生存率とQOLの向上を目指したがん切除後の形成再建手技の標準化

文献情報

文献番号
200824045A
報告書区分
総括
研究課題名
生存率とQOLの向上を目指したがん切除後の形成再建手技の標準化
課題番号
H19-がん臨床・一般-018
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
中塚 貴志(埼玉医科大学医学部 形成外科)
研究分担者(所属機関)
  • 多久嶋亮彦(杏林大学医学部 形成外科)
  • 朝戸裕貴(独協医科大学 形成外科)
  • 櫻庭実(国立がんセンター東病院 形成外科)
  • 桜井裕之(東京女子医科大学 形成外科)
  • 木股敬裕(岡山大学医歯薬学総合研究科 形成再建外科)
  • 中川雅裕(静岡県立静岡がんセンター形成外科)
  • 矢野健二(大阪大学医学部 形成外科)
  • 澤泉雅之(癌研究会有明病院 形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
19,672,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体各部位(頭頸部、乳房、四肢・体幹)における固形癌切除後の再建術式の標準化を図るべく、各施設、研究者によるこれまでの再建法の術後成績および問題点を検討し、新たな機能評価法の確立をめざした。癌切除後の四肢のリンパ浮腫もがん患者の術後QOLに大きな影響を与えるため、今回の研究の対象とした。
研究方法
これまで施行された症例の術後成績の検討を基として、各領域における最適の治療方法を探究し、術後成績や生存率に与える影響などを調べ、術後機能の評価方法に関しても検討を加えた。リンパ浮腫に関しては、インドシアニングリーン(ICG)を用いたリンパ管の走行や再生に関する基礎的研究や早期診断、さらにリンパ管静脈吻合施行例におけるアンケートによる術後評価を行った。
結果と考察
頭頸部癌、特に舌癌切除後の再建では、術後合併症を生じないような再建法の確立により形成外科医が生存率の向上に寄与できる可能性があると考えられた。遊離空腸移植後の空腸片の静脈圧モニタリングは、還流静脈の採取により、間欠的ではあるが移植空腸片組織内の代謝を把握することも可能であり、阻血・鬱血それぞれの判定も可能となることが期待される。
体幹・四肢の腫瘍切除後の再建では、ISOLS(国際患肢温存学会)による機能評価を行った結果、皮弁を用いた腫瘍切除後の再建は、生じた欠損を単に被覆するばかりでなく、早期リハビリの開始、関節可動域の確保などの点から術後患肢機能に寄与する部分が大きいことが示唆された。
乳房再建では、近年FDAの認可により人工物(プロテーゼ)を用いた再建法も次第に普及する傾向にある。今後、合併症などの従来法との差異、整容性評価や患者の満足度調査を通して、適応基準などを明確にしていきたい。
癌切除後の四肢のリンパ浮腫はこれまで難治とされてきたが、ICG蛍光造影法を導入することにより、リンパ流の基礎的動態の解明に役立つばかりでなく、リンパ管静脈吻合を確実なものとし、リンパ浮腫の治療方法の発展に大きく貢献すると考えられる。
結論
本研究では、より安全・確実で良好な術後機能を獲得できる再建手技の確立を目指し、多数症例の解析を行った。その結果、多くの部位で遊離組織移植術が有効であることが裏付けられたが、四肢・体幹では有茎皮弁・筋皮弁の適応症例も多かった。
今後は機能および形態の評価法の策定を行いながら、再建方法の更なる標準化を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2009-03-17
更新日
-