HIV感染予防における経粘膜ワクチンの開発

文献情報

文献番号
200830005A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防における経粘膜ワクチンの開発
課題番号
H18-エイズ・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
廣井 隆親((財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀実(日本医科大学 医学部)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、膣粘膜にHIV抗原の種類と粘膜免疫アジュバントであるIL-15を発現するベクターを導入したウイルスを用いて免疫誘導を試みる。使用するウイルスと抗原はModified Vaccinia Ankara(MVA)をベクターとして用い、HIV-1のGag,Env,Polをワクチン抗原とし、ヒトIL-15を共発現させるウイルスベースHIVワクチンを開発する。
研究方法
平成19年度に作製したMVASHIVIL-15をBALB/cマウスに107pfuを投与ならびに接種した。投与経路として皮下、経鼻、経膣、経肛門の4種類を検討した。一ヶ月後に同量のウイルスを各投与経路で再投与した。その後血清、糞便、膣洗浄液を回収してELISAによりHIV特異的抗体価ならびに中和能を測定した。
結果と考察
経肛門を除く、すべての投与法でIL-15による抗原特異的抗体産生量の増強が血清中に確認された。しかしながら、誘導された抗体にはHIV感染に対する中和活性は認められなかった。HIV感染阻止に有効であると考えられる中和抗体の誘導には、MVAによるenvの単純な発現システムでは構造を認識する抗体誘導が不可能であることが明らかとなった。
結論
経肛門を除く、すべての投与法でIL-15による抗原特異的抗体産生量の増強が血清中に確認された。が、誘導された抗体にはHIV感染に対する中和活性は認められなかった。中和抗体能を獲得するためには、env発現時におけるMVAの構造システムを改善する必要が認められた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200830005B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染予防における経粘膜ワクチンの開発
課題番号
H18-エイズ・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
廣井 隆親((財)東京都医学研究機構 東京都臨床医学総合研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 秀実(日本医科大学)
  • 横田 恭子(国立感染症研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、膣粘膜にHIV抗原の種類と粘膜免疫アジュバントであるIL-15を発現するベクターを導入したウイルスを用いて免疫誘導を試みる。使用するウイルスと抗原はModified Vaccinia Ankara(MVA)をベクターとして用い、HIV-1のGag,Env,Polをワクチン抗原とし、ヒトIL-15を共発現させるウイルスベースHIVワクチンを開発する。
研究方法
平成19年度に作製したHIVのenv遺伝子、SIVMAC239のgag遺伝子、pol遺伝子とヒトIL-15遺伝子を挿入したウイルスベクターMVASHIVIL-15をBALB/cマウスに107pfuを投与ならびに接種した。免疫したマウスから採取した末梢血単核球(PBMC)や腸管粘膜固有層リンパ球(LPL)をenvペプチドで刺激して、培養上清中のIFN-g産生量を測定した。さらに抗原特異的CD8T細胞中に含まれるmulti-functional CD8T細胞の出現頻度を計測することにより、IL-15のアジュバント機能によって誘導される免疫増強の効果を検討した。
結果と考察
MVASHIVと比較したMVASHIVIL-15のIFN-gの産生の上昇は、脾臓細胞では3倍と有意に確認されたが、小腸LPLでは10倍以上の顕著な増加を確認した。そこで、近年慢性的なウイルス感染症においてそのCTL活性の高さから注目を集めているmulti-functional CD8T細胞の頻度を皮下に免疫した実験群の脾臓細胞並びに小腸LPLを用いて検討した。その結果MVASHIVIL-15を免疫した群の脾臓では、コントロールと比較して、multi-functional CD8T細胞の頻度が上昇することが明らかになった。さらに、MVASHIVIL-15を免疫した群におけるマウスの脾臓ならびに小腸より分離したCD8T細胞は、IL-15が挿入されていなMVAを免疫したマウスより分離したCD8T細胞と比較検討した場合、envペプタイド特異的に優位に高いCTL活性を有していた。

結論
IL-15をアジュバントに使用することで皮下投与という全身性の免疫法で小腸粘膜固有層のCTLを誘導した。さらに世界中でmulti-functional CD8T細胞の増殖因子が検索されているが、IL-15によって同細胞群を増加させ、通常誘導されない腸管でmulti-functional CD8T細胞の誘導ができたという結果は世界に先駆ける発見である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
IL-15によって全身でこのmulti-functional CD8T細胞が増加することを確認した。さらに腸管では通常誘導されないmulti-functional CD8T細胞がMVASHIVIL-15で誘導されたことは、腸管免疫の誘導によってHIV感染を予防するという開発概念においては非常に将来性のある結果であると思われた。またmulti-functional CD8T細胞を増加させる因子の探索は世界中で行われているが、我々の研究結果は世界に先駆けるのものと考えられる。
臨床的観点からの成果
基礎的ならびに学術的結果により急性期の腸管におけるHIVの増殖が抑制される可能性が示唆されたことは臨床ならびに基礎研究において非常に意義の高いことである。今後の展望として、当該研究で我々はIL-15をアジュバントとして用いることで腸管粘膜を効率よく誘導できることを示した。今後はその誘導した免疫反応により実際にHIVを排除できることをヒト化マウスを用いた実験で検討する必要がある。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
平成20年9月8日に日本経済新聞にて「HIV感染における経粘膜ワクチンの開発」の記事が掲載

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成20年9月8日に日本経済新聞にて「HIV感染における経粘膜ワクチンの開発」の記事が掲載

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yokoyama, S., Watanabe, N., Sato, N. et al.
Antibody-mediated blockade of IL-15 signaling reverses autoimmune intestinal damage in transgenic mouse model of celiac disease.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-