長期遠隔成績からみた糖尿病患者に対する至適冠血行再建法に関する研究

文献情報

文献番号
200825030A
報告書区分
総括
研究課題名
長期遠隔成績からみた糖尿病患者に対する至適冠血行再建法に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小林 順二郎(国立循環器病センター 心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 田林 晄一(東北大学大学院医学系 研究科・心臓血管外科学)
  • 山本 文雄(秋田大学医学部 心臓血管外科学(心保存))
  • 落 雅美(日本医科大学附属病院 心臓血管外科)
  • 田鎖 治(NTT東日本関東病院 心臓血管外科学)
  • 夜久 均(京都府立医科大学 心臓血管外科学(虚血性心疾患の外科的治療))
  • 田代 忠(福岡大学医学部 心臓血管外科学)
  • 岡林 均(岩手医科大学 後天性心疾患外科学)
  • 川筋 道雄(熊本大学大学院医学薬学研究部 心臓血管外科学)
  • 坂田 隆造(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管外科学(動脈グラフト薬理学的特性・体外循環中の脳保護))
  • 山嵜 健二(東京女子医科大学 心臓外科学(心不全に対する補助人工心臓))
  • 佐藤 敏彦(北里大学 公衆衛生学)
  • 阿部 充(国立循環器病センター 心臓血管外科)
  • 大塚 頼隆(国立循環器病センター 心臓血管外科)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病センター 心臓血管外科)
  • 中嶋 博之(国立循環器病センター 心臓血管外科)
  • 舩津 俊宏(国立循環器病センター 心臓血管外科)
  • 木村 一雄(横浜市立総合医療センター・循環器内科虚血性心疾患)
  • 岡村 吉隆(和歌山医大 心臓血管外科学)
  • 宮崎 俊一(近畿大学 循環器内科学)
  • 住吉 徹哉(榊原記念クリニック 循環器内科学(虚血性心疾患))
  • 高梨 秀一郎(榊原記念病院 心臓血管外科学)
  • 伊藤 彰(大阪市立総合医療センター・循環器内科学 虚血性心疾患)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病に合併する虚血性心疾患に対する治療指針の確立を目的としPCI、CABGを施行した症例を対象として治療成績と遠隔期の合併症の発生の有無を比較して至適血行再建法の確立を目的とする。
研究方法
2001/1/1から2006/12/31で冠状動脈に対する初回PCI、CABGを受けた糖尿病患者で治療時の年齢は20歳以上で弁膜症やその他の手術を施行されている症例は除外し治療前の患者の状態、治療方法、治療後の経過を参加各施設より集積し術前、術中、術後院内因子を解析し検討する。
結果と考察
1274例(CABG群879例、PCI群395例)のデータ登録を行った。PCI群は男:女=176:67、治療時年齢が66 ± 10歳、CABG群は男:女=669:207、治療時年齢が66 ± 9歳でこれらには両群間に有意差はなかったが左主幹部病変(CABG19%、PCI3%、p<0.0001)、3枝病変(同50%、10%、p<0.0001)、インシュリン治療(28%、13%、p<0.0001)、腎不全(7%、2%、p=0.0002)と、CABG群で有意に重症例が多かった。早期死亡は、CABG群3例(0.3%)、PCI群5例(1.3%)で差はなかった。遠隔期成績におけるCABG群とPCI群の比較では全症例および1枝病変例における生存率ではPCI群がCABG群より良好であった。2枝病変、3枝病変、網膜症・腎不全・透析等合併症症例では生存率には差はなかった。心事故の発生についてみると1枝・2枝・3枝病変、網膜症・腎症・透析症例すべてにおいてCABG群がPCI群より心事故の発生が有意に低かった。
結論
1枝病変についてはPCIの生命予後がCABGより良好であり良い適応と考えられる。しかし2枝病変以上や合併症例では生命予後でのPCIの優位性はなく心事故の発生からするとCABGの予後が良好であった。治療法の選択は冠動脈病変の特徴とともに全身状態、予後が考慮されるべきであり、これらの結果は糖尿病に伴う腎症や網膜症といった特有の合併症を有する例や多枝病変に対してはCABGが第一に考慮されるべきである可能性が示唆された。今後、冠動脈枝・デバイスのサイズやCABGにおけるグラフトの種類などと予後の関連について解析を進めてゆくことによりPCIの比率の高さ、又CABGにおける動脈グラフトの使用頻度やオフポンプ手術の割合の高さなど、欧米と異なる本邦の実情を踏まえた多施設研究は重要な意義を有すると思われ糖尿病に合併する虚血性心疾患の治療成績の向上に寄与する成果につなげる。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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