がん罹患・死亡動向の実態把握の研究

文献情報

文献番号
200823009A
報告書区分
総括
研究課題名
がん罹患・死亡動向の実態把握の研究
課題番号
H18-3次がん・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 博昭(財団法人放射線影響研究所 情報技術部)
  • 柴田 亜希子(山形県立がん・生活習慣病センター がん対策部)
  • 藤田 学(福井社会保険病院)
  • 松尾 恵太郎(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
  • 西 信雄(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 大木 いずみ(栃木県立がんセンター研究所 疫学研究室)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター研究局 疫学研究部)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所 がん予防・情報研究部門)
  • 井岡 亜希子(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 調査部調査課)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所 疫学部)
  • 早田 みどり(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 大瀧 慈(広島大学 原爆放射能医学研究所)
  • 水野 正一(国立健康栄養研究所・国際産学連携センター)
  • 加茂 憲一(札幌医科大学 医学部)
  • 味木 和喜子(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 丸亀 知美(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 松田 智大(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
106,876,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第3次対がん総合戦略の10年間の第2期(平成19-21年度:標準化推進期)において、地域および院内がん登録の標準化を進め、国立がんセンターに全国がん罹患集計システムを構築する。がん罹患などの情報を国立がんセンターに集約し公開することにより、根拠に基づいた政策判断に資する。
研究方法
第3次対がん総合戦略の10年間を3期に分けた第2期(平成19-21年度:標準化推進期)の2年目として、第1期(平成16-18年度:標準化開始期)に定めた地域がん登録の標準化の普及を推進した。放射線影響研究所(広島)開発の地域がん登録標準データベースシステム(標準DBS)を標準化の推進の主眼とした。地域がん登録事業を実施している全ての道府県に個別罹患データ提出を依頼し、そのうち、基準を満たす登録の罹患データを利用して、がんサーベイランスシステムによって2003年推計値を算出した。人口動態統計に基づくがん死亡データを解析し、神経芽細胞腫マススクリーニング事業休止後の死亡率の動向を観察した。
結果と考察
標準的な罹患集計表出力機能を、標準DBSに実装し、標準集計表を含む報告書の構成を定めて、初めての標準罹患報告書を山形県がん登録より刊行した。標準DBSを利用する地域は、昨年度の11県から2県増加して13県となり、さらに3県においてデータ移行作業を進めている。地域がん登録室における個人情報の安全管理対策強化のため、安全管理措置ハンドブック(暫定版)を作成・配布し、規定等の準備作業を開始した。標準登録様式による院内がん登録システムから、地域がん登録への標準登録票を印刷する仕組みを作成した。全国がん罹患モニタリング集計では、31地域から2003年罹患デ-タの提供を受け、13地域(宮城、山形、千葉、神奈川、新潟、福井、滋賀、大阪、鳥取、岡山、広島、佐賀、長崎)のデータを用いて全国がん罹患数・率を推計した。副腎悪性新生物を代替指標として1980-2006年の神経芽細胞腫死亡率動向を検討した結果、統計学的に有意な増加は見られなかった。
結論
引き続き、標準DBSの導入を軸とする登録手順の標準化を進め、登録精度を高める必要がある。有用ながん統計を公表するためには、法的な整備や院内がん登録との連携、地域がん登録の実務、行政に関わる人材育成など、幅広い分野の協力体制が必要となる。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200823009B
報告書区分
総合
研究課題名
がん罹患・死亡動向の実態把握の研究
課題番号
H18-3次がん・一般-010
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
研究分担者(所属機関)
  • 片山 博昭(財団法人放射線影響研究所 情報技術部)
  • 柴田 亜希子(山形県立がん・生活習慣病センター がん対策部)
  • 藤田 学(福井社会保険病院)
  • 松尾 恵太郎(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部)
  • 西 信雄(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 大木 いずみ(栃木県立がんセンター研究所 疫学研究室)
  • 三上 春夫(千葉県がんセンター研究局 疫学研究部)
  • 岡本 直幸(神奈川県立がんセンター臨床研究所 がん予防・情報研究部門)
  • 井岡 亜希子(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター 調査部調査課)
  • 西野 善一(宮城県立がんセンター研究所 疫学部)
  • 早田 みどり(財団法人放射線影響研究所 疫学部)
  • 大瀧 慈(広島大学 原爆放射能医学研究所)
  • 水野 正一(国立健康栄養研究所・国際産学連携センター )
  • 加茂 憲一(札幌医科大学 医学部)
  • 味木 和喜子(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 丸亀 知美(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 松田 智大(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報・統計部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がんの正確な実態把握によるがん対策の正しい方向付けが本研究の目的であり、1)地域がん登録の標準化と精度向上、2)院内がん登録の標準化と人材育成、3)がん罹患・死亡動向の分析と予測の3課題を取り上げた。
研究方法
1)地域がん登録の標準化と精度向上のために、運営委員会を結成して、整備計画を開始した。
2)国立がんセンター中央病院をモデルとして院内がん登録の標準化を進めた。
3)罹患データと、人口動態統計に基づく死亡率データを整理して、がん罹患・死亡動向の分析と予測に用いた。
結果と考察
1)初年度は、整備計画の達成条件である「目標と基準」を定めた。「地域がん登録の標準化と精度向上に関する第2期事前調査」を実施して第1期を評価した。地域がん登録標準データベースシステム(標準DBS)の基本機能開発をほぼ完了し、4県で運用を開始して標準手順書の整備を進めた。2年目には、第1期の成果として、「地域がん登録手引き改訂第5版」を刊行した。「第2期事前調査」の結果から、目標と第3期基準および第2期活動計画を定めて「地域がん登録の整備について(第3版)」を公表した。標準DBS導入支援体制を整備した。3年目には、標準DBSに標準集計表出力機能を実装し、標準報告書を刊行した。標準DBSは利用地域13県、導入作業地域3県となった。安全管理措置ハンドブック(暫定版)を作成・配布し、登録室での情報管理規定等の準備を開始した。全国がん罹患モニタリング集計では、2001、2002、2003年罹患数・率を推計した。
2)初年度は、国立がんセンター中央病院院内がん登録の2004年新規診断症例を解析し、標準的な集計表を検討した。院内がん登録実務初期研修を、実施・評価し、次年度に同研修内容を改訂した。最終年度には、院内がん登録システムから、地域がん登録への標準登録票を印刷する仕組みを開発した。
3)初年度は、2000年のがんの生涯リスクを推定した。次年度は、米国の短期予測法を利用し、我が国のがん罹患数の増加を予測した。最終年度は、神経芽細胞腫検診事業休止後の死亡率の動向を観察した。
結論
1)地域がん登録の標準化による精度向上と情報の安全管理が期待される。
2)本研究を通じて院内がん登録標準化が推進され、人材育成プログラムが整備される。
3)罹患・死亡の双方からがんの動向を把握し、がん対策の効果的な企画立案・評価の支援を目指す。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
地域がん登録標準化を大きく推進した。具体的には、研究班で定めた第3次対がん10年間で達成すべき「目標」と現段階において達成されるべき「基準」を踏まえて、地域がん登録の標準方式の普及を、地域がん登録標準データベースシステムの導入と併せて進めた。さらに、国立がんセンターがん対策情報センターのがんサーベイランス機能を大幅に強化することができた。全国がん罹患数・率の推計やがん死亡率の動向分析を実施し、結果を公表することで、がん対策行政、がん研究に関わる専門家に対して有用な情報を提供した。
臨床的観点からの成果
国立がんセンター中央病院の院内がん登録をモデルとした標準化および院内がん登録標準システム導入を推進することで、医療機関内でのがんデータの管理を簡便かつ明確なものとした。さらに、地域がん診療連携拠点病院向けに作成した標準登録項目の普及促進と実務者の教育研修によって、人材育成に貢献した。また、精度の高い院内がん登録に基づいた詳細な院内がん統計を一元管理し、分析することにより、臨床現場での医療方針決定の際に参照することができる情報提供システムの基礎を構築した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
地域がん登録推進の取り組みが、多数取り上げられ、がん対策のために地域がん登録の整備が急務である旨が紹介された。(H18 6/13神奈川新聞、8/13日本経済新聞、8/30産経新聞、9/2山形新聞、9/15朝日新聞、9/18毎日新聞、10/12Medical Tribune、H19 2/24山梨日報、4/1日本経済新聞、5/25読売新聞、5/31毎日新聞、6/4毎日新聞、H20 1/6日本経済新聞、2/24読売新聞(大阪)、10/12日本経済新聞、11/18朝日新聞、12/2毎日新聞)

発表件数

原著論文(和文)
42件
原著論文(英文等)
85件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
82件
学会発表(国際学会等)
72件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
17件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
津熊秀明,井岡亜希子,大島明
地域のがんの罹患・生存率の実態
癌の臨床 , 52 (7) , 485-492  (2006)
原著論文2
Kanazawa N, Ioka A, Tsukuma H, et al.
Incidence and survival of mesothelioma in Osaka, Japan.
Jpn J Clin Oncol , 36 (4) , 254-257  (2006)
原著論文3
西本寛
がん登録システム
癌の臨床 , 52 (7) , 1-5  (2006)
原著論文4
Minami Y, Nishino Y, Tsubono Y, et al.
Increase of colon and rectal cancer incidence rates in Japan: trends in incidence rates in Miyagi prefecture, 1959-1997.
J Epidemiol , 16 (6) , 240-248  (2006)
原著論文5
Marugame T, Kamo K, Katanoda K, et al.
Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2000: estimates based on data from 11 Population-based cancer registries.
Jpn J Clin Oncol , 36 (10) , 668-675  (2006)
原著論文6
祖父江友孝
【がん対策】 がん登録の意義と課題 がん登録の意義とその有効活用例
公衆衛生 , 71 (1) , 27-30  (2007)
原著論文7
Kamo K, Kaneko S, Satoh K, et al.
A mathematical estimation of true cancer incidence using data from population-based cancer registries
Jpn J Clin Oncol , 37 (2) , 150-155  (2007)
原著論文8
松尾恵太郎
日本の造血器腫瘍の疫学 造血器腫瘍
日本臨床 , 65 (1) , 9-13  (2007)
原著論文9
Marugame T, Katanoda K, Matsuda T, et al.
The Japan cancer surveillance report: incidence of childhood, bone, penis and testis cancers.
Jpn J Clin Oncol , 37 (4) , 319-323  (2007)
原著論文10
Marugame T, Matsuda T, Kamo K, et al.
Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2001 based on the data from 10 population-based cancer registries.
Jpn J Clin Oncol , 37 (11) , 884-891  (2007)
原著論文11
Suzuki T, Matsuo K, Wakai K, et al.
Effect of familial history and smoking on common cancer risks in Japan.
Cancer , 109 (10) , 2116-2123  (2007)
原著論文12
Izumi S and Ohtaki M
Incorporation of inter-individual heterogeneity into the multistage carcinogenesis model: Approach to the analysis of cancer incidence data.
Biomedical Journal , 49 (4) , 539-550  (2007)
原著論文13
Sobue T
Current activities and future directions of the cancer registration system in Japan.
Int J Clin Oncol , 13 (2) , 97-101  (2008)
原著論文14
Sobue T
Cancer registration system: an introduction.
Int J Clin Oncol , 13 (2) , 89-  (2008)
原著論文15
Shibata A, Matsuda T, Ajiki W, et al.
Trend in incidence of adenocarcinoma of the esophagus in Japan, 1993-2001.
Jpn J Clin Oncol , 38 (7) , 464-468  (2008)
原著論文16
Okamoto N
A history of the cancer registration system in Japan.
Int J Clin Oncol , 13 (2) , 90-96  (2008)
原著論文17
Nishi N, Sugiyama H, Hsu WL, et al.
Differences in mortality and incidence for major sites of cancer by education level in a Japanese population.
Ann Epidemiol , 18 (7) , 584-591  (2008)
原著論文18
Kamo K, Katanoda K, Matsuda T, et al.
Lifetime and age-conditional probability of developing cancer or dying of cancer in Japan.
Jpn J Clin Oncol , 38 (8) , 571-576  (2008)
原著論文19
Matsuda T, Marugame T, Kamo K, et al.
Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2002: based on data from 11 Population-based cancer registries.
Jpn J Clin Oncol , 38 (9) , 641-648  (2008)
原著論文20
松田智大, 丸亀知美, 味木和喜子, 他.
地域がん登録に関する国民意識 2006年英国調査を踏まえての全国調査結果.
公衆衛生 , 9 , 733-737  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-