がん患者の意向による治療方法等の選択を可能とする支援体制整備を目的とした、がん体験をめぐる「患者の語り」のデータベース

文献情報

文献番号
200824059A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の意向による治療方法等の選択を可能とする支援体制整備を目的とした、がん体験をめぐる「患者の語り」のデータベース
課題番号
H19-がん臨床・若手-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
和田 恵美子(大阪府立大学看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中山 健夫(京都大学大学院医学研究科)
  • 杉山 滋郎(北海道大学大学院理学研究院)
  • 朝倉 隆司(東京学芸大学教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
11,727,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、患者の置かれている社会的状況や患者の意向を患者と医療者の双方が共有し、本人の意向を十分尊重したがんの治療方法等が選択されるようながん医療提供体制の構築を目指し、患者自身が語るがんの体験をインタビューにより収集してデータベース化し、その一部を患者や一般市民向けにインターネットに公開することを目的とする。さらに、学術研究や医療提供者の教育プログラムの開発に活用する。
研究方法
2年次にあたる本年度は、年齢・居住地・病期・治療法など多様性の確保に留意しつつ、インタビュー本調査と、質的データ分析ソフトを用いて分析を行い、語りの映像および音声クリップとともにウェブ上に公開するシステム構築の準備を行った。
結果と考察
今年度で、乳がん47名と前立腺がん49名のデータ収録が終了した。協力者について乳がんは、年齢20-70代、居住地は21都道府県で、病期0期-Ⅳ期、治療法は全摘、温存、再建などの外科的、化学療法、放射線療法、ホルモン療法があり、肝転移へのラジオ波照射、動注化学療法、骨転移・全脳照射などの再発治療や緩和ケアを受けている患者がいた。前立腺がんは、年齢50-80代、居住地は23都道府県で、病期B期-D期、治療法は開腹および内視鏡的前立腺摘除術、ホルモン療法、リニアックやIMRT、小線源療法、化学療法、重粒子線・陽子線、高線量組織内照射、HIFU、冷凍療法、緩和ケアの体験談も得られた。9割弱の協力者が映像収録を承諾しており、その比率は英国より高かった。平均インタビュー時間は乳がん136分、前立腺がん120分であった。インタビュー内容からは、協力者が悩みつつ自己決定していくプロセスの多様性が示され、今後がん患者のニーズに対応したきめこまやかな情報提供として活用されることが期待された。昨年度設立した情報倫理委員会およびアドバイザリー委員会には、知的財産権の扱いやデータ分析においてその都度検討を依頼し、専門家委員会としての機能が確立された。

結論
インタビュー協力者は疾患ごとに当初の目標50人にほぼ達し、maximum variation samplingを目指したリクルート活動の有効性と、自らの疾患の体験を社会に活用したいと考える協力者の存在の多さが示された。ウェブページの公開は、乳がんが平成21年7月頃、前立腺がんが同9月末頃を予定している。公開後、利用状況の評価ならびにデータベースの臨床応用の可能性の検討を行っていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
-