進行胃がんの生存率を向上させる標準的治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200824042A
報告書区分
総括
研究課題名
進行胃がんの生存率を向上させる標準的治療法の開発に関する研究
課題番号
H19-がん臨床・一般-015
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
笹子 三津留(兵庫医科大学 外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 邦佳(東京都立墨東病院 外科)
  • 伊藤 誠二(愛知県がんセンター中央病院 外科)
  • 岩崎 善毅(東京都立駒込病院 外科)
  • 加治 正英(富山県立中央病院 外科)
  • 高木 正和(静岡県立総合病院 外科)
  • 円谷 彰(神奈川県立がんセンター 外科)
  • 梨本 篤(新潟県立がんセンター新潟病院 外科)
  • 福島 紀雅(山形県立中央病院 外科)
  • 畑 啓昭(国立病院機構京都医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
22,698,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全体では70%近い治癒率を達成した胃がんにおいて、依然10%程度の5年生存率にとどまっているスキルス胃がんあるいはそれに準ずる大きな3型胃がんの予後改善。
研究方法
【研究形式】多施設共同の第Ⅲ相ランダム化比較試験(優越性試験):プライマリーエンドポイントは全生存期間。
【研究対象】遠隔転移を伴わない、治癒切除可能な8cm以上の大型3型・4型胃がん症例。【症例登録とランダム割付】JCOGデータセンターで中央登録【治療内容】試験治療:術前TS-1(3週投与1週休薬)+CDDP(day8)による化学療法を2コース行う。治癒切除可能症例ではD2以上の郭清を伴う根治手術を行い、術後TS-1単独による化学療法を1年間実施する。対照群:試験群と同様な内容の手術・術後治療を行う。【予定症例数】両群併せて316例で、期待イベント数は276。【実施施設】JCOG胃がん外科グループに所属する消化器がんの基幹施設35施設。(倫理面への配慮)本人に口答及び文章による説明を行い、文章による同意を得る。説明内容には、試験参加の自由、同意後の撤回の自由、質問の自由、個人情報の扱いなどが含まれ、試験の同意取得は、ヘルシンキ宣言、個人情報保護法、臨床研究に関する倫理指針の総ての要件を満たして行われている。20年度終了時点で83例が登録された。
結果と考察
月に1-4例登録し、平成20年度末で83例を登録した。現在までTRDは出ておらず、本治療の安全性は第3相試験でも確認された。登録数が予定ペースを下回っているが、登録数低下によるものではなく、対象症例が限定されていることによる。 登録前の腹腔鏡検査の時点で除外される原因の大半は腹膜播種あるいは洗浄細胞診の陽性であるが、後者については本研究の対象患者と予後に大きな差が無く同じ治療ストラテジーを適応できる患者群であることが判明し、これらの患者を対象として含む方向でプロトコール改訂を効果・安全性評価委員会に提出している。この改訂により、年間10例程度の登録増が期待できる。
結論
TS-1+CDDP療法による術前化学療法は安全性と治療効果に優れ、遠隔転移のない予後不良進行胃がん症例に対する新しい治療法となりうるポテンシャルを持っている。現在第Ⅲ相試験を施行中で、症例数を増やす努力をさらに継続し、予後不良の胃がんに対する治療を確立したい。

公開日・更新日

公開日
2009-04-27
更新日
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