乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究

文献情報

文献番号
200822005A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究
課題番号
H18-子ども・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立循環器病センター 周産期治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 池ノ上 克(宮崎大学医学部 産婦人科)
  • 岡村 州博(東北大学医学部 産婦人科)
  • 末原 則幸(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院)
  • 照井 克生(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 藤村 正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 阪井 裕一(国立成育医療センター 総合診療部)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
36,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界最高水準の周産期および新生児死亡率に比較して、いまだに高い、わが国の妊産婦死亡率と1-4歳の幼児死亡率に関して多角的に研究することを目的としている。
研究方法
【乳幼児死亡班】平成17・18年の指定統計「人口動態調査」死亡票の使用承認を得て、1-4歳の幼児死亡、全2,245件を閲覧し、詳細な解析を行った。【妊産婦死亡班】
 妊産婦死亡に関する3つの課題、(1)過少登録問題、(2)行政的フィードバック機構構築、(3)「診療関連死の死因究明制度」との関係に取り組んだ。
結果と考察
【乳幼児死亡班】①多くの幼児死亡が、地域の小規模施設で死亡していた。②基礎疾患のない死亡原因は感染症、呼吸器疾患、循環器疾患、神経疾患で44%を占め、不慮の事故などの外因性疾患は41%であり、地域差が存在した。③先天異常などの新生児関連疾患は全ての死亡の27%であったが、6%のみが出生以後医療施設を退院することなく、1-4歳で死亡した例であり、いわゆる「新生児医療の持越し例」は少数であった。④呼吸器、神経、循環器、先天異常が諸外国と比較して、わが国で多い疾患であり、今後の研究が必要と考えられた。【妊産婦死亡班】①平成17年の10-49歳の女性死亡届と過去1年間の出産届とのリンケージ調査で、公表の妊産婦死亡率よりも少なくとも35%多くの死亡(主に間接産科的死亡)が起こっていることを明らかにした。②周産期と救命救急医療のより良い連携案を提出した。③平成18年の妊娠関連の脳血管障害の全国調査を行い公表した。 ③平成元年から16年間に剖検輯報に載った193例の妊産婦死亡の解析し、これを基に「妊産婦死亡に対する病理検査および解剖ガイドライン(案)」を作成した。
結論
【乳幼児死亡班】わが国の幼児は小規模の病院で診療を受けて死亡した割合が優位に多い。また、本来、新生児あるいは乳児死亡となる症例が1-4歳児死亡となるために、わが国の1-4歳死亡が高くなっているとは言えず、他に高い原因が存在すると推測された。【妊産婦死亡班】研究班は、以下の5つの提言を行った。①死亡診断書に妊娠チェック欄を加えるなど、死亡発生の正確な把握の必要性。②脳血管障害、心疾患、および交通事故などの母体救急症にも対応できるように、周産期関連科以外の診療科との連携。③周産期医療における医師・助産師・看護師の協働体制(スキルミックス)の促進。④専門性・信頼性・中立性を担保した妊産婦死亡評価システムの構築。⑤妊産婦死亡に対する病理検査および解剖ガイドラインの作成。

公開日・更新日

公開日
2009-08-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200822005B
報告書区分
総合
研究課題名
乳幼児死亡と妊産婦死亡の分析と提言に関する研究
課題番号
H18-子ども・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
池田 智明(国立循環器病センター 周産期治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 池ノ上 克(宮崎大学医学部 産婦人科)
  • 岡村 州博(東北大学医学部 産婦人科)
  • 末原 則幸(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 中林 正雄(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院)
  • 照井 克生(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 藤村 正哲(大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 楠田 聡(東京女子医科大学 母子総合医療センター)
  • 阪井 裕一(国立成育医療センター 総合診療部)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界最高水準の周産期および新生児死亡率に比較して、いまだに高い、わが国の妊産婦死亡率と1-4歳の幼児死亡率に関して多角的に研究することが目的である。
研究方法
【妊産婦死亡班】妊産婦死亡に関する3つの課題、(1)過少登録問題、(2)行政的フィードバック機構構築、(3)「診療関連死の死因究明制度」との関係に取り組んだ。【乳幼児死亡班】平成17・18年の指定統計「人口動態調査」死亡票の使用承認を得て、1-4歳の幼児死亡、全2,245件を閲覧し、詳細な解析を行った。
結果と考察
【妊産婦死亡班】①平成17年の女性死亡届と出産届とのリンケージ調査で、公表の妊産婦死亡率よりも35%多くの死亡発生を明らかにした。②総合周産期母子医療センターの約2割が、脳出血などの母体救急症の受け入れが不可能であった③都道府県別妊産婦死亡率と周産期死亡率をグラフ化し、地方の要因を検討した。④妊娠関連の脳血管障害の全国調査を行い公表した。 ⑤「わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業」を行い、診療行為に関連した死因究明の在り方について検討した。⑥平成元年から16年間に剖検輯報に載った193例の妊産婦死亡の解析し、これを基に「妊産婦死亡に対する病理検査および解剖ガイドライン(案)」を作成した。【乳幼児死亡班】①多くの幼児死亡が、地域の小規模施設で死亡していた。②不慮の事故などの外因性疾患は41%であり、地域差が存在した。③先天異常などの新生児関連疾患は全ての死亡の27%であったが、6%のみが出生以後医療施設を退院することなく、1-4歳で死亡した例であった。「新生児医療の持越し例」は少数であった。④呼吸器、神経、循環器、先天異常が諸外国と比較して、わが国で多い疾患であり、今後の研究が必要と考えられた。
結論
【妊産婦死亡班】研究班は、以下の5つの提言を行った。①死亡診断書に妊娠チェック欄を加えるなど、死亡発生の正確な把握の必要性。②脳血管障害、心疾患、および交通事故などの母体救急症にも対応できるように、周産期関連科以外の診療科との連携。③周産期医療における医師・助産師・看護師の協働体制(スキルミックス)の促進。④専門性・信頼性・中立性を担保した妊産婦死亡評価システムの構築。⑤妊産婦死亡に対する病理検査および解剖ガイドラインの作成。【乳幼児死亡班】わが国の幼児は小規模の病院で診療を受けて死亡した割合が優位に多い。また、本来、新生児あるいは乳児死亡となる症例が1-4歳児死亡となるために、わが国の1-4歳死亡が高くなっているとは言えず、他に高い原因が存在すると推測された。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200822005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.H17年の10-49歳の女性死亡届と過去1年間の出産届とのリンケージ調査で公表の妊産婦死亡率よりも少なくとも35%多くの死亡(主に間接産科的死亡)が起こっている事を明らかにした。2.「わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業」を行い診療行為に関連した死因究明の在り方について検討し業務上過失到死的な事柄と教育的改善点とは別に述べる必要が判明。3.平成元年から16年間に剖検輯報に載った193例の妊産婦死亡の解析しこれを基にu妊産婦死亡に対する病理検査および解剖ガイドライン(案)」を作成。
臨床的観点からの成果
1.都道府県別妊産婦死亡率と周産期死亡率をグラフ化し地方の要因を検討した。2.平成18年の妊娠関連の脳血管障害の全国調査を行い公表した。3.多くの幼児死亡が地域の小規模施設で死亡していた。4.不慮の事故などの外因性疾患は41%であり、地域差が存在した。5.先天異常などの新生児関連疾患は全ての死亡の27%であったが、6%のみが出生以後医療施設を退院することなく1-4歳で死亡した例であった。6.「呼吸器、神経、循環器、先天異常が諸外国と比較してわが国で多い疾患であり、今後の研究が必要と考えられた。
ガイドライン等の開発
1.「わが国の妊産婦死亡に関する5つの提言」を発刊した(予定)。2.ホームページ:わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業を立ち上げた。3.ホームページ:母体の危機的状況への対応―症例と最近の知見―を立ち上げた。
その他行政的観点からの成果
1.妊産婦死亡班の研究結果がH20年度国会厚生労働委員会で答弁の資料となった。2.妊婦救急疾患に対して救急医療との連携モデルに着手していたが医政局主催「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」に発展。3.妊娠関連の脳血管障害発生の全国調査が上記行政会議における重要なデータとなった。4.1-5歳の死亡例の実態から小児救急医療体制に関して小児救命救急施設に集約することを提言。5.「持ち越し症例」はわずかであり現在行われている新生児医療の妥当性を証明
その他のインパクト
1.平成19年の妊産婦死亡率が3.1と5年前より半減し、世界トップクラスとなったことは、本研究班の最大の成果である。2.東京、大阪で発生した母体脳出血症例の受け入れ困難な事例は、社会的に不安をおよぼしたが、本研究班から生まれたデータは、適切な対策を立案するために多いに役立った。3.小児救急医療を改善することが危急的に必要なことが社会的に受け入れられた。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
6件
1.妊産婦死亡の結果がH20年度国会厚生労働委員会で答弁の資料となる。2.妊婦救急疾患に対して救急医療との連携モデルに着手していたが医政局主催「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」に発展。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
1.「わが国の妊産婦死亡に関する5つの提言」発刊予定。2.HP:わが国の妊産婦死亡の調査と評価に関するモデル事業の立上げ。3.HP:母体の危機的状況への対応-症例と最近の知見-の立上げ。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
J.T. Parer and T. Ikeda
A framework for standardized management of intrapartum fetal heart rate patterns.
American Journal of Obstetrics and Gynecology ,  (197) , 1-6  (2007)
原著論文2
池田智明
妊産婦死亡統計の読み方と問題点
日産婦医会報 ,  (11) , 10-11  (2008)
原著論文3
池田智明
わが国の妊産婦死亡
Clinical OB-GYNE ,  (12) , 8-11  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-20
更新日
-