がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究

文献情報

文献番号
200823027A
報告書区分
総括
研究課題名
がん化学予防剤の開発に関する基礎及び臨床研究
課題番号
H19-3次がん・一般-013
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
若林 敬二(国立がんセンター研究所 がん予防基礎研究プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 秀樹(京都府立医科大学)
  • 徳留 信寛(名古屋市立大学)
  • 田中 卓二(金沢医科大学)
  • 高山 哲治(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 塚本 徹哉(愛知県がんセンター研究所腫瘍病理学部)
  • 河田 純男(山形大学医学部消化器病態制御)
  • 窪田 直人(東京大学医学部付属病院(大学院医学系研究科)糖尿病代謝内科統合的分子代謝疾患科学寄付講座)
  • 山本精一郎(国立がんセンターがん対策情報センターがん情報・統計部がん統計解析室)
  • 高橋 智(名古屋市立大学大学院医学研究科共同研究教育センター)
  • 今岡 達彦(放射線医学総合研究所・放射線防護研究センター・発達期被ばく影響研究ブループ)
  • 上村 博司(横浜市立大学付属病院泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
102,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんは、我が国において死亡原因の第1位を占め、今後もさらに増え続けるものと予測される。このようながんの増加を抑制することは極めて重要である。本研究においては食品素材及び医薬品を対象として新規がん予防剤を検索、開発する基礎研究を行うとともに、発がんの高危険度群と考えられる人々を対象とした臨床研究を行うことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することを目的とする。
研究方法
近年著しく増加している大腸がん、前立腺がん、又我が国に多い胃がん等の予防を目標とし、申請者等が開発した各々の動物発がん実験モデルを用いて肥満、高脂血症、糖尿病と発がんとの関連性の検討、がん化学予防剤候補の検索、及びそのメカニズム解析を行った。臨床応用を目的に、大腸がんのハイリスクグループである家族性大腸腺腫症(FAP)及び多発性大腸腺腫症患者におけるアスピリンや緑茶抽出物等の臨床介入試験を行なっている。
結果と考察
メタボリックシンドローム患者で低下しているアディポネクチンを欠損したマウスでは大腸発がんが亢進した。抗癲癇薬バルプロ酸は潰瘍性大腸炎の大腸発がんモデルにおいて弱い発がん抑制作用を示した。アンギオテンシン受容体ブロッカーはラット前立腺発がんを抑制した。また、カンデサルタンを服用している前立腺がん患者の約3割にPSAの減少/安定化が認められた。Caffeic acid phenethyl ester (NFκB阻害剤)は ヘリコバクター・ピロリ感染による胃炎と胃発がん発生を抑制した。潰瘍性大腸炎患者を対象に拡大内視鏡を用いて大腸の前がん病変と考えられるACFを観察、解析したところ、いずれもACF数と異形成病変、潰瘍性大腸炎の罹病期間との間に有意な相関を認めた。FAPに対する低用量アスピリン腸溶錠及び緑茶抽出物、更には多発性大腸腺腫症に対する低用量アスピリン腸溶錠の二重盲検無作為割付試験が進行中である。
結論
本研究においては、医薬品及び食品素材を対象として検索を行い、新規がん化学予防剤の候補化合物を見い出すことができた。これらの基礎的研究を行なうとともに、発がんのハイリスクグループと考えられる人々を対象とした臨床研究を行なうことにより、安全性の高い有効ながん予防方法を確立することができると考えられる。得られる成果は、がん予防対策を講ずる上に有用な研究資料になるものと確信する。

公開日・更新日

公開日
2009-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-04-16
更新日
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