪)のHIV/AIDS/STD情報を入手し、流行動向を分析した。②わが国のSTD発生動向調査、母子保健統計、コンドーム統計、性行動関連データ、出入国管理統計、警察統計、新聞記事を収集分析し、HIV流行に対するわが国の社会的脆弱性を検討した。③全国約10のSTD関連医療施設の受診者(男性、一般女性、風俗女性)(計1705人)に対し、無料HIV/STD検査と質問票調査を行った。②主要薬物治療医療施設の入院患者と自助団体の覚醒剤使用経験者(計645人)を対象に、HIV/STD/肝炎感染率、注射・性行動を調査した。
(2)自治体のエイズ施策の評価に関する研究
 エイズ発生動向データ、都道府県エイズ施策情報(予算、検査・相談サービス時間数)、HIV/STD関連知識に関する全国世帯調査データを用いて、自治体のエイズ関連施策の費用対効果を分析した。
(3)HIV流行の推計予測に関する研究
男性とセックスする男性(MSM)の推定人口、HIV感染率、エイズ発生動向データに基づいて、決定論的・確率論的数理モデルを構築し、MSMのHIV流行の推計・予測を行った。
結果と考察
①近隣国・地域での日本を上回るHIV流行の発生、②欧米でのHIV/STD流行の再燃、②日本のHIV流行の若者層への偏り、③性関連現象における複雑な変化の発生(性行動↓、細菌性STD↓、ウイルス性STD↑、妊娠中絶↓、コンドーム出荷量↓)、④無防備な日本の若者の性行動の実態、⑤エイズ関連新聞記事の質的量的低迷、⑥性産業や麻薬の蔓延、⑦出入国数の増大、⑧薬物使用者における注射使用・共用の減少傾向、⑨STD受診者におけるHIV感染率の上昇(約2%)、⑩エイズ関連施策の自治体間格差の存在と非効率な費用対効果、⑪MSMにおける推定HIV感染率(約7%)と今後の最大予測感染率(14%、1万人)を明らかにした。また、データブックとWebサイトを作成し、全国に配布・公開した。
結論
計画通り、HIV関連情報を集約して統合的に分析し、わが国のHIV流行と社会的脆弱性の現状、文脈、展望を明らかにし情報発信した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HIV流行に有効に対処していくためには、統合的解析(integrated analysis)、即ちHIV流行に影響を与える要因や現実の施策関連するあらゆる情報の持続的収集と分析、それに基づく、コンテクスチュアルで数量的な状況判断が不可欠である。本研究は、わが国における唯一の統合的解析の取り組みとして、情報データベースの構築、HIV流行の決定論的・確率論的数理モデルの開発、施策の費用対効果分析を初めて行うなど、わが国の統合的解析の情報的、方法論的基盤の確立に貢献した。
臨床的観点からの成果
臨床的研究ではないので該当しない。
ガイドライン等の開発
HIVに関連する啓発普及や施策形成に資するために、収集した情報を分かり易く解説し、スライドを収めたCD-ROMを添付したAIDS Data Book Japan 2007(エイズデータブック:日本におけるHIV流行の現状と文脈について)を1万部作成し(英文版500部も)、全都道府県、全国保健所等、教育関係者に配布するとともに、学会、講演会等で広く配布し、かつその内容を2008年度よりWebサイトで公開した。
その他行政的観点からの成果
本研究は、HIVに関連する啓発普及や施策形成に必要な情報基盤の整備や施策評価、薬物静注者と性感染症患者のセンチネルサーベイランスなど、行政的意義の高い研究を継続的に実施した。研究成果は、厚生労働省のエイズ施策評価検討会(平成19年9月12日)や重点都道府県等エイズ対策担当課長連絡協議会(平成20年4月22日)などで利用された。また、エイズデータブックが様々な啓発に利用され、かつ東京都エイズ専門家会議最終報告(平成21年1月19日公表)に重要資料として引用されるなど、行政的に広く活用された。
その他のインパクト
主任研究者は、日本テレビNEWS ZERO及び栃木放送(FM)から、エイズデータブックに基づく取材を受け出演した。また、研究成果は、主要な教科書(「性感染症」南山堂、放送大学教科書「感染症と生体制御」)を含め、3年間で、26編の和文総説論文の寄稿を依頼され、発表した。また、研究成果は、日本エイズ学会や世界基金支援委員会北京会議の国際シンポジウムや日本性感染症学会のシンポジウムで発表し、22回の招待講演などで広く社会に普及された。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
38件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
20件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
48件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takayuki Homma, Masako Ono-Kihara, Saman Zamani et al.
Demographic and behavioral characteristics of male sexually transmitted disease patients in Japan: a nationwide case-control study
Sexully Tramsmitted Diseases , 35 (12) , 990-996  (2008)
原著論文2
Yoji Inoue, Yoshihiko Yamazaki, Masahiro Kihara et al.
The intent and practice of condom use among HIV-positive men who have sex with men in Japan
AIDS PatientCare and STDs , 20 (11) , 792-802  (2006)
原著論文3
吉嶺敏子、木原雅子、市川誠一他
性行動に関する質問票の信頼性に関する研究
日本エイズ学会誌 , 8 (2) , 115-122  (2006)
原著論文4
Ono-Kihara M, Sato T, Kato H, Suguimoto-Watanabe SP et al.
Demographic and behavioral characteristics of non-sex worker females attending sexually transmitted disease clinics in Japan: a nationwide case-control study
BMC Public Health , 10 , 106-  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-