わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究

文献情報

文献番号
200822017A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における新しい妊婦健診体制構築のための研究
課題番号
H20-子ども・一般-003
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
松田 義雄(東京女子医科大学 医学部産婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 海野 信也(北里大学医学部 産婦人科)
  • 齋藤 滋(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 久保 隆彦(国立成育医療センター 産婦人科)
  • 中井 章人(日本医科大学 産婦人科)
  • 篠塚 憲男(胎児医学研究所)
  • 松原 茂樹(自治医科大学 産婦人科)
  • 川鰭 市郎(国立長良医療センター 産婦人科)
  • 関沢 明彦(昭和大学医学部 産婦人科)
  • 林 邦彦(群馬大学医学部 保健学科疫学)
  • 斎籐 益子(東邦大学医学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
周産期のデータベース(DB)を解析することで, 妊娠高血圧症候群(PIH)などの妊娠合併症発症に関与するリスク因子を抽出し, さらに胎児情報も含んだ情報の一元化を試みて, 母子手帳の母体―胎児情報を充実させる(研究1). また,未受診妊婦の背景や要因を分析し, 妊婦健診体制の充実を図ることで, 妊婦の安全性を担保し, 全ての地域で実施可能な妊婦診療体制を構築する(研究2)ことを目的とする.妊娠合併症の発症予知に関し, 精度が高く簡便で感度の高い,母体血による早期診断システムの有用性を検討する(研究3).
研究方法
研究1:産科合併症の特性を明らかにするため, 日本産科婦人科学会のDB24万例強を利用したケース・コホート研究により周産期主要疾患のリスク因子を探索した. このDBを用いて, 出生時体重基準曲線の作成を試み, 従来の基準値と比較した. 妊婦が自己評価できる簡単なリスクスコアを作成し, 周産期予後との関連を検証した.
研究2:産科医療体制の現状とそのトレンドを各種調査から分析した. 加えて, 未受診妊婦の実態調査から問題点の抽出, 一地方における健診体制の実態を調査し, 助産師側からも妊婦健診体制を検証した.
研究3:母体血漿遺伝子を用いたPIHの予知の可能性を検討した.

結果と考察
研究1:産科合併症の分娩時期と発症に関与するリスク因子が特定でき, 全く正常に発育して生まれた児の推定体重より作成された胎児発育曲線の正当性が示された. 妊婦自身の評価による「リスクスコア」の有用性が確認された.
研究2:医師減少に伴う分娩施設の集約化が進み, 診療所の重要性が増している.未受診妊婦には経済的理由以外にも妊娠・出産に対する意識不足などの問題が関与していた.同一地域でも妊婦健診内容に差があり, 医師以外の医療者によるサポート体制の構築が不可欠であることが判明した. 助産師からは対話不足が指摘され,母子手帳への自由記載の有用性が示唆された.
研究3:母体血漿中cell-free RNAを用いて, PIHの発症予知が高い精度で可能なことを示した.
結論
産科医減少に伴う医療体制の脆弱化は確実に進んでいる. 新たな母児の情報を取り入れた母子健康手帳を妊婦と医療関係者間における情報伝達のツールとして健診内容の質的・量的変換を図り, 地域の実情に応じて妊産婦を支える医療者の協働体制を構築していくことが必要と思われた.

公開日・更新日

公開日
2009-09-17
更新日
-