COPD等における難治性感染症の病態把握等に関する研究

文献情報

文献番号
200829041A
報告書区分
総括
研究課題名
COPD等における難治性感染症の病態把握等に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-012
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
宮﨑 義継(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
  • 山越 智(国立感染症研究所 生物活性物質部 )
  • 泉川 公一(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 亀井 克彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 渡邊 浩(久留米大学 医学部)
  • 二木 芳人(昭和大学 医学部)
  • 小川 賢二(国立病院機構東名古屋病院 臨床研究部)
  • 安藤 常浩(日本赤十字社医療センター 呼吸器内科)
  • 河野 茂(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療が必要と考えられている慢性肺アスペルギルス症の診断基準を策定し適切な疾患名を提案することにより,慢性糸状菌感染症の的確な診断法と有効性の高い治療法の開発が促進され,当該疾患の患者予後や生活の質の改善,ならびに当該疾患における医療の効率化等に貢献することを目的とする。
研究方法
臨床小班は、疾患概念、患者背景、有効な検査法、画像診断、自覚症状に関して検討を行った。基礎小班は、病理組織、新規の抗原検索、難治化因子に関する研究を行った。
結果と考察
 わが国の慢性壊死性肺アスペルギルス症は、男女比2:1、好発年齢60歳代後半、低体重患者が多く、ほぼ全症例が基礎疾患を有し、喀血と血痰が特徴的な症状であり、欧米の慢性空洞性肺アスペルギルス症を包括する概念であることが明らかになった。病理組織学的に菌球を有する空洞や、器質化、線維性肥厚、器質化肺炎像が観察され、組織内への侵襲像は認めず、空洞から離れた病変部位ではアスペルギルス菌糸は認められなかった。
 診断に関する基礎研究では、糸状菌由来蛋白質のシグナルペプチドによりマウス細胞表面に移送されることが明らかにし、臨床検体を用いた解析からアスペルギルス由来のユビキチン様タンパクが重症患者の血清中に出現することを明らかにした。病態に関しては、生体側難治化因子としてfetuinを同定し、菌側難治化因子としてバイオフィルム産生増加を示した。
結論
慢性壊死性肺アスペルギルス症の診断に必須と考えられる項目として下記4項目を提案した。ただし、慢性壊死性肺アスペルギルス症の中には、症状を有するアスペルギローマも含まれてよい。1)アスペルギルス症に起因すると考えられる血痰、喀血、咳嗽、呼吸困難などの呼吸器症状、あるいは、発熱や倦怠感などの全身症状を有する。2)数ヶ月以内に肺の新たな陰影の出現や、既存のアスペルギローマ等の陰影の増悪を認める。アスペルギローマが合併する場合は、空洞壁の肥厚や周囲への進展も増悪と捉える。3)アスペルギルス属を気道由来検体あるいは無菌的な検体から分離する。あるいは、ガラクトマンナン抗原陽性、または、オクタロニー法による沈降抗体陽性が陽性である。4)3日以上の注射用抗菌薬の投与により十分な効果がえらず、真菌感染症と判断される。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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