2型糖尿病患者のQOL、血管合併症及び長期予後改善のための前向き研究

文献情報

文献番号
200825039A
報告書区分
総括
研究課題名
2型糖尿病患者のQOL、血管合併症及び長期予後改善のための前向き研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-022
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
山田 信博(筑波大学 大学院人間総合科学研究科 内分泌代謝・糖尿病内科)
研究分担者(所属機関)
  • 森 保道(虎の門病院 内分泌代謝内科)
  • 松久 宗英(大阪大学大学院医学研究科)
  • 沖田 考平(大阪大学大学院医学研究科)
  • 鈴木 進(太田西ノ内病院 糖尿病センター)
  • 横手 幸太郎(千葉大学大学院医学研究院)
  • 佐藤 麻子(東京女子医科大学 糖尿病センター)
  • 曽根 博仁(お茶の水女子大学人間文化創成科学研究院)
  • 渥美 義仁(東京都済生会中央病院)
  • 井藤 英喜(東京都老人医療センター)
  • 水流添 覚(熊本大学大学院医学薬学研究部)
  • 大橋 靖雄(東京大学大学院医学系研究科)
  • 山下 英俊(山形大学医学部)
  • 石橋 俊(自治医科大学医学部)
  • 及川 眞一(日本医科大学)
  • 片山 茂裕(埼玉医科大学)
  • 林 登志雄(名古屋大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2型糖尿病は世界的に急増しているが、病態や合併症には人種差・民族差がある。現代の糖尿病診療ガイドラインは主に欧米人患者のエビデンスに基づいているが、日本人を含むアジア人患者の診療・療育指導は、可能であればアジア人患者のエビデンスに基づいて行う方がよい。本研究の目的は、日本人2型糖尿病患者の病態的特徴や専門施設の診療状況・治療効果を検討し、糖尿病合併症を抑制するためのエビデンスを確立し、患者の生命予後とQOLの改善に貢献することである。
研究方法
本研究では、2033人の日本人2型糖尿病患者を前向きに観察することにより、日本人患者やその診療状況を追跡調査している。さらに同時に、患者指導を中心とした介入が、コントロール指標改善や合併症抑制に有効かどうかも解析している。
結果と考察
本年度の解析では、まず網膜症については、発症のリスクファクターとして、単変量解析では、罹病期間、HbA1c、収縮時血圧(SBP)、喫煙、飲酒であり、多変量解析では、罹病期間、HbA1c、BMIであった。腎症発生のハザード比はHbA1C<7%に比べて、7-9%で2.72倍、>9%で5.81倍となった。収縮期血圧<120mmHgに比べて、120mmHg以上で140mmHg未満では2.31倍、140mmHg以上で3.55倍のハザード比となった。喫煙の影響も示された(ハザード比1.99倍)。また、登録時の尿Alb/Crが30から150までの群の452例中の137例(30.1%)が<30に正常化(remission)が認められた。冠動脈疾患と脳卒中については、患者1000人あたりの冠動脈疾患および脳卒中の年間発症率はそれぞれ9.6、7.9であった。その発症リスク評価のためには、腹囲を単独で使うことはもちろん、現在のメタボリックシンドロームの診断基準でも十分でなく、腹囲の閾値を変更した上で、これを必須としない修飾を加えることが有用であることが判明した。
結論
これらの結果は、これまでの中間報告で明らかになった、肥満度などを始めとする、欧米人患者とは異なる日本人糖尿病患者の特徴と共に、日本人患者において初めて明らかにされたものが大部分である。わが国有数の糖尿病データベースである本研究は、これまでも日本人糖尿病のエビデンスを生み出してきたが、今後予定されている多くの解析結果とともに、将来の糖尿病診療に大きく貢献するはずである。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-