周産期・小児・生殖医療におけるHIV感染対策に関する集学的研究

文献情報

文献番号
200830003A
報告書区分
総括
研究課題名
周産期・小児・生殖医療におけるHIV感染対策に関する集学的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
和田 裕一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 統括診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多 恒和(帝京大学医学部産婦人科)
  • 外川 正生(大阪市立総合医療センター小児救急科)
  • 塚原 優己(国立成育医療センター周産期診療部)
  • 名取 道也(国立成育医療センター研究所)
  • 大島 教子(獨協医科大学医学部産婦人科)
  • 田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系産婦人科)
  • 五味淵 秀人(国立国際医療センター産科)
  • 牛島 廣治(藍野大学医療保健学部)
  • 早川 智(日本大学医学部大学院病理病態学系微生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
46,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はHIV感染症について生殖から妊娠および出産、出生児に関して臨床的・疫学的および基礎的な問題について総合的に検討することを目的とした。
研究方法
1.周産期・小児医療 2.教育・啓発活動 3.生殖補助医療 4.社会医学に分かれて臨床・
疫学的研究を行った。また、胎内での母子感染のメカニズムに関する基礎研究を行った。
結果と考察
主な結果を示す。1.周産期・小児医療:平成20年度妊婦HIV検査率は98.3%であった。HIV感染妊婦数は累積で595例となった。エイズ拠点病院調査によれば拠点病院で周産期センターを有している施設は50%に満たず、早産例などに対する地域連携体制の整備の必要性が確認された。
HIV感染妊婦から出生した児の発達発育支援について就学前と就学後に分けて検討し支援体制の整備の基礎とした。
2.教育・啓発活動:今年度も国民向け研究成果発表会を全国3都市で「わが国におけるHIV感染症?対応策とその進歩」と題して研究成果を中心に発表した。女性感染者のトータルケア・マニュアルのひとつ「女性のためのQ&A-あなたと赤ちゃんのためにできること-」(感染女性を対象としたHIV/AIDS解説書)を改訂した。また、過去2年間のHIV感染予防に関する教育・啓発用刊行物をPDF化して全国関連施設に配布した。
3.生殖補助医療:本人あるいは夫がHIV感染症の場合の生殖補助医療の臨床例を蓄積した。また、基礎研究としてより効率的な精子収集法を確立した。
4.社会医学:母子感染を起さずに母乳を投与する方法(母乳加熱法、紫外線照射・特殊フィルター装着哺乳瓶法)の改良とフィールドワークを施行した。
5.基礎研究:絨毛細胞への感染は細胞の分化レベルにより決定される。さらにTLRからのシグナルにより調節を受ける。脱落膜リンパ球の主体をなすCD56陽性大顆粒リンパ球は、HIVのリザーバーとなっている可能性が示唆された。
結論
HIV母子感染予防の第一歩は妊娠初期に感染が明らかにされることであり、妊娠初期のHIV検査率が98.3%になったことは、啓発活動を続けてきた本研究班のひとつの成果と考えられる。今年度、臨床面においては感染妊婦や出生児のケアー、サポートの問題にも踏み込むことができた。また、データベースの更なる充実が図られた。一方、今回の研究では 感染の明らかな場合の生殖補助医療を取り扱ってきたが、エイズ治療の進歩に伴って今後そのニーズは益々高くなると予測される。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200830003B
報告書区分
総合
研究課題名
周産期・小児・生殖医療におけるHIV感染対策に関する集学的研究
課題番号
H18-エイズ・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
和田 裕一(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 統括診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜多 恒和(帝京大学医学部産婦人科)
  • 外川 正生(大阪市立総合医療センター小児救急科)
  • 塚原 優己(国立成育医療センター)
  • 名取 道也(国立成育医療センター)
  • 大島 教子(獨協医科大学医学部産婦人科)
  • 田中 憲一(新潟大学教育研究院医歯学系産婦人科)
  • 五味淵 秀人(国立国際医療センター産科)
  • 牛島 廣治(藍野大学医療保健学部)
  • 早川 智(日本大学医学部大学院病理病態学系微生物学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究班はHIV感染症について生殖から妊娠および出産、出生児に関して臨床的・疫学的および基礎的な問題について総合的に検討することを目的とした。
研究方法
1.周産期・小児医療 2.教育・啓発活動 3.生殖補助医療 4.社会医学に分かれて臨床・疫学的研究を行った。また、胎内での母子感染のメカニズムに関する基礎研究を行った。
結果と考察
妊婦HIV検査実施率は年々上昇し、H20年度は98.3%に達した。スクリーニング検査実施後の病診~病病連携についての調査で判定後の告知や妊婦紹介に関する問題点を整理すると共に医療者向け説明マニュアルを作成した。また、HIV感染妊婦の発生はH18年度57名、19年度32名、20年度27名で累積595名が捕捉された。母子感染例は46例で母子感染率は選択的帝王切開例で0.45%だった。感染妊婦の出生児に関して予後調査を行うと共にその発達・発育支援プログラムを就学前と就学後に分けて検討した。教育・啓発活動としてHIV母子感染予防対策マニュアル(第5版)、妊婦向けのHIV検査マニュアル、女性感染者のトータルケア・マニュアルなど解説書~小冊子を作成した。また、妊婦HIV検査率向上と感染妊娠の現状周知の目的で毎年3回全国各地で研究成果発表会を実施した。挙児を希望するHIV感染カップルに対する生殖補助医療として女性感染者の場合人工授精を、男性感染者の場合体外受精・胚移植を実施した。基礎的検討の上プロトコール、インフォームドコンセントを整備して臨床例を蓄積した。HIV感染妊婦の子宮頸管粘液中のHIV量を検討し、血中HIV量のみで経膣分娩の選択を判定することは危険であることを示唆した。母子感染を起こさずに母乳を投与する方法(母乳加熱法、紫外線照射・特殊フィルター装着哺乳瓶法)の改良とフィールドワークを施行した。胎内における母子感染のメカニズムは不明な点が多い。今回胎盤絨毛細胞における母子感染防御のメカニズムに関して絨毛細胞の分化とHIV感受性の変化と局所免疫機序につて検討、解明した。
結論
HIV母子感染予防の第一歩は妊娠初期に感染が明らかにされることであり、妊娠初期のHIV検査率が98.3%になったことは、啓発活動を続けてきた本研究班のひとつの成果と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200830003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
当研究班の妊婦HIV検査率および感染妊婦・感染妊婦から生まれた児の統計と詳細なデータは妊婦HIV感染症に関するわが国で唯一のまとまった疫学調査成績であり、貴重な資料として蓄積されてきている。貴重な疫学的調査成績は産科・小児科統合ファイルとしてデータベース化されており、広報や啓発の目的で全国各地で研究成果発表会として広く国民に情報提供を行っている。また、エイズ学会を始めとする各種学会・研究会において発表し、医療関係者にも広く認識してもらうように努めている。
臨床的観点からの成果
HIV感染妊婦の病診連携体制に関する研究は 産科・小児科医の減少を背景に、エイズ拠点病院が現状で周産期医療の拠点としての役割を果たしているかどうかを検討したもので、否定的な結果からむしろ地域における病病連携の必要性が勘案された。また、母子感染予防対策マニュアルは時代に即した改訂(第5版:平成19年度改訂)を重ねて関連施設に配布したがさらに要望に応じて追加配布しており臨床の場で幅広く活用されている。
ガイドライン等の開発
1.「HIV母子感染予防対策マニュアル」の作成
2.妊婦HIVスクリーニング検査に関する一般妊婦向け啓発刊行:「あなた自身の健康と赤ちゃんの健やかな誕生のために―妊娠初期検査の一環としてHIV検査をお受けになることをお勧めします」および「妊婦HIVスクリーニング検査(一次検査)で結果が陽性だった方へ」
3.感染女性を対象としたHIV/AIDS解説書刊行:「女性のためのQ&A-あなたと赤ちゃんのためにできること-」
その他行政的観点からの成果
「妊婦に対するHIV検査について(通知・健疾発第0629001)」HIV検査における妊婦へのカウンセリングを十分に行うようにという通知をうけ、妊婦HIVスクリーニング実施手順マニュアルを作成し、スクリーニングで陽性・偽陽性判定となった妊婦やその家族が不適切な告知で混乱することを回避できるよう産科医療者向けに作成した。産婦人科診療所?病院産婦人科、拠点病院、保健所等広く配布し、また、その有用性をアンケート調査で確認した。
その他のインパクト
平成13年度-平成20年度国民向けに「研究成果発表会」を全国24箇所にて開催し開催地域のマスコミに取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
7件
その他論文(和文)
27件
その他論文(英文等)
16件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
24件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
吉野直人
HIV/AIDSワクチン開発の基礎的研究および日本における母子感染の臨床的・疫学的研究
日本エイズ学会 The Journal of AIDS Reserch , 9 , 209-216  (2007)
原著論文2
塚原優己、喜多恒和、外川正生、稲葉憲之 他
感染女性の妊娠・出産・育児支援
日本エイズ学会 The Journal of AIDS Reserch , 9 , 116-119  (2007)
原著論文3
塚原優己、喜多恒和、和田裕一 他
HIV Prevention of mother to child transmission of hiv
日本性感染症学会誌 , 19 (1) , 170-174  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-