我が国における動物由来感染症の感染実態把握に資する研究

文献情報

文献番号
200829025A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国における動物由来感染症の感染実態把握に資する研究
課題番号
H19-新興・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
多田 有希(国立感染症研究所 感染症情報センター)
研究分担者(所属機関)
  • 高山 直秀(東京都立駒込病院 小児科)
  • 道永 麻里(東京都医師会)
  • 川島 龍一(神戸市医師会)
  • 菅沼 明彦(東京都立駒込病院 感染症科)
  • 佐藤 克(佐藤獣医科)
  • 赤尾 信明(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 福士 秀人(岐阜大学応用生物科学部獣医微生物学)
  • 丸山 総一(日本大学生物資源科学部獣医公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
13,440,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関連学会誌での発表及び感染症法に基づく届出による人の動物由来感染症症例を収集し、その発生地、感染経路、主訴、症状、治療、予後などを検討して、我が国における動物由来感染症発生の実態を把握することを主な目的とする。また、狂犬病に関して国の内外を問わずに症例を収集し、診断法、治療法を検討して今後の対策に資するとともに、狂犬病ワクチンの接種量を減量しても効果的なワクチン接種法の検討を行う。さらに、濾紙採血検体による動物由来感染症関連の抗体検査を行い第一線医療機関における動物由来感染症診断の一助とする。
研究方法
学会誌などで発表された動物由来感染症関連の症例報告を文献データベースをもとに収集し、集計・分析した。また感染症法により届け出られた動物由来感染症のうち5疾患について、届出内容を集計・解析した。狂犬病に関しては、諸外国におけるヒト狂犬病症例をインターネット等を利用して収集した。治療については関連文献を収集し分析した。狂犬病ワクチンの新たな接種法としての皮内接種法については、当該接種法による接種を承諾した健康成人を対象に接種後の抗体検査及び副反応を調査してその有効性と安全性を検討した。濾紙採血検体検査の有用性に関する調査には、東京都医師会及び神戸市医師会会員の一部有志の方々に、動物由来感染症の6疾患につき該当する症例の検体採取を依頼し、抗体検査を研究分担者により実施した。
結果と考察
感染症法に基づく届出症例の集計・分析は、我が国における動物由来感染症の実態把握に有用な手段となることが分かった。この結果を第一線の医療関係者に動物由来感染症診断に役立津物と考えられるので、今後その公開を検討する予定である。狂犬病に関しては、今年度は海外でのヒト狂犬病症例報告を収集し主な文献を翻訳したので、来年度に症例集を作成して関係部署に配布する予定である。またヒト狂犬病の治療に関する海外での知見の収集を継続し治療指針を作成することを計画している。狂犬病ワクチンの接種法については、皮内接種法による曝露前免疫の導入は有用な対策となることが判明したので、さらに例数を増やして検討を重ね皮内接種法の普及を図る。濾紙採血検体による抗体検査に関しては、検査法の改善も進めており、今後もさらに臨床現場の協力を得て、有用性の調査を継続する必要がある。
結論
感染症法に基づく届出症例の集計・分析は、我が国における動物由来感染症の実態把握に有用な手段となることが分かった。狂犬病ワクチンの接種法について、ワクチンが不足する事態が生じた場合などには、皮内接種法による曝露前免疫の導入は有用な対策となることが判明した。

公開日・更新日

公開日
2010-01-12
更新日
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