生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200823001A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
  • 若井建志(名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学/医学推計・判断学)
  • 永田知里(岐阜大学大学院医学研究科 疫学・予防医学分野)
  • 溝上哲也(国立国際医療センター 研究所 国際保健医療研究部)
  • 田中恵太郎(佐賀大学医学部 社会医学講座 予防医学分野)
  • 松尾恵太郎(愛知県がんセンター研究所  疫学・予防部)
  • 倉橋典絵(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
68,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人ががんを予防するために行うべき適切な生活習慣を、科学的証拠に基づいて提示するとともに、それを達成するための具体的な方法を開発し、生活習慣改善によるわが国のがん罹患率の減少をめざす。
研究方法
日本人を対象とした疫学研究を系統的にレビューし、共通基準により関連性の強さを客観的・量的に要約し、研究班メンバーにより、総合的に評価し、因果関係の有無を段階的に判定する。本年度は、平成19年度までに評価した要因(喫煙・飲酒・体格・運動・感染症・野菜・果物)以外で、関連が示唆されている要因と全がん及び主要部位がん(胃・大腸・肺・乳・肝・食道・膵・前立腺)との関連を検討した。新たなエビデンスの構築と関連の強さを量的に推定するため、日本の現行コホート集団を用いた共通基準カテゴリに基づくプール解析を行う。本年度は、緑茶と胃がん、飲酒と肝がん、飲酒と大腸がんとの関連について量的評価を行った。がん予防をめざした生活習慣改善の具体的方法を開発するために、その有効性を介入研究により評価する。本年度は、いくつかの地域集団、職域集団などで介入研究を実施した。研究班で得られた成果については、本研究班で開設したホームページで公開し、国民への還元を図る。
結果と考察
野菜・果物と食道がんはprobableな負の関連、糖尿病と肝がんはprobableな正の関連と判定した。また、文献の追加や新たなエビデンスの構築などにより、果物と胃がんの負の関連はprobableからpossibleに、飲酒と大腸がんの正の関連はprobableからconvincingに変更した。プール解析の結果、緑茶と胃がんに関しては、男性では関連がみられなかったが、女性では緑茶飲用が1日5杯以上で胃がんリスクの統計学的有意な低下を認めた。飲酒と肝がんについては、男女とも現在飲酒者において肝がんリスクの有意な上昇を認めた。飲酒と大腸がんについては、飲酒量の増加に伴いハザード比は直線的に増加し、男性大腸がんの4分の1が飲酒に起因するものと推定した。大腸がんに予防的な生活習慣の改善を目指した介入研究では、体重・腹囲の減少と運動時間の増加などが図れることが示された。
結論
野菜・果物摂取は食道がん予防に、また、糖尿病予防は、肝がん予防につながる可能性が大きいことが示された。また、飲酒の制限は、肝がん・大腸がん予防に有効であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200823001B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究
課題番号
H18-3次がん・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻 一郎(東北大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
  • 若井 建志(名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学/医学推計・判断学)
  • 永田 知里(岐阜大学大学院医学研究科 疫学・予防医学分野)
  • 溝上 哲也(国立国際医療センター 研究所 国際保健医療研究部)
  • 田中 恵太郎(佐賀大学医学部 社会医学講座 予防医学分野)
  • 松尾 恵太郎(愛知県がんセンター研究所  疫学・予防部)
  • 倉橋 典絵(国立がんセンター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人ががん予防のために行うべき適切な生活習慣を、科学的証拠に基づき提示するとともに、それを達成する具体的な方法を開発し、生活習慣改善によるわが国のがん罹患率の減少をめざす。
研究方法
日本人における主要な生活習慣とがんに関する疫学研究を系統的にレビューし、共通基準により関連の強さを客観的に要約し、研究班メンバーで総合的に評価し因果関係の有無を段階的に判定する。新たなエビデンスの構築と関連の強さを量的に推定するため、BMI・野菜・果物・塩分・緑茶・飲酒について日本の現行コホートによるプール解析を行う。本研究班で行った評価や国際的な評価・指針を踏まえ「日本人のためのがん予防法」を作成する。がん予防をめざした生活習慣改善の具体的方法開発のため、その有効性を介入研究で評価する。得られた成果は、本研究班等のホームページで公開し国民への還元を図る。
結果と考察
コーヒーと肝がん・大腸がんは各々probable、possibleな負の関連、塩と胃がんはprobableな正の関連、加工肉と大腸がんはpossibleな正の関連、大豆と乳がん・前立腺がんはpossibleな負の関連、BMIと大腸がん・閉経後乳がんは各々probable、convincingな正の関連、ヘリコバクター・ピロリ菌感染と胃がん、HBV・HCV感染と肝がんはconvincingな正の関連、結核感染と肺がんはpossibleな正の関連、糖尿病と肝がんはprobableな正の関連、授乳と乳がんはprobableな負の関連、喫煙と食道がん・膵がんは各々convincing、probableな正の関連、飲酒と食道がんはconvincingな正の関連、野菜・果物と食道がんはprobableな負の関連と判定した。プール解析の結果、BMIと全がんでは、21未満で男性死亡リスク上昇(23-24.9を基準)、大腸がんでは25以上の男性で、乳がんでは27以上の女性で、罹患リスク上昇を認めた(25未満を基準)。野菜・果物および果物で男性肺がん死亡リスク低下を、野菜・果物摂取で男性遠位部胃がん罹患リスク低下を認めた。塩分と胃がんでは男女とも関連を認めず、緑茶では1日5杯以上の飲用で女性胃がん罹患リスクの低下を認めた。飲酒と肝がん・大腸がんでは、ともに、飲酒量と罹患リスクに正の関連を認めた。食事・運動に関する介入研究で、緑黄色野菜摂取量増加、体重・腹囲減少、運動時間増加等が図れることを示した。
結論
日本人における生活習慣とがんの関連が総合的に評価され今後のがん予防対策の基礎資料となった。現状における科学的証拠に基づいた指針「日本人のためのがん予防法」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200823001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国は、疾病予防を推進するための日本人のエビデンスが不足しており、既存のがん予防の指針や勧告が必ずしも現代の日本人に適用できる保障はなかった。本研究では主要な生活習慣とがんとの関連について、日本人を対象とした疫学研究の系統的レビューに基づき、因果関係の有無を科学的・客観的視点から総合的に評価判定し、関係を認めた場合にはメタ・アナリシスにより影響の大きさを具体的数値で示した。これらの成果は、日本人にとって効果的・効率的な生活習慣改善によるがん予防の具体的方法を考案するための科学的基盤になった。
臨床的観点からの成果
本研究の成果はがん患者の具体的診療に役立つものではないが、本研究において開発された効果的・効率的な生活習慣改善によるがん予防法が、国民に普及し、具体的に実践されれば、一部の国民が、がんになるのを未然に防止できるものと期待される。
ガイドライン等の開発
本研究において実施した、生活習慣とがんとの関連に関する文献レビューに基づく科学的・客観的視点からの評価判定と関連の大きさの具体的数値、及び、国際的ながん予防に関する評価やガイドラインを踏まえ、喫煙、飲酒、食事、身体活動、体形、感染の6項目から構成されるガイドライン「日本人のためのがん予防法」を開発した。
その他行政的観点からの成果
本研究において実施した生活習慣とがんとの関連に関する科学的証拠の評価判定結果と関連の大きさについての具体的数値は、わが国の今後のがん予防施策を具体的に進めていく上で不可欠な、極めて重要な基礎資料となる。
その他のインパクト
本研究によって得られた知見は、研究班において開設したホームページに掲載して、国民への積極的な情報還元を図っている。「日本人のためのがん予防法」については、国立がんセンターがん情報サービスでも公開している。また、個別の知見については、飲酒と大腸がんとの関連の強さから、男性大腸がんの4分の1が飲酒に起因するものと推定され、日本人は欧米人に比べ飲酒によって大腸がんリスクが高まりやすいことが示唆された結果については、新聞を含む複数のメディアに取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
(http://epi.ncc.go.jp/can_prev/) (http://ganjoho.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_based.html)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tanaka K, Tsuji I, Wakai K, et al.
Alcohol drinking and liver cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 38 (12) , 816-838  (2008)
原著論文2
Mizoue T, Inoue M, Wakai K, et al.
Alcohol drinking and colorectal cancer in Japanese: a pooled analysis of results from five cohort studies.
Am J Epidemiol. , 167 (12) , 1397-1406  (2008)
原著論文3
Shimazu T, Tsuji I, Inoue M, et al.
Alcohol drinking and gastric cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 38 (1) , 8-25  (2008)
原著論文4
Inoue M, Wakai K, Nagata C, et al.
Alcohol drinking and total cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 37 (9) , 692-700  (2007)
原著論文5
Nagata C, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Alcohol drinking and breast cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 37 (8) , 568-574  (2007)
原著論文6
Wakai K, Nagata C, Mizoue T, et al.
Alcohol drinking and lung cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 37 (3) , 168-174  (2007)
原著論文7
Nishino Y, Inoue M, Tsuji I, et al.
Tobacco smoking and gastric cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 36 (12) , 800-807  (2006)
原著論文8
Mizoue T, Tanaka K, Tsuji I, et al.
Alcohol drinking and colorectal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 36 (9) , 582-597  (2006)
原著論文9
Tanaka K, Tsuji I, Wakai K, et al.
Cigarette smoking and liver cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among Japanese.
Jpn J Clin Oncol. , 36 (7) , 445-456  (2006)
原著論文10
Nagata C, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Tobacco smoking and breast cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiological evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 36 (6) , 387-394  (2006)
原著論文11
Wakai K, Inoue M, Mizoue T, et al.
Tobacco smoking and lung cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiological evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol. , 36 (5) , 309-324  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-