各種禁煙対策の経済影響に関する研究

文献情報

文献番号
200825025A
報告書区分
総括
研究課題名
各種禁煙対策の経済影響に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 裕子(奈良女子大学 保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池田俊也(国際医療福祉大学薬学部)
  • 川村 孝(京都大学大学院社会医学研究科)
  • 中山健夫(京都大学大学院社会医学研究科)
  • 埴岡 隆(福岡歯科大学)
  • 平田幸夫(神奈川歯科大学歯科医療社会学)
  • 三浦秀史(禁煙マラソン・禁煙健康ネット)
  • 東山明子(畿央大学健康科学部)
  • 長谷川浩二(国立病院機構京都医療センター展開医療部)
  • 山縣然太朗(山梨大学大学院医学工学総合研究部)
  • 後藤 励(甲南大学経済学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
禁煙に関する厚労省政策決定に必要な経済影響を算出することが本班の研究目的であり、禁煙保険治療やそれ以外のたばこ税の増税や歯科治療も含む広範囲な禁煙対策の経済効果算定を行い、日本の禁煙政策の学術的基礎付けを与えることを目的としている。今年度はたばこ価格(たばこ増税)と総税収を軸に有機的に研究を構築した。
研究方法
たばこ価格と総税収に関する研究では、増税が税収全体に及ぼす影響をコンジョイント分析の結果を基に推計した。推計は税収に関して控えめに行い、禁煙効果と節煙効果を合わせて算出した。また都道府県たばこ税の月次データを用いて、タスポ(たばこ自動販売機用成人識別ICカード)・タクシー禁煙化のたばこの売り上げに対する影響を長期・短期の2つの視点から分析した。わが国における禁煙治療の費用対効果の検討についてはマルコフモデルを作成し、禁煙治療を行わず自然経過に任せた無治療群、薬局で購入したニコチン代替パッチ使用群、薬局で購入したニコチン代替ガム使用群、保険診療下のニコチン代替パッチ使用群、保険診療下の経口補助薬使用群の5群について費用対効果を評価した。
結果と考察
たばこ価格(たばこ増税)と総税収に関する研究では、2009年1月にたばこ値上げを実施した場合、値上げをしない場合と比較して単年度ピークで500円では4600億円、1000円では1兆1000億円の税収増加が見込まれた。値上げ実施後2年目以降は、価格を上げれば上げるほど総税収も増加した。結果として、タバコ増税が総税収を増加させる蓋然性は非常に高いことが明らかになった。なおタスポに関しては、施行前後の一時的な売り上げ減少と施行直前の駆け込み需要が観察されたがタクシー禁煙化については、このような短期的な影響は観察されなかった。禁煙治療の費用対効果の検討では、男女とも全ての年齢群において、いずれの禁煙治療法も無治療に比べて費用対効果が良好な水準にあり、シナリオ分析として生涯医療費を考慮した場合においても同様の結果であった。
結論
タバコ増税が総税収を増加させる蓋然性は非常に高いことが明らかになった。またタスポの喫煙抑制効果は一時的なものであり、タバコ価格の値上げ等の必要性が強く示唆された。なおわが国における禁煙治療は費用対効果が良好な水準にあったが、さらに今後は薬剤師による禁煙支援やアスリートへの支援など介入の方法の差異による経済評価を加える予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
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