我が国における日本脳炎の現状と今後の予防戦略に関する研究

文献情報

文献番号
200829032A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における日本脳炎の現状と今後の予防戦略に関する研究
課題番号
H20-新興・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高崎 智彦(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 多屋馨子(国立感染症研究所 情報センター)
  • 倉根一郎(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
  • 寺田喜平(川崎医科大学 小児科学講座)
  • 脇口 宏(高知大学医学部 小児思春期学講座)
  • 森田公一(長崎大学熱帯医学研究所)
  • 竹上 勉(金沢医科大学・総合医学研究所)
  • 玉那覇康二(沖縄県衛生環境研究所)
  • 前田 健(山口大学農学部)
  • 原田誠也(熊本県保健環境研究所 微生物科学部)
  • 田部井由紀子(東京都健康安全研究センター)
  • 小西英二(神戸大学 医学部基礎医療学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本脳炎(日脳)は、防接種の積極的勧奨中止後、小児の予防接種率は極端に低下している。この状況下で日脳の現状を解明し、その予防策を構築する。
研究方法
自然感染率:日脳ウイルス(JEV)NS1抗体は、不活化ワクチンでは誘導されない。NS1抗体測定ELISA法を確立し、熊本・東京における健常人のNS1抗体の保有状況を検査した。岡山の農村部と都市部の小児に関して日脳抗体を測定した。
ウイルスの活動:石川、長崎、京都のコガタアカイエカから日脳ウイルス遺伝子検出・分離を行ない、関東以西の都県にて夏季のブタ血清からウイルスを分離し、3’NCR とE領域の塩基配列を決定し系統樹解析した。オトリ豚4頭を9月に設置し日脳抗体検査を実施した。ブタ以外の動物ではアライグマ、イノシシ、タヌキ、イヌにおける中和抗体保有を測定した。また、兵庫県西宮市周辺で捕獲されたイノシシの血液からウイルス分離を試みた。
病原性:ブタ用生ワクチン株、最近の分離株の塩基配列を決定し、JEVの弱毒化責任部位を検索した。また、DNAマイクロアレイシステムを用いてJEV感染細胞遺伝子の発現量を調べ、JEVの宿主細胞に及ぼす病原性を検討した。
結果と考察
熊本、東京のNS1抗体保有状況から、年間自然感染率は約3%であった。岡山の小児の日脳抗体保有率は都市部より農村部で高かった。分子疫学解析からJEVは東南アジアから東に移動し、日本に飛来する可能性が示唆された。長崎のオトリ豚日脳検査結果から、9月のJEVの活動が活発であることが確認された。
沖縄県の本島以外の島のJEV活動は低かったが、石垣島のブタからJEV遺伝子3型が検出され、西表島のイノシシの日脳抗体保有率が上昇していることが確認された。2008年12月に、西宮市で捕獲されたイノシシからJEV(1型)が分離された。イノシシのJEV中和抗体保有率は83.3%、タヌキでは63.2%、アライグマでは59.2%であった。また、飼育犬では25.2%であった。
 JEVの病原性しては、最近の分離ウイルス、弱毒生ワクチン株に関して分子生物学的に解析し、3’NTR領域の遺伝子欠損が遺伝子型に関わらず存在した。また、石川県の2005年分離のJEV1型株のマウスへの病原性は低くなく、DNAマイクロアレイによる解析で、JEV増殖にIFN経路遺伝子発現量の差異が影響することが確認された。
結論
日脳ウイルスはブタ以外を増幅動物として利用しつつある可能性があり、東南アジアや中国から飛来する可能性も高い。また、熊本県のような日本脳炎ウイルスの活動が活発な地域では年間約3%の自然感染が発生している。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
-