障害者自立支援法下での重症心身障害児等に対する施設サービスの効果的な在り方に関する研究

文献情報

文献番号
200827003A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者自立支援法下での重症心身障害児等に対する施設サービスの効果的な在り方に関する研究
課題番号
H18-障害・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
澤野 邦彦(社団法人 日本重症児福祉協会 事務局)
研究分担者(所属機関)
  • 木実谷 哲史(社会福祉法人 日本心身障害児協会 島田療育センター)
  • 宮野前 健(独立行政法人 国立病院機構 南京都病院)
  • 小田 浤(社会福祉法人 旭川荘)
  • 前田 知己(大分大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
5,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 障害児・者の療育や支援において極めて大きな役割を果たしてきた、貴重な社会資源である重症心身障害児(以下、重症児)施設や肢体不自由児施設を、障害者自立支援法(以下、支援法)の下でも有効活用し、効率的な運用を図っていくための方策立案に利用しうる客観的な資料を得ること。
研究方法
 (1)重症児施設の障害児支援の考え方、待機状況、入所経路の推移、新体系移行施設における移行後経過総括、職員の意識変化、(2)肢体不自由児施設の母子療育、入所児の生活実態、評価のあり方、(3)新生児集中治療室(NICU)長期入院児と重症児施設入所児のQOLの比較、等をアンケートまた実地調査ならびに検討、(4)情報通信技術(ICT)を活用した重症児・者在宅支援システムの実証運用、(5)オランダと日本の自立支援施策を文献ならびに実地調査により比較検討。
結果と考察
 (1)障害児支援の根拠を「児童福祉法に位置づける方がよい」とする施設が75%、「児者一貫の支援が必要」が90%で、「児施設」と「者施設」に分け併設することには53%の施設が反対であった。新体系への移行を全く考えていない施設が半数以上を占め、多くの不安要因が払拭されなければ、新体系への転換は極めて難しいことが窺えた。移行施設では介護の人件費増が問題であり、職員による支援法の主旨の理解は不十分であった。(2)肢体不自由児施設では、自立度・介助度ともさまざまなニーズへ対応していた。評価のあり方も検討し評価案を示した。(3)NICU長期入院児と重症児施設入所中の児では、後者の児のQOLの方が評価の全領域で高かった。重症児施設は医療とQOLの両立に適しており、その役割を十分に担えるような整備と支援が必要である。(4)ICTによる在宅ケア支援システムは、3種の情報社会モデルの実証運用を行った。(5)オランダと日本の知的障害者の自立支援策の比較を行った。
結論
 重症児施設の新体系への移行は、この3年間で進んでいなかった。障害児支援における児者一貫を重視する施設が多く、児・者で制度が分かれることで、それが妨げられることを危惧する考えが目立った。移行施設では、財政面、職員の意識改革に課題があった。肢体不自由児施設では、幅広いニーズに対応していた。NICU長期入院児のQOLは重症児施設と比較して不十分であった。

公開日・更新日

公開日
2009-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200827003B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者自立支援法下での重症心身障害児等に対する施設サービスの効果的な在り方に関する研究
課題番号
H18-障害・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
澤野 邦彦(社団法人 日本重症児福祉協会 事務局)
研究分担者(所属機関)
-
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

行政効果報告

文献番号
200827003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
社会医学ないし重症心身障害学的観点からは、従来の「児童福祉法」下から、同法と「障害者自立支援法(以下、支援法)」の並立体制下に移行する時期における施設運営上の問題点を、初めて全国的規模において調査し明らかにした。新生児学においては、治療体系、病因、予後の領域の社会医学的問題点(新生児治療施設(以下、NICU)における長期滞留の問題)を分析した。遠隔医療学では、重症心身障害児(以下、重症児)に対する新たな遠隔医療の可能性を検証した。
臨床的観点からの成果
全国の重症児施設における、支援法に基づく新体系への移行状況と障害児支援のあり方に関する考え方、移行施設の状況等を調査し、移行は平成18年度からの3年間で進んでおらず、障害児支援においては児者一貫を重視する施設が多く、児者で制度が分かれることで、それが妨げられることを危惧する考えが目立った。またNICU長期入院児は病床数の5%を占め、70%の施設で新規入院の妨げとなっており、重症児施設等、地域の療育センターへの受け入れが望まれていることを明らかにした。
ガイドライン等の開発
支援法下における重症児支援のあり方に関するいくつかの提言を行った。
肢体不自由児・者、重症児・者の障害評価案を示した。
その他行政的観点からの成果
支援法の問題点の一部を明らかにした。重症児施設や肢体不自由児施設の果たしてきた役割の一端を示した。在宅支援における重症児施設の新たな役割(遠隔医療)の可能性を検証した。NICUの長期入院の実態を明らかにし、周産期医療体制における課題を指摘した。オランダの最重度知的障害者の支援施策の問題点を述べた。以上はいずれも、行政施策への貢献が期待され、一部はすでに支援法や児童福祉法改正、また関連施策立案、予算編成等に影響を与えたものと考えられる。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
4件
1)情報通信技術を活用した重症心身障害児の在宅ケア 2)情報技術を活用した重症心身障害児(者)の在宅支援 3) 障害者自立支援法と重症心身障害施設 4)新生児病床長期入院児の全国実態調査
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
1)障害者自立支援法下での重症心身障害児等に対する施設サービスの効果的な在り方に関する研究(2007) 2)(同)(2008) 3)(同)(2009) 4)スタートした障害者自立支援法
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
1)NICU長期入院児受け入れ問題:2件 2)遠隔医療による在宅ケア:2件 3)療養介護事業への移行:2件 4)重症児施設のあり方:2件 5)重度重複障害の海外の動向:1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
1)支援法・児童福祉法改正への反映(?) 2)関連施策(周産期・重症児医療関連)立案への反映(?) 3)予算編成(周産期・重症児医療関連)への反映(?)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
前田知己、飯田浩一、隅 明美、他
新生児病床長期入院児の全国実態調査
周産期新生児誌 , 44 (4) , 1152-1157  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-