障害者の自律移動支援における情報技術利用方法に関する調査研究

文献情報

文献番号
200827005A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の自律移動支援における情報技術利用方法に関する調査研究
課題番号
H18-障害・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中山 剛(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害工学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者の移動を支援するプロジェクトが各機関にて実施され、インフラ整備が行われつつある。本研究ではこれまで支援対象者にはあまり含まれていなかった高次脳機能障害者等を対象とした調査を行い、情報技術や社会情報インフラの有効な利用方法について明らかにすることを目的とする。歩行訓練の専門家の観点から情報技術や社会情報インフラの有効な利用方法の検討も併せて行う。
研究方法
平成20年度では障害者を支援する専門職による実地調査、障害者を支援する専門職に対するアンケート調査、高次脳機能障害のある当事者やご家族に対するアンケート調査、高次脳機能障害者への移動支援(ケーススタディ)、移動時に利用できるランドマークのタグ位置の基礎調査の5点を行った。
結果と考察
その結果、下記の点が明らかとなった。
・歩行訓練の際にはあまり情報機器が利用されていない
・情報技術を活用した歩行訓練を肯定的に捉えている歩行訓練の専門家も多い
・約7割の高次脳機能障害者が携帯電話を利用している
・6割弱くらいの高次脳機能障害者が道に迷いやすい
・多くの高次脳機能障害者にとって現状の携帯電話は多機能すぎて操作が難しい
・操作を簡単にし、画面デザイン、注意の喚起方法や情報の提示方法をうまく工夫し情報技術を活用すれば重度の認知障害により移動に困難のある場合でも独力での移動が可能となるケースがある
・左側半側空間無視をシミュレートした状態ではT字路を曲がる際に正面から右方に60cmから90cmのところに設置したランドマークとなるタグを注視する
・幅2mの廊下を直進する場合、タグを4m間隔で左右交互に配置するのが良い
結論
高次脳機能障害などの認知障害のある障害者も外出や移動に困難を抱える方が多いことが明らかとなった。その一方で携帯電話の所持率も約7割と高いことも明らかとなった。機器の操作を簡単にし、画面デザイン、注意の喚起方法や情報の提示方法をうまく工夫すれば重度の高次脳機能障害により移動に困難のある場合でも独力での移動が可能となるケースもあることが実証された。障害者の移動を支援するプロジェクトを計画実施する際には、認知障害、知的障害、精神障害、発達障害などに起因して移動や外出に困難を抱える方にも考慮して実施することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200827005B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の自律移動支援における情報技術利用方法に関する調査研究
課題番号
H18-障害・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中山 剛(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所障害工学研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者の移動を支援するプロジェクトが各機関にて実施され、インフラ整備が行われつつある。本研究ではこれまで支援対象者にはあまり含まれていなかった高次脳機能障害者等を対象とした調査を行い、情報技術や社会情報インフラの有効な利用方法について明らかにすることを目的とする。歩行訓練の専門家の観点から情報技術や社会情報インフラの有効な利用方法の検討も併せて行う。
研究方法
高次脳機能障害、知的障害、発達障害等の当事者やご家族、支援専門職への実態調査と高次脳機能障害者への移動支援を実施した。また歩行訓練の専門家による各プロジェクトへ実地調査も行った。屋内移動時にランドマークとして利用できるタグの位置等に関して視線計測装置を用いた基礎実験も行った。
結果と考察
その結果、下記の点が明らかとなった。
・高次脳機能障害者や知的障害者や発達障害者には移動時に様々な困難を抱えている方も多い
・約7割の高次脳機能障害者が携帯電話を利用している
・6割弱くらいの高次脳機能障害者が道に迷いやすい
・多くの高次脳機能障害者にとって現状の携帯電話は多機能すぎて操作が難しい
・機器の操作を簡単にし、情報の提示方法を工夫すれば、重度の高次脳機能障害者でも独力での移動が可能な方がいる
・歩行訓練の際にはあまり情報機器が利用されていない
・情報技術を活用した歩行訓練を肯定的に捉えている歩行訓練の専門家も多い
・各機関で実施されている各プロジェクトの認知度は低い
・歩行訓練の専門家によるプロジェクトの実態調査の結果「誘導音による誘導法に安心感が得られた」など肯定的な意見が得られた
・その一方、コミュニケータが提供する以外の情報に意識が行かなくなるなど、幾つか危険性の指摘もあった
・白色背景の壁には黄色のタグより青色や赤色の方が見やすい
・階段のタグは照度が高いところに床面から120cmくらいの高さに貼るのが良い
・幅2mの廊下を直進する場合、タグを4m間隔で左右交互に配置するのが良い
結論
高次脳機能障害などの認知障害のある障害者も外出や移動に困難を抱える方が多いことが明らかとなった。障害者の移動を支援するプロジェクトを計画実施する際には、認知障害、知的障害、発達障害などに起因して移動や外出に困難を抱える方にも考慮して実施することが望まれる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200827005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高次脳機能障害などの認知障害、知的障害、発達障害など障害当事者やご家族に対する調査と医師、療法士、歩行訓練の専門家など支援専門職に対する調査の両方を情報技術の観点から実施した点は意義深い。高次脳機能障害者のうち7割くらいが携帯電話を利用しており、6割弱くらいが道に迷うなど外出や移動に困難を抱える方も多いこと等、具体的な割合として明らかにした意義は大きい。加えて、重度の高次脳機能障害により移動に困難のある場合でも情報技術を活用すれば独力での移動ができる可能性を示唆した点も成果の一つといえる。
臨床的観点からの成果
高次脳機能障害などの認知障害者、知的障害者、発達障害者などの移動や外出における困難さを明らかにしたことで、本調査研究で得られた成果は生活訓練や職業訓練などのリハビリテーションの現場で活用できる基礎資料の一つとなる。また、重度の高次脳機能障害により移動に困難のある場合でも情報技術を活用すれば独力での移動ができる可能性を示唆したことにより、今後のリハビリテーションの現場で情報技術活用が広がることを期待したい。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
下記の勉強会や委員会で議論され資料として掲載されている。
・厚生労働省 社会・援護局、生活支援技術改革ビジョン勉強会「支援機器が拓く新たな可能性」、第3回認知障害者等の情報支援技術について、高次脳機能障害者への対応状況と今後のビジョン、2007年10月31日
・国土交通省、第6回自律移動支援プロジェクト推進委員会、関係省庁の取り組み(参考資料)、厚生労働省関係資料、2007年3月30日
その他のインパクト
2011年3月末までに障害当事者・家族の会や支援施設職員などに対して情報提供を目的とした講演会や説明会を計35回実施している(障害当事者・家族(8団体11回)病院(2)総合リハセンター(3)職業リハセンター(2)更生相談所(1)指定障害者支援施設(3)デイサービスセンター(1)特別支援学校(1)作業所(2)鉄道事業者(3)携帯電話移動通信事業者(3)その他(3))。また、当事者団体の編纂した書籍にも掲載された。今後も広く情報提供を予定。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
総合リハビリテーション
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
電子情報通信学会福祉情報工学研究会、リハ工学カンファレンス、生活支援工学系学会連合大会、日本高次脳機能障害学会学術総会、セミナー:認知症と記憶障害の方への工学的支援、など
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/yogu/index.html www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/jiritsu/index.html
その他成果(普及・啓発活動)
35件
障害当事者・家族の会、関連する援護施設、関連企業などを対象

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
中山剛、外山滋、加藤誠志、他
地誌的障害のある認知障害者の屋内移動支援に関する研究-第2報-
電子情報通信学会 技術報告(福祉情報工学) , 106 (612) , 149-153  (2007)
原著論文2
中山剛
認知障害者の自律移動支援における情報技術利用に関する調査研究
電子情報通信学会 技術報告(福祉情報工学) , 107 (436) , 61-66  (2008)
原著論文3
中山剛、加藤誠志、上田典之、他
認知障害者の日常生活・就労支援を目的とした情報技術活用に関する研究
電子情報通信学会 技術報告(福祉情報工学) , 108 (170) , 13-18  (2008)
原著論文4
中山剛
高次脳機能障害者の情報技術利用に関する実態調査
電子情報通信学会 技術報告(福祉情報工学) , 109 (152) , 5-10  (2009)
原著論文5
中山剛
リハビリテーション工学とIT
医学書院、総合リハビリテーション , 38 (1) , 33-38  (2010)
原著論文6
中山剛
高次脳機能障害者の情報技術利用と外出時の困難さに関する実態調査
ヒューマンインタフェース学会 研究報告書 , 13 (2) , 23-28  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-