内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究

文献情報

文献番号
200825010A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-045
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(国立長寿医療センター研究所 疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 均(中部大学 生命健康科学部)
  • 安藤 富士子(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満、特に内臓肥満は生活習慣病の重要な要因である。本研究ではその発生要因、機序及び遺伝素因を明らかにするため、動物実験による基礎研究と地域住民を対象とした臨床疫学研究による総合的検討を行った。
研究方法
基礎研究ではUCP1-KOマウスとApoE-KOマウスの交配によりApoE/UCP1-DKOマウスを作出した。臨床疫学研究では「国立長寿医療センター研究所・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」第2次調査から第5次調査までに参加した40-88歳の無作為抽出された中高年地域住民男性1,631名、女性1,622名(延べ測定回数9,398回、男性4,725回、女性4,673回)を対象とした。
結果と考察
基礎研究:ApoE/UCP1-DKO マウスは内臓肥満と動脈硬化を発症するモデルマウスになることを期待して作製された。しかし予想に反してDKO マウスは動脈硬化に対して耐性を示すことが明らかとなった。
臨床研究:一般住民を対象とした6年間の縦断的解析では、栄養、飲酒、喫煙、運動などの生活習慣と内臓肥満とのスクリーニング解析で有意な関連が得られた要因を投入した多変量モデルで、内臓肥満の発症には男女ともに加齢、身体活動量の低下のみが関連しており、内臓肥満の予防のためには一日一万歩以上歩くことが最も有用であることが分かった。また内臓肥満は男性の総頸動脈プラーク、頭部MRIでのラクーナ、女性の総頸動脈プラーク、眼底動脈硬化所見、心電図虚血性変化と有意に関連していた。内臓肥満による動脈硬化の促進度は年齢差として2~6歳であった。メタボリックシンドロームでは、内臓肥満に血圧、脂質、糖代謝のいずれか2つが基準値以上であることを求めている。すなわち内臓肥満だけでなく、その他のリスクが重積することが動脈硬化疾患のリスクとなることを示唆しており、内臓肥満だけでは動脈硬化疾患のリスク予知因子としての感度は不十分であると考えられた。
結論
ApoE/UCP1-DKO マウスは動脈硬化に対して耐性を示した。一般住民での6年間の縦断的解析で内臓肥満が運動、特に歩数と関連していることが示された。内臓肥満と動脈硬化との関連では内臓肥満者で膜性動脈、小動脈、最小動脈の動脈硬化が有意に早かった。

公開日・更新日

公開日
2009-03-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200825010B
報告書区分
総合
研究課題名
内臓肥満の要因と動脈硬化促進に関する総合的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-045
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(国立長寿医療センター研究所 疫学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 均(中部大学 生命健康科学部)
  • 安藤 富士子(愛知淑徳大学 医療福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満、特に内臓肥満は生活習慣病の重要な要因である。本研究ではその発生要因、機序及び遺伝素因を明らかにするため、動物実験による基礎研究と地域住民を対象とした臨床疫学研究による総合的検討を行った。
研究方法
基礎研究では高脂肪食の摂取により、加齢と共に内臓肥満を呈するマウスのモデル(UCP1-KOマウス)を開発し内臓肥満の新たなマーカーの探索を行った。またUCP1-KOマウスとApoE-KOマウスの交配によりApoE/UCP1-DKOマウスを作出した。臨床疫学研究では「国立長寿医療センター研究所・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」第2次調査から第5次調査までに参加した40-88歳の無作為抽出された中高年地域住民男性1,631名、女性1,622名(延べ測定回数9,398回、男性4,725回、女性4,673回)を対象とした。
結果と考察
基礎研究:FABP3が内臓肥満の新たなマーカーとなる可能性を示し、また遺伝性肥満および糖尿病モデルマウスでの骨格筋におけるFABP3蛋白レベルと血清レベルが上昇していることを明らかにした。ApoE/UCP1-DKOマウスではUCP1が欠損するにもかかわらず、褐色脂肪組織に新しい脂質代謝機構が誘導されることが明らかとなった。
臨床研究:高齢者ではウエスト基準値の再評価の必要性が示唆された。内臓脂肪が多い男女で、体重当たりの安静時代謝量が減っていた。内臓肥満に影響を与える遺伝子多型は男女共通のものと、男女にそれぞれ特異的なものがあると考えられた。6年間の縦断的解析では内臓肥満が運動、特に歩数と関連していることが示された。また内臓肥満は男性の総頸動脈プラーク、頭部MRIでのラクーナ、女性の総頸動脈プラーク、眼底動脈硬化所見、心電図虚血性変化と有意に関連していた。内臓肥満による動脈硬化の促進度は年齢差として2~6歳であった。
結論
FABP3が内臓肥満関連分子であることをUCP1-DKO マウスで見出した。ApoE/UCP1-DKO マウスは動脈硬化に対して耐性を示した。一般住民での6年間の縦断的解析で内臓肥満が運動、特に歩数と関連していることが示された。内臓肥満と動脈硬化との関連では内臓肥満者で膜性動脈、小動脈、最小動脈の動脈硬化が有意に早かった。

公開日・更新日

公開日
2009-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
内臓肥満の頻度や動脈硬化性変化との関わりなどは一般住民ではまだ十分明らかにはなっていなかった。本研究では患者やボランティア集団ではなく一般住民での長期的な追跡で、内臓肥満に関する実態に関する基礎的データを網羅的に得られ、動脈硬化性病変への発展についての貴重なデータが得られた。特に内臓肥満に関する膨大なデータから内臓肥満発症の危険因子を網羅的な解析にて抽出し、さらに縦断的解析から危険因子の検証ができた。
臨床的観点からの成果
内臓肥満予防のためには歩行が最も有用であり、特定の遺伝子多型を持つ者での歩行の有用性も示された。また内臓肥満は膜性動脈の動脈硬化、小動脈や最小動脈の動脈硬化と有意に関連していたがその影響は比較的小さく、内臓肥満から動脈硬化性病変への発展は内臓肥満だけでなく、その他のリスクが重積することが動脈硬化疾患のリスクとなり、内臓肥満だけでは動脈硬化疾患のリスク予知因子としての感度は不十分であることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
内臓肥満の危険因子を明らかにすることで、その予防が可能となり、内臓肥満に関わるメタボリック症候群や糖尿病、動脈硬化などへの予防を通じて国民の健康を守り、その結果国民の医療費を削減することにより、福祉や厚生行政などへの貢献も期待できる。
その他のインパクト
読売新聞 平成21年3月1日朝刊、メタボ 腹囲だけでは「不十分」

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-