分娩拠点病院の創設と産科2次医療圏の設定による産科医師の集中化モデル事業

文献情報

文献番号
200822006A
報告書区分
総括
研究課題名
分娩拠点病院の創設と産科2次医療圏の設定による産科医師の集中化モデル事業
課題番号
H18-子ども・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 州博(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座周産期医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 海野 信也(北里大学医学部産婦人科学)
  • 遠藤 俊子(山梨大学大学院医学工学総合研究部臨床看護学)
  • 福嶋 恒太郎(九州大学)
  • 千石 一雄(旭川医科大学産婦人科学講座)
  • 木下 勝之(医療法人九折会 成城木下病院)
  • 村上 節(滋賀医科大学 産科学婦人科学講座)
  • 和田 裕一(国立病院機構仙台医療センター産婦人科)
  • 小笠原 敏浩(岩手県立大船渡病院)
  • 鈴木 真(亀田総合病院)
  • 石川 睦男(慶愛病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
24,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における深刻な産科医師の減少、医療の質の変化、女性医師の増加により地方においては多くの病院が分娩の取り扱いができない事態に陥っている。わが国の周産期医療の現状を把握するための調査と資料収集を行い、今後の為にデーターベース作成を行った。この情報から判断すると、各地域において産科施設の集約化というより、産科施設の減少があり、患者は残った分娩施設に集中している。種々の方面から対策が考えられているが、未だ根本的な対策には成りえていない。
研究方法
本研究の中で拡大医療提供体制検討会議を開き、産科医の意見を聴取しさらには医療の受け手である国民の考えを把握するために市民フォーラムを開き、議論の中から今後の施策を検討した。各地方における取り組みと医師会、日本産科婦人科学会との連携の中で喫緊の周産期救急の問題点も検討した。さらには地域における医療資源の適正な分配のために外国の状況を調査し、我が国で実現可能か検討した。
結果と考察
産科医は根本的に不足である。医療安全の観点からは集約化は必然のこととして理解できたが、集約化された場合のシステム構築がいまだ不十分である。助産施設、あるいは院内助産所など、助産師の地域の周産期医療への関与が大変重要であり、助産師の教育、助産師の中でも専門性を高める機構を立ち上げる方策が必要である。女性産科医ますます多くなることを鑑み、女性医師に対する病院としての対応を全国的に調査した。最良の雇用関係を探ることとするとともに産婦人科医を辞めないシステムとそれを補完する労務環境を検討する事が重要である。母体救急では総合母子医療センター、分娩拠点病院を中心とした診療所、助産所を包含した分娩ネットワーク作りを推進することにより、妊産婦死亡の撲滅に連動し、かつ「快適で安心して出産できる」システムを実現することが可能と考えられる。さらに、恒常的な産科医の供給を保つシステム構築が必要と考えられるが、諸外国のシステムにて我が国への導入の可能性を模索した。さらに、希少なワークフォースを補完するために、助産師などのコメデイカルの有効活用と質の向上を担保するシステムを考えた。

結論
国の全体像を描き、地域の周産期医療のグランドデザインを描き、病院の質と連携の具体案を示し、そこで働く医師の労務環境の改善し、助産師などのコメデイカルとの共同作業が円滑に運ぶためには、社会全体の理解がなければ達成できない。

公開日・更新日

公開日
2009-09-17
更新日
-

文献情報

文献番号
200822006B
報告書区分
総合
研究課題名
分娩拠点病院の創設と産科2次医療圏の設定による産科医師の集中化モデル事業
課題番号
H18-子ども・一般-007
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 州博(東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座周産期医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 海野 信也(北里大学医学部産婦人科学)
  • 遠藤 俊子(山梨大学大学院医学工学総合研究部臨床看護学)
  • 福嶋 恒太郎(九州大学)
  • 千石 一雄(旭川医科大学産婦人科学講座)
  • 木下 勝之(医療法人九折会 成城木下病院)
  • 村上 節(滋賀医科大学 産科学婦人科学講座)
  • 和田 裕一(国立病院機構仙台医療センター産婦人科)
  • 小笠原 敏宏(岩手県立大船渡病院)
  • 鈴木 真(亀田総合病院)
  • 石川 睦男(慶愛病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における深刻な産科医師の減少、医療の質の変化、女性医師の増加により地方においては多くの病院が分娩の取り扱いができない事態に陥っている。産科医は根本的に不足である。マンパワー不足の中、医療安全の観点からは集約化は必然のことと理解され、集約化とそれに伴うシステム構築モデルを提示し、全国どこでも「快適で安心して出産できる」を将来的に達成することを目的とする。
研究方法
地域における周産期医療のモデルを呈示し、それと共に産科診療の現状を調査した。特に、集約化、産科病院の拠点化の現状とそれに伴うモデル達成への手段を検討とすると共に、付随する問題点を明らかにするために種々の解析を行った。東北6県において各医療圏毎に病院と診療所の数、分娩数、医師数の3年間の推移を平成16年と19年で比較した。宮城県および仙台市において分娩拠点病院の設定と、医師集約化、並びにそれに伴う医療サービスの提供のためにセミオープンシステムを導入した。さらに、医師が不足している地域には助産師外来、院内助産システムの導入を検討した。
結果と考察
分娩施設、医師の集約化は平成17年に厚生労働省ほかから47都道府県に通知のあったところであるが、その必要性は認められているものの、19年の時点では11県のみ達成されている。東北地方においては分娩施設の集約化が進んでいるが、広域を結ぶシステムが未整備ということもあり、分娩を扱う病院が無くなった影響で診療所における負担が増えている部分もあった。東北地方の病院でも医師の負担が軽減された地域と分娩の集中化により負担が増加した地域があり、そのような地域には今後、役割分担を考えたシステムを導入する必要がある。総合周産期医療センター、分娩拠点病院、非分娩病院、診療所とのネットワークはセミオープンシステムを利用したモデルを提示し、仙台市ならびに宮城県北地域で実行した。仙台市においては病院と診療所の連携に地域にクリテイカルパスを導入し、医療水準の均一化を図るとともに県北では産科医不在地域では助産師外来を解説してセミオープンシステムを導入した。北海道、東北では妊婦の通院に数時間かかる地域も存在し、このような地域でのよりよい医療サービスをどのように提供するかが今後の問題点である。

結論
分娩と産科医の集約化を図り、セミオープンシステムを導入した地域における病診連携モデルを提示し、実現させた。

公開日・更新日

公開日
2009-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200822006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
医療行政を主とした研究であり、専門的、学術的観点からの成果はない。
臨床的観点からの成果
産科医療における、日本産婦人科学会ガイドラインに基づいた、診療マニュアルを作製することにより、地域連携のクリニカルパスを作製した。これにより、臨床レベルの標準化が図られた。
ガイドライン等の開発
仙台市、宮城県において分娩拠点病院と診療所間、また助産師外来との間の連携を図るために、診療ノートを作製し、診療の共有を図った。また、周産期医療地域パスの一環として「診療マニュアル」を作製し、医療の標準化を図った。これにより、診療所と拠点病院の役割分担を明確にし、また救急の対応も確立した。
その他行政的観点からの成果
我が国では、産科医の減少が止まらない、また、女性医師の増加と相まって、産科に対する医師のワークフォースは極端に落ちている。特に、東北北海道を代表とした地方では危機的な状況となっている。これを解決するには喫緊の問題への対応と、5?10年を見据えた対策が必要である。
 そのなかで、地域における分娩拠点病院の創出と医師の集約化は是非とも免れないところである。また、医療安全、医師教育の観点からも重要である。本研究ではこのような事情を鑑みて、将来あるべき周産期医療システムモデルを構築し、実践した。
その他のインパクト
日本産科婦人科学会との共同で全国拡大医療提供体制検討委員会を2回(2009,1と開催した。地方の産科医療の現状を把握することができた。第一回は公開とし、「わが国お産のあり方を考える」という市民公開フォーラムと共催とした。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
海野信也
産科医療の現場の窮状をわかってほしい
世界 ,  (775) , 103-111  (2008)
原著論文2
海野信也
外国における分娩事情
周産期医学 ,  (38) , 285-289  (2008)
原著論文3
海野信也
周産期医療からみた10代出産
思春期学 ,  (26) , 146-149  (2008)
原著論文4
海野信也
周産期医療の現状と将来
産婦人科治療 ,  (96) , 443-452  (2008)
原著論文5
海野信也
「プロジェクト500」のすすめ-産婦人科が再生への道を歩みはじめるために- 
月刊新医療 ,  (403) , 15-  (2008)
原著論文6
亀井良政  海野信也
産科・周産期領域における救急医療の現状と展望
医学のあゆみ ,  (226) , 723-729  (2008)
原著論文7
海野信也
産科医療危機 その背景・現状・対策
公営企業 ,  (40) , 2-15  (2008)
原著論文8
海野信也
医療とリスク-医師とはどういう存在か
都市問題 ,  (99) , 9-16  (2008)
原著論文9
海野信也
わが国の周産期救急医療
エマージェンシー・ケア ,  (21) , 14-23  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-