希少がん(悪性脳腫瘍)の個別適正化治療のためのTRI(Translational Research Informatics)システムの構築

文献情報

文献番号
200823007A
報告書区分
総括
研究課題名
希少がん(悪性脳腫瘍)の個別適正化治療のためのTRI(Translational Research Informatics)システムの構築
課題番号
H18-3次がん・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
成田 善孝(国立がんセンター 中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター 中央病院)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 医学部)
  • 淺井 昭雄(関西医科大学 医学部)
  • 前島 亜希子(国立がんセンター 研究所病理部)
  • 高橋 広夫(中部大学 応用生物学部)
  • 武笠 晃丈(東京大学 医学部)
  • 齋藤 彰(日本電気株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
あらゆる癌の中で最も治療困難な悪性脳腫瘍Glioma(神経膠腫)の予後改善を目的として、患者背景・画像情報・病理情報・マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現プロファイル・プロテオームデータ・治療結果などの質の高い臨床情報を収集した統合化データベース[TRIシステム]を作成した。
研究方法
 TRIシステムは以下の4つのデータを統合型データベースソフトウェアBIOPRISMにより構築し、治療上の問題点・治療効果を予測するシステムを作成した。
(1) 匿名化臨床情報(患者背景・症状・血液生化学データ)ならびに手術・放射線化学療法の種類・治療経過などの臨床情報データ
(2) 腫瘍の発生部位・進展形式・手術摘出度などのMRI画像情報
(3) 病理医の診断をもとに、核異型・分裂能・免疫染色・FISHなどのデジタル化した病理情報のデータ
(4) Human Genome U133 Plus2.0 Array(Affymetrix社)解析による遺伝子発現プロファイル・プロテオーム(二次元電気泳動)データ
結果と考察
 TRIシステムは従来の多施設データベースと異なり200項目にわたる質の高い詳細なデータベースであることが特徴である。
 マイクロアレイの解析結果から、MGMT遺伝子の発現の低いアルキル化剤抵抗性の症例においては、IL-6等の血管新生因子が高発現していることが明らかとなった。Gliomaのgrade 3 anaplastic astrocytoma -> grade 4 glioblastomaの悪性転化においても、IL-8などの血管新生遺伝子やCyclin Bの高発現が見られ、血管新生因子を抑制することがhigh grade gliomaの治療に有効であることが示唆された。
 また髄液蛋白のプロテオミクス解析法(2D-DIDE)を確立し、中枢神経系悪性リンパ腫の髄液中の診断マーカーとしてSoluble IL-2-R・ IL-10・VCAM-1などが有用であることが明かとなった。
結論
TRIシステムにより、治療を行った過去の症例や遺伝子・蛋白研究を無駄にすることなく、網羅的に収集・蓄積された臨床および遺伝子・病理などのバイオ情報を長期にわたり基盤的に蓄積可能となった。今後蓄積されたデータを広く公開し、様々なgliomaの新しい診断・治療法の開発に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200823007B
報告書区分
総合
研究課題名
希少がん(悪性脳腫瘍)の個別適正化治療のためのTRI(Translational Research Informatics)システムの構築
課題番号
H18-3次がん・一般-008
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
成田 善孝(国立がんセンター 中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 渋井 壮一郎(国立がんセンター 中央病院)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 医学部)
  • 淺井 昭雄(関西医科大学 医学部)
  • 齋藤 彰(日本電気株式会社)
  • 前島 亜希子(国立がんセンター 研究所病理部)
  • 高橋 広夫(中部大学 応用生物学部)
  • 武笠 晃丈(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
あらゆる癌の中で最も治療困難な悪性脳腫瘍Glioma(神経膠腫)の予後改善を目的として、患者背景・画像情報・病理情報・マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現プロファイル・プロテオームデータ・治療結果などの質の高い臨床情報を収集した統合化データベース[TRIシステム]を作成した。
研究方法
 TRIシステムは以下の4つのデータを統合型データベースソフトウェアBIOPRISMにより構築し、治療上の問題点・治療効果を予測するシステムを作成した。
(1) 匿名化臨床情報(患者背景・症状・血液生化学データ)ならびに手術・放射線化学療法の種類・治療経過などの臨床情報データ
(2) 腫瘍の発生部位・進展形式・手術摘出度などのMRI画像情報
(3) 病理医の診断をもとに、核異型・分裂能・免疫染色・FISHなどのデジタル化した病理情報のデータ
(4) Human Genome U133 Plus2.0 Array(Affymetrix社)解析による遺伝子発現プロファイル・プロテオーム(二次元電気泳動)データ
結果と考察
Gliomaのマイクロアレイデータベースとしては国内最大であり、またMRI画像や、HE標本・免疫染色・FISHなどの詳細なデータを収録した。このデータベースは臨床医の立場から作成したものであり、質の高い詳細なデータベースが特徴である。
マイクロアレイの解析結果から、MGMT遺伝子の発現の低いアルキル化剤抵抗性の症例においては、IL-6等の血管新生因子が高発現していることが明らかとなった。Gliomaのgrade 3 anaplastic astrocytoma -> grade 4 glioblastomaの悪性転化においても、IL-8などの血管新生遺伝子やCyclin Bの高発現が見られ、血管新生因子を抑制することがhigh grade gliomaの治療に有効であることが示唆された。
 髄液のプロテオミクス技術を確立し、中枢性悪性リンパ腫(PCNSL)の診断マーカーを検索した。
結論
TRIシステムにより、治療を行った過去の症例や遺伝子・蛋白研究を無駄にすることなく、網羅的に収集・蓄積された臨床および遺伝子・病理などのバイオ情報を長期にわたり基盤的に蓄積可能とし、治療法の探索・予後推測などを強力に支援し、個々の患者に最適化された治療法の開発が期待される。

公開日・更新日

公開日
2009-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 悪性脳腫瘍Glioma(神経膠腫)の予後改善を目的として、患者背景・画像情報・病理情報・マイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現プロファイル・プロテオームデータ・治療結果などの質の高い臨床情報を収集した統合化データベース[TRIシステム]を作成した。TRIシステムを構築する悪性脳腫瘍のマイクロアレイデータベースは国内最大である。
臨床的観点からの成果
 TRIシステムにより、治療を行った過去の症例や遺伝子・蛋白研究を無駄にすることなく、網羅的に収集・蓄積された臨床および遺伝子・病理などのバイオ情報を長期にわたり基盤的に蓄積可能となった。
 TRIシステムは症例集型のデータベースとしても利用することができ、過去の症例をもとに新規症例の治療を行う上で有用である。
ガイドライン等の開発
 マイクロアレイの解析結果から、膠芽腫ではMGMT遺伝子の発現の低いアルキル化剤抵抗性の症例においては、血管新生因子が高発現していることが明らかとなった。今後膠芽腫の治療については標準治療薬であるtemozolomideだけでなく、血管新生因子阻害薬が必要であると考えられ、これらの併用療法による臨床試験を行うこととなった。
その他行政的観点からの成果
 TRIシステムを構築する悪性脳腫瘍のマイクロアレイデータベースは国内最大であり、今後蓄積されたデータを広く公開し、様々なgliomaの新しい診断・治療法の開発に活用されることが期待される。
その他のインパクト
 髄液蛋白のプロテオミクス解析法(2D-DIDE)を確立し、中枢神経系悪性リンパ腫の髄液中の診断マーカーとしてSoluble IL-2-R・ IL-10・VCAM-1などが有用であることが明かとなり、今後診断に応用できる可能性がある。
 髄液蛋白のプロテオーム解析技術は、脳腫瘍の診断・治療だけでなく、難治性神経内科疾患の診断・治療への応用も期待される。

発表件数

原著論文(和文)
20件
原著論文(英文等)
30件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
9件
学会発表(国内学会)
30件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
出願予定
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
5件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
成田 善孝, 渋井壮一郎,秋葉 幸範, 他
「悪性脳腫瘍のTRI(Translational Research Informatics)システムの構築」
日本コンピュータ外科学会誌 , 10 (3) , 449-449  (2008)
原著論文2
成田善孝, 渋井壮一郎, 他
悪性神経膠腫に対する長期temozolomide投与例の検討
脳神経外科速報 , 18 (4) , 496-503  (2008)
原著論文3
成田善孝, 渋井壮一郎
新しい神経疾患治療薬の動き グリオーマ
Clinical Neuroscience , 25 (1) , 1242-1246  (2007)
原著論文4
成田善孝
転移性脳腫瘍治療の問題点と手術適応
脳神経外科ジャーナル , 16 (11) , 820-827  (2007)
原著論文5
渋井壮一郎
悪性脳腫瘍に対する新しい治療
医学のあゆみ , 222 , 953-954  (2007)
原著論文6
西川亮
Temozolomide(TMZ)を長期間投与することの有効性と危険性
脳21 , 12 , 44-49  (2009)
原著論文7
Kazuhiko Mishima.,Nakanishi Y.,et al.
Increased expression of podoplanin in malignant astrocytic tumors as a novel molecular marker of malignant progression
Acta Neuropathol , 111 , 483-488  (2006)
原著論文8
Matsumoto S.,Nakanishi Y.,et al.
Frequent EGFR mutations in brain metastases of lung adenocarcinoma.
Int J Cancer , 119 , 1491-1494  (2006)
原著論文9
Takahashi H.,Nakanishi Y.,et al.
Classification of intramural metastases and lymph node metastases of esophageal cancer from gene expression based on boosting and projective adaptive resonance theory.
J Biosci Bioeng , 102 , 46-52  (2006)
原著論文10
Kim DH.,Nakanishi Y., et al.
Array-based comparative genomic hybridization of circulating esophageal tumor cells.
Oncology reports , 16 , 1053-1059  (2006)
原著論文11
Maeshima AM., et al.
Diffuse large B-cell lymphoma after transformation from low-grade follicular lymphoma: morphological, immunohistochemical, and FISH analyses.
Cancer Sci , 99 , 1760-1768  (2008)
原著論文12
Maeshima AM., et al.
Histologic and immunophenotypic changes in 59 cases of B-cell non-Hodgkin’s lymphoma after rituximab therapy.
Cancer Sci , 100 , 54-61  (2009)
原著論文13
Kawamura, T. Takahashi, H. et al.
Proposal of newly gene filtering method, BagPART, for gene expression analysis with small samples.
J.Biosci. Bioeng. , 105 (1) , 81-84  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-