血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法の確立

文献情報

文献番号
200823025A
報告書区分
総括
研究課題名
血管新生とリンパ管新生の同時制御による制癌法の確立
課題番号
H19-3次がん・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 靖史(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所)
  • 渡部 徹郎(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の治療標的として血管新生とリンパ管新生が注目されている。理想的には双方を制御することが望ましいが、そのような治療法は確立していない。研究代表者の発見した新規血管新生抑制因子VASH1は、血管新生とリンパ管新生を同時に、広いスペクトルムで抑制し、腫瘍の発育とリンパ節転移を阻止する。VASH1の治療応用を進めることで、新しい治療法として癌医療に貢献する。
研究方法
VASH1ノックアウトマウスに癌細胞を移植し、腫瘍の発育と血管新生を野生型マウスと比較する。野生型マウスに癌細胞を移植し、ヒトVASH1遺伝子搭載非増殖型アデノウイルスを尾静注して肝臓で発現させることで、外因性VASH1の効果を検討する。
培養内皮細胞のVASH1の発現をsiRNAでノックダウンするか、あるいはVASH1遺伝子導入して、VASH1の内皮細胞のviabilityに与える影響を検討する。
大腸菌用コドンに置き換えてレコンビナントVASH1蛋白の大腸菌で産生させ、その抗血管新生活性を角膜アッセイで確認する。レコンビナントVASH1蛋白をポリエチレングリコール(PEG)化修飾し、その活性を角膜アッセイで確認するともに体内動態を検討する。
結果と考察
VASH1ノックアウトマウスの腫瘍は血管新生に富んでおり、腫瘍においても内因性VASH1は機能していることが確認された。野生型マウスにおいて、外因性VASH1は腫瘍血管を成熟化させ、抗癌剤との併用効果が観察された。
一般に血管新生抑制因子は内皮細胞の細胞死を促進するが、VASH1は逆に内皮細胞のの生存を助長した。その機序としてSOD2の発現増強を介してROSの生成量を制御すると共に、長寿遺伝子SIRT1の発現増強が判明した。
大腸菌を用いて、活性のあるレコンビナントVASH1蛋白の大量調整を可能とした。また、PEG化修飾による体内での安定性の改良を行った。

VASH1は、広いスペクトルムで血管新生とリンパ管新生を阻止するが、内皮細胞を障害せず、生存を助長することは他の血管新生阻害剤と際だった相違点である。腫瘍血管を成熟化させるため、抗癌剤との併用が効果的と考えられる。
結論
内皮細胞が産生する血管新生・リンパ管新生抑制因子VASH1の特異な性質を明らかにし、さらに治療応用の一環としてのレコンビナント蛋白の大量調整と体内安定化に目処がついた。

公開日・更新日

公開日
2009-04-08
更新日
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