社会学・心理学等との連携による国民のリテラシー向上と患者の納得形成に関する研究

文献情報

文献番号
200823010A
報告書区分
総括
研究課題名
社会学・心理学等との連携による国民のリテラシー向上と患者の納得形成に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 英昭(杏林大学医学部 医療管理学)
研究分担者(所属機関)
  • 郡司 篤晃(聖学院大学 人間福祉学研究科)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学 産科婦人科学講座)
  • 宮腰重三郎(東京都老人医療センター 血液科)
  • 小松 恒彦(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
  • 小原まみ子(亀田総合病院 腎臓高血圧内科)
  • 中村 利仁(北海道大学大学院医学研究科 医療システム学分野)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
  • 湯地晃一郎(東京大学医科学研究所附属病院 内科)
  • 松村 有子(東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム)
  • 濱木 珠恵(東京都立墨東病院 血液内科)
  • 小林 一彦(JR東京総合病院 血液内科)
  • 久住 英二(ナビタスクリニック立川)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
16,296,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、1)メディアによる様々な医療報道内容や、その報道が与えた影響を検証し、現在の問題点を明らかにするとともに、医療報道のあり方について探索研究する。2)様々な媒体との連携を通して健全な医療メディア育成モデルの構築を試みる。3)患者の視点に立った情報発信の新規モデル構築を試みる。
研究方法
1)患者や家族、国民の医療情報入手手段に関する調査
2)医療報道内容の検証
 がん医療に関する新聞報道の内容を調査した。
3)メディアとの連携による健全な医療メディア育成モデルの構築
 医療者とメディアの活発な情報交換を通じて、メディア報道者の医療リテラシーの向上をはかった。一定の基準に基づいて医療報道の評価を行い、その結果を公開する試み(「日本版」メディア・ドクター)を開始した。
4)患者の視点に立った情報発信の新規モデル構築
 患者や家族が希望しているが情報が入手できない分野の情報提供を行った。
結果と考察
1)患者や家族、国民の医療情報入手手段に関する調査
 多くの患者が他の患者に役立つなら積極的に情報発信を手伝っても良いと回答していた。また医師や病院の役割が欠かせないことが明らかになった。
2)医療報道内容の検証
 がん関係の記事が主要新聞の大きなテーマであることが明らかとなった。話題になることが多いがんは頻度が高かった。
3)メディアとの連携による健全な医療メディア育成モデルの構築
 ボルテゾミブの肺障害の副作用情報の事例を検討した。短期間での医師患者の情報共有が行われた。
「日本版」メディア・ドクターの試みとして合計52の新聞記事について評価を実施した。治療や予防方法に関する科学的評価は容易であったが、政策や現状認識に関する記事の評価は前者と比較して困難であった。
4)患者の視点に立った情報発信の新規モデル構築
 がん患者の疑問に応えるために医療提供者側である側から患者にわかる形で発信する。直接のコミュニケーションももちろん重要である。病院にある非商業雑誌が患者には信頼される。
 迅速な情報共有が必要な場合など、あらゆる手段で情報発信を行うことが必須である。
結論
 医療に関するリテラシー向上のためには、多くの立場の関係者が、種々の伝達手段を用いながら、綿密なコミュニケーションをはかる必要がある。
 それぞれの立場からの記事の評価を実施し、書き手にフィードバックすることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2009-03-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200823010B
報告書区分
総合
研究課題名
社会学・心理学等との連携による国民のリテラシー向上と患者の納得形成に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-011
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 英昭(杏林大学医学部 医療管理学)
研究分担者(所属機関)
  • 郡司 篤晃(聖学院大学 人間福祉学研究科)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学 産科婦人科学講座)
  • 宮腰重三郎(東京都老人医療センター 血液科)
  • 小松 恒彦(帝京大学ちば総合医療センター 第三内科)
  • 小原まみ子(亀田総合病院 腎臓高血圧内科)
  • 中村 利仁(北海道大学 大学院医学研究科医療システム学分野)
  • 山口 拓洋(東京大学医学部附属病院 臨床試験データ管理学)
  • 湯地晃一郎(東京大学医科学研究所附属病院 内科)
  • 松村 有子(東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム)
  • 濱木 珠恵(東京都立墨東病院 血液内科)
  • 小林 一彦(JR東京総合病院 血液内科)
  • 久住 英二(ナビタスクリニック立川)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 適切な情報提供を求める患者の声が反映されたがん対策基本法が成立した。この法律に基づき、「がん対策推進基本計画」が策定され、国、地方公共団体、また、がん患者を含めた国民、医療従事者、保険者、学術団体、患者団体およびマスメディアが協力してがん対策に取り組もうとしている。しかし一方で、不十分な理解に基づいたセンセーショナルな医療報道が、国民の医療に対する認識を誤らせ、昨今の国民の医療不信の一因であるとも考えられる。国民が納得できる医療を選択するためにも、適正な医療情報の提供体制構築が必要とされている。
研究方法
 本研究は国民の医療リテラシー向上を目的とし、患者や国民が得る医療情報の実態の分析、様々なメディアの医療情報提供の問題点・限界・可能性について検討した。さらにより適切な医療情報の提供体制構築のため、既存のメディアにおける問題の解決策の提案と、より有用な医療情報提供のための具体的な試みを実行した。
結果と考察
 患者・家族は医療従事者が認識している以上に多彩なソースから情報を得ていた。患者のマスメディア情報に対する満足度は比較的高かった。
 新聞やテレビ放送などのマスメディアは、取り扱う話題に新奇性や話題性が求められるため、医療とは特性を異にする。そのため、医療に関する普通の話題、今後の冷静な検討は取り扱われない。様々な媒体との連携を通して健全な医療メディア育成モデルの構築をはかる必要がある。報道者と医療関係者が情報交換を活発にし、お互いの分野の特性を理解することで、マスメディアが医療のリテラシー向上に大きな役割を果たすことが期待される。
 「日本版」メディア・ドクターを提案し実施した。
 さらに、様々な媒体との連携を通して健全な医療情報提供モデルの構築を試みた。抗がん剤の副作用の事例で、副作用情報をあらゆる手段で医師が発信することで、結果的に副作用の存在と対処方法が周知され、副作用を減らすことが可能であった。また、患者の視点に立った医療提供者発の情報発信モデルとして医学研究を患者市民に伝える情報提供モデルを作成した。さらに、新規ツールとして、病院設置のフリーペーパーの活用を試みた。
結論
 国民のリテラシー向上は、患者及び国民がより納得できる選択を行うために必須である。医療に関するリテラシー向上のためには、多くの立場の関係者が、種々の伝達手段を用いながら、綿密なコミュニケーションをはかる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2009-03-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究の成果は、Journal of Clinical Oncologyなど英文誌に掲載された。がん特別報道番組とがん医療に関する論文はJournal of National Cancer Institute編集者に注目・引用され、意見交換を行った。
臨床的観点からの成果
医療分野におけるメディア報道について、科学的な研究を実施した。本研究を通じて、メディアリテラシーの向上に寄与したと考えられる。
ガイドライン等の開発
医療に関する新聞報道を検証する、日本版メディアドクターの評価基準を作成した。
その他行政的観点からの成果
医療情報提供内容やその方法を考慮するために必要な、科学的考察に基づいた研究を実施した。
その他のインパクト
報道者・医療者・市民患者に対して本研究に関する情報提供を行った。報道者に記事作成の際に活用されるなど反響があった。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiroto Narimatsu, Akiko Hori, Tomoko Matsumura, et al
Cooperative Relationship Between Pharmaceutical Companies, Academia, and Media Explains Sharp Decrease in Frequency of Pulmonary Complications After Bortezomib in Japan
Journal of Clinical Oncology , 26 (35) , 5820-5830  (2008)
原著論文2
Yukiko Kishi, Soichiro Nagamatsu, Morihito Takita, et al
Trends in Cancer Coverage in Japanese Newspapers
Journal of Clinical Oncology  (2008)
原著論文3
Tomoko Matsumura, Koichiro Yuji, Toshihito Nakamura, et al
Possible Impact of the NHK Special Questioning Cancer Treatment in Japan on Clinician's Prescriptions of Oxaliplatin
Japanese Journal of Clinical Oncology , 38 (1) , 78-83  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-