エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究

文献情報

文献番号
200825006A
報告書区分
総括
研究課題名
エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-041
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田中 茂穂(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 和子(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム )
  • 宮地 元彦(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム )
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 海老根 直之(同志社大学 スポーツ健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準(2005年版)」のエネルギー必要量は、集団・個人レベルでの推定法をはじめ、いくつかの課題を残している。また、「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」における身体活動量の評価法については、十分に標準化されていない。そこで、エネルギー消費量や身体活動量の推定法を改善・確立し、食事摂取基準のエネルギー必要量や運動基準・指針に資する研究を行う。
研究方法
1)健康な成人男女を対象に、身体活動量質問紙(JALSPAQなど)や各種加速度計を用いた日常生活における身体活動量評価法、および食事調査の妥当性を、二重標識水法を基準として検討した。2)昨年度開発した、様々な身体活動の強度を従来より正確に評価できる3次元加速度計を基準として、歩数法や質問紙法を用いた日常生活における身体活動量(“エクササイズ”=メッツ・時/週)の評価法を検討した。3)健康な成人男女を対象に、既存の基礎代謝量推定式の妥当性や新しい推定式を検討した。
結果と考察
1)DLW法を基準とした、日常生活のエネルギー消費量の推定法の検討
1年度目から継続していた、様々な対象者についての測定から、以下のような結果が得られた。①JALSPAQを用いると、これまでの海外の質問紙に関する報告と比べて推定精度は高かった。ただし、IPAQと同様、特に活動的な人以外における身体活動量の評価には限界があった。②新たな加速度計により、これまでみられた身体活動レベル・エネルギー消費量の過小評価が大きく改善されたが、DHQ(食事調査)では、エネルギー消費量を過小評価する傾向がみられた。
2)運動基準・指針における身体活動量の評価法
①歩数はエクササイズと比較的強い相関がみられるが、歩行以外の活動もエクササイズに寄与していること、②男性より女性の方が少ない歩数で23エクササイズが達成できるなど、対象特性による違いがあること、などが明らかとなった。
3)基礎代謝量の推定法
体重当たりの基礎代謝量は体重によって異なるが、体重を用いた補正により推定精度がある程度改善した。
結論
新たな加速度計や質問紙法により、エネルギー必要量を従来より正確に推定できる方法を提示できたとともに、運動指針に対応した身体活動量評価における歩数の有用性や限界が明らかとなった。また、基礎代謝量基準値を用いた基礎代謝量の推定法について、改善策を提示した。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200825006B
報告書区分
総合
研究課題名
エネルギー必要量推定法に関する基盤的研究
課題番号
H18-循環器等(生習)・一般-041
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
田中 茂穂(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
研究分担者(所属機関)
  • 高田 和子(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
  • 宮地 元彦(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
  • 佐々木 敏(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 海老根 直之(同志社大学 スポーツ健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「日本人の食事摂取基準(2005年版)」のエネルギー必要量は、集団・個人レベルでの推定法をはじめ、いくつかの課題を残している。また、「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)」における身体活動量の評価法については、十分に標準化されていない。そこで、エネルギー消費量や身体活動量の推定法を改善・確立し、食事摂取基準のエネルギー必要量や運動基準・指針に資する研究を行う。
研究方法
1)健康な成人男女を対象に、複数の加速度計を装着させた上で、基礎代謝量および計14種類の日常生活活動中のエネルギー消費量を測定した。2)健康な成人男女を対象に、身体活動量質問紙(JALSPAQなど)や各種加速度計を用いた日常生活における身体活動量評価法、および食事調査の妥当性を、二重標識水法を基準として検討した。3)健康な成人男女を対象に、既存の基礎代謝量推定式の妥当性や新しい推定式を検討した。4)ヒューマンカロリメーターを用いて、日常生活時に近い間欠的な活動を複数含んだ生活パターンにおける、身体活動後の代謝亢進を評価した。
結果と考察
1)アルゴリズム等の工夫によって、加速度計を用いた日常生活全般における時間毎の活動強度が評価可能となった。その結果、二重標識水法を妥当基準とした日常生活のエネルギー消費量を、従来の方法より正確に推定できた。2)JALSPAQを用いると、これまでの海外の質問紙に関する報告と比べて推定精度は高かった。3)体重あたりの基礎代謝量を一律に定めている現在の基準値の見直しが必要である。また、既存の基礎代謝量推定式のうち、国立健康・栄養研究所が発表した推定式が最も優れていることが明らかとなった。4)活動時のエネルギー消費量を体重で除すると静的活動において、基礎代謝量や座位安静時代謝量で除すると生活活動や歩行活動において、活動強度の評価が体格に依存する可能性が示唆された。5)歩数は“エクササイズ”と比較的強い相関がみられるが、歩行以外の活動も“エクササイズ”に寄与していた。また、男性より女性の方が少ない歩数で23エクササイズが達成できた、6)日常生活レベルでの身体活動に伴う活動後の代謝亢進は、1日の総エネルギー消費量に大きな影響を与えないことが示唆された。
結論
新たな加速度計や質問紙法により、エネルギー必要量を従来より正確に推定できる方法を提示できた。また、基礎代謝量の推定精度や問題点を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2009-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200825006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家事活動などの日常生活活動を評価できる加速度計を開発し、総エネルギー消費量評価精度が改善したことは、学術的にオリジナリティのある結果である。身体活動量や総エネルギー消費量推定のための質問紙法において、歩行のみならず日常生活活動の評価法に焦点を当てる必要があることを示唆する結果でもあり、実際にそのような項目が含まれた質問紙の妥当性についても、先行研究より優れた結果が得られた。また、身体活動による代謝亢進の影響に関しては、米国の食事摂取基準の考え方と異なる結果であった。
臨床的観点からの成果
従来、エネルギー消費量・必要量を正確に推定することは困難であったが、加速度計を用いて、これまでよりかなり正確に評価できるようになった。質問紙についても、具体的な方法論を提示できた。今後、様々な対象集団における妥当性評価は必要であるが、目的に応じた方法論の選択肢を提示できた。今後、保健指導や様々な研究・調査において妥当性の確認された方法が利用できることとなった。
ガイドライン等の開発
2009年5月に公表された「日本人の食事摂取基準(2010年版)」において、基礎代謝量の値や推定法、二重標識水法を用いたエネルギー消費量・必要量の対象集団別の値や推定法、身体活動後の代謝亢進に関する影響などについて、当研究班の発表した10件の論文を引用して推定エネルギー必要量の決定に利用された。また、それらの結果や当研究班が中心となって行った系統的レビューが、その後の「普及啓発セミナー」や「食事摂取基準活用検討会報告書」でも生かされた。
その他行政的観点からの成果
「健康づくりのための運動指針2006」における身体活動量(“エクササイズ”)の評価法についても検討の余地があるが、本研究で、その客観的な指標としての歩数の有用性および限界について提示することができた。今後さらに必要な、質問紙法による方法論の確立においても参考となる結果である。
その他のインパクト
本研究で得られた結果の一部は、新たに始まった特定保健指導における運動・身体活動量の評価にも利用できる。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
13件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」(2009)および「食事摂取基準活用検討会報告書」(2010)
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ganpule AA, Tanaka S, Ishikawa-Takata K, et al.
Interindividual variability in metabolic rates in Japanese subjects
Eur J Clin Nutr , 61 (11) , 1256-1261  (2007)
原著論文2
Tanaka C, Tanaka S, Kawahara J, et al.
Triaxial accelerometry for assessment of physical activity in young children
Obesity , 15 (5) , 1233-1241  (2007)
原著論文3
Ohkawara K, Tanaka S, Miyachi M, et al.
A dose-response relation between aerobic exercise and visceral fat reduction: systematic review of clinical trials
Int J Obes , 31 (12) , 1786-1797  (2007)
原著論文4
Midorikawa T, Tanaka S, Kaneko K, et al.
Evaluation of low-intensity physical activity by triaxial accelerometry
Obesity , 15 (12) , 3031-3038  (2007)
原著論文5
Ohkawara K, Tanaka S, Ishikawa-Takata K, et al.
Twenty-four-hour analysis of elevated energy expenditure after physical activity in a metabolic chamber: models of daily total energy expenditure
Am J Clin Nutr , 87 (5) , 1268-1276  (2008)
原著論文6
Tanaka S, Ohkawara K, Ishikawa-Takata K, et al.
Accuracy of predictive equations for basal metabolic rate and the contribution of abdominal fat distribution to basal metabolic rate in obese Japanese people
Anti-Aging Med , 5 (1) , 17-21  (2008)
原著論文7
田中千晶, 田中茂穂, 河原純子, 他.
一軸加速度計を用いた幼児の身体活動量の評価精度
体力科学 , 56 (5) , 489-500  (2007)
原著論文8
Ishikawa-Takata K, Tabata I, Sasaki S, et al.
Physical activity level in health free-living Japanese estimated by doubly labelled water method and international physical activity questionnaire
Eur J Clin Nutr , 62 (7) , 885-891  (2008)
原著論文9
山本祥子, 髙田和子, 別所京子, 他.
ボディービルダーの基礎代謝量と身体活動レベルの検討
栄養学雑誌 , 66 (4) , 195-200  (2008)
原著論文10
Okubo H, Sasaki S, Hirota N, et al.
The influence of age and body mass index on relative accuracy of energy intake among Japanese adults
Public Health Nutr , 9 (5) , 651-657  (2006)
原著論文11
Murakami K, Sasaki S, Takahashi Y, et al.
Misreporting of dietary energy, protein, potassium and sodium in relation to body mass index in young Japanese women
Eur J Clin Nutr , 62 (1) , 111-118  (2007)
原著論文12
Okubo H, Sasaki S, Rafamantanantsoa HH, et al.
Validation of self-reported energy intake by a self-administered diet histoty questionaire using the doubly labed water method in 140 Japanese adults
Eur J Clin Nutr , 62 (11) , 1343-1350  (2008)
原著論文13
Yamada Y, Naito Y, Yokoyama K, et al.
Light-intensity activities are important for estimating physical activity energy expenditure using uniaxial and triaxial accelerometers
Eur J Appl Physiol , 105 (1) , 141-152  (2009)
原著論文14
Usui C, Takahashi E, Gando Y, et al.
Relationship between blood adipocytokines and resting energy expenditure in young and elderly women.
J Nutr Sci Vitaminol , 53 (6) , 529-535  (2007)
原著論文15
高橋恵理,樋口満,細川優,他
若年成人女性の基礎代謝量と身体組成
栄養学雑誌 , 65 (5) , 241-247  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-