加齢性難聴に対する地域介入プログラムの有効性評価

文献情報

文献番号
200828012A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢性難聴に対する地域介入プログラムの有効性評価
課題番号
H19-感覚器・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西脇 祐司(慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部)
  • 朝倉 敬子(慶應義塾大学 医学部)
  • 齊藤秀行(慶應義塾大学 医学部)
  • 水足邦雄(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢性難聴は、高齢者のQOL維持に重要な因子である。その対策は補聴器使用を含むリハビリテーションとされ、個人レベルを対象としたクリニカルベースでの有効性検証の報告はあるものの、communityを対象とした介入計画の有効性に関してのエビデンスは全く不足している。そこで本研究では、加齢性難聴に対する地域介入プログラムの有効性を検証することを目的とした。
研究方法
対象地域(65歳以上人口約1400名)を前期介入地区と後期介入地域に二分する。介入は、1.ベースライン評価、2.地域在住高齢者を対象とした加齢性難聴の1次スクリーニング、3.提供プログラム決定のための詳細評価、4.補聴器フィッティング、本人・家族への教育を含むプログラムの提供、5.アウトカム評価から構成される。評価項目としては、記述疫学的アウトカム指標ときこえのQOL関連指標(きこえのQOL、ADL、抑うつ度)から成る。家族から見た聞こえの環境についても調査した。
結果と考察
平成20年度は、後期介入地区への介入および介入プログラムの有効性を検証した。後期介入地区では、107名が詳細評価に参加し、補聴器必要と判定された者53名、このうち試用に至ったのは32名であった。介入プログラムの有効性評価としては、まず1次評価ポイントとして、75歳以上の11%に補聴器の潜在必要者がいること、プログラムにより75歳以上の7%に補聴器を試用させることができた。プログラムの地域全体への効果として、きこえのQOLスコア、ADLスコアの1年間の変化は、対照群に比べて介入群で他要因を調整しても統計学的に有意に良かった。一方、抑うつのスコアについては両群で差がなかった。補聴器試用者の8割が補聴器により生活が快適になっており、満足度の中央値は10点満点の8点であった。家族から見た聞こえの環境についても、良い方向に変化していた。
結論
・本介入プログラムにより、補聴器の潜在必要者を発掘し補聴器へと誘導することにより、Efficacy(理想的環境下での有効性)が確認できた。とくに75歳以上で有効であることが示唆された。
・本介入プログラムにより、地域全体の聞こえのQOL、ADLが改善する可能性がある。
・今後、Effectiveness(現実的環境下で有効性)や費用対効果の検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200828012B
報告書区分
総合
研究課題名
加齢性難聴に対する地域介入プログラムの有効性評価
課題番号
H19-感覚器・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
西脇 祐司(慶應義塾大学医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部)
  • 朝倉 敬子(慶應義塾大学 医学部)
  • 齊藤 秀行(慶應義塾大学 医学部)
  • 水足 邦雄(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 感覚器障害研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢性難聴は60歳以上のdisabilityの原因としてもっとも有病率が高く、高齢者のQOL維持に重要である。その対策は補聴器使用を含むリハビリテーションとされ、個人レベルを対象とした臨床研究は散見されるもののcommunityを対象とした介入研究は全く不足している。本研究では、加齢性難聴に対する地域介入プログラムの有効性を検証することを目的とした。
研究方法
対象地域(65歳以上人口約1400名)を前期および後期介入地域に二分した。介入は、1.ベースライン評価、2.地域在住高齢者を対象とした加齢性難聴の1次スクリーニング、3.提供プログラム決定のための詳細評価、4.補聴器フィッティング、本人・家族への教育を含むプログラムの提供、5.アウトカム評価から構成される。評価項目としては、記述疫学的アウトカム指標ときこえのQOL関連指標(きこえのQOL、ADL、抑うつ度)から成る。家族から見た聞こえの環境についても調査した。
結果と考察
介入プログラムにより、補聴器が必要なのにしていない潜在必要者が75歳以上人口の11%いることが判明した。また介入により、75歳以上人口の7.1%に試用させることができた。地域全体への効果として、きこえのQOL、ADLの1年間の変化は、対照群に比べて介入群で他要因を調整しても統計学的に有意に良かった。一方、抑うつについては両群で差がなかった。補聴器試用者の8割が補聴器により生活が快適になっており、満足度の中央値は10点満点の8点であった。家族から見た聞こえの環境についても、TVのボリュームが小さくなったり、会話がスムーズに行くようになったりと、良い方向に変化していた。その他、補聴器の保有率が低い、あるいは持っていても使用しない原因の分析などから、補聴器に対する正しい理解の欠如や、本人の耳に合わせた補聴器の装用がなされていない現状など補聴器の社会的応用における問題点も浮き彫りになった。
結論
・本介入プログラムにより、補聴器の潜在必要者を発掘し補聴器へと誘導することにより、Efficacy(理想的環境下での有効性)が確認できた。とくに75歳以上で有効であることが示唆された。
・本介入プログラムにより、地域全体の聞こえのQOL、ADLが改善する可能性がある。
・今後、Effectiveness(現実的環境下で有効性)や費用対効果の検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2009-04-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200828012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
加齢性難聴は60歳以上のdisabilityの原因としてもっとも有病率が高く、その対策は補聴器使用を含むリハビリテーションとされる。その有効性について個人ベースの臨床研究は散見されるものの、地域施策としての有効性についての検討は皆無であった。本地域介入研究により、補聴器の潜在必要者を発掘し補聴器へと誘導することにより、Efficacy(理想的環境下での有効性)が確認できた。とくに75歳以上で有効であることが示唆された。また、地域全体の聞こえのQOL、ADLが改善する可能性がある。
臨床的観点からの成果
地域全体への効果として、きこえのQOL、ADLの1年間の変化は、対照群に比べて介入群で他要因を調整しても統計学的に有意に良かった。一方、抑うつについては両群で差がなかった。補聴器試用者の8割が補聴器により生活が快適になっており、満足度の中央値は10点満点の8点であった。家族から見た聞こえの環境についても、TVのボリュームが小さくなったり、会話がスムーズに行くようになったりと、良い方向に変化していた。
ガイドライン等の開発
いわゆる診療ガイドラインに相当する成果物は地域保健をフィールドとする本研究では該当しない。しかし、本介入プログラム自体が今後の政策立案に向けた基礎的資料となりうる。プログラムは以下の5つから構成される。1.ベースライン評価、2.地域在住高齢者を対象とした加齢性難聴の1次スクリーニング、3.提供プログラム決定のための詳細評価、4.補聴器フィッティング、本人・家族への教育を含むプログラムの提供、5.アウトカム評価。
その他行政的観点からの成果
補聴器の保有率が低い、あるいは持っていても使用しない原因の分析などから、補聴器に対する正しい理解の欠如や、本人の耳に合わせた補聴器の装用がなされていない現状など補聴器の社会的応用における問題点も浮き彫りになった。活力ある高齢社会の維持には、加齢による難聴対策は不可欠である。今後、加齢性難聴対策を公衆衛生学的視点から考慮する場合の重要な基礎的データを提供し得たと考えている。
その他のインパクト
本取組みは、上毛新聞3月15日(日曜)に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-