超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発

文献情報

文献番号
200822003A
報告書区分
総括
研究課題名
超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発
課題番号
H18-子ども・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阿久津 英憲(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部生殖技術研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学・産科婦人科学)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室・産婦人科学)
  • 矢野 哲(東京大学医学部産科婦人科学教室・産科婦人科学)
  • 大須賀 穣(東京大学医学部産科婦人科学教室・産科婦人科学)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学医学部産婦人科学教室・不妊・生殖医学)
  • 井ノ上 逸朗(東海大学医学部・基礎医学系分子生命科学)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学臨床医学研究センター)
  • 岡部 勝(大阪大学微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
少子化・晩婚化を社会的背景に、本研究では、社会で活躍する年代の女性が罹患することが多い子宮内膜症等の生殖器疾患を対象に体系的に妊孕性改善に対する治療を検討し治療の最適化・標準化を図ることで生殖補助医療の質を上げることを臨床的な目的とするとともに、子宮内膜症等の生殖器疾患の分子レベルでの挙動を解析し疾患メカニズムを明らかにしていく。加えて、現在の生殖医療において大変重要な課題である、女性の年齢と出生率低下の関係において加齢の卵細胞の質への影響に関して科学的裏付けのある確かなエビデンスを獲得すべく、世界的な課題である生殖医療における加齢の問題に対応できる基盤を構築する。
研究方法
子宮内膜症の病因メカニズムと不妊機序の解明に関して多角的で、新規的なアプローチにより取り組み、子宮内膜症組織を用いシグナルカスケードの関連性から分子を明らかにし、その機能についても内膜症の発症と進展の関わりについて解析した。免疫学的新知見を子宮内膜症の病態メカニズム解明に取り入れ病態進展機序を解析する。子宮内膜症を合併する不妊症患者の合理的な生殖補助医療の治療体系について臨床データをまとめ治療ストラテジーの検定を行う。
結果と考察
これまで本研究班では子宮内膜症では様々なケモカイン、サイトカインがその発症、増殖に関わることを報告してきた。創薬に結びつけるために、薬剤と内膜細胞特異的な作用について、例えば血管新生抑制作用で知られるDienogestが内膜細胞の増殖を抑えることを専門誌に報告している。新たな治療法の展開へ着実に進んでいる。子宮内膜症合併不妊症に対する合理的で体系的な治療ストラテジーの確立を行い、基礎研究成果を実際の臨床応用に反映するため、子宮内膜症の不妊症治療の最適化・標準化を平行して進め、ガイドラインとして報告した。
結論
ライフスタイルの変化により出産時年齢は高齢化し生殖と加齢との関連性に係わる疾患や現象に対して、科学に基づいたエビデンスを与えこの社会に即した生殖医療システムを構築し国民に提供することを目指す。もう一つの課題として、生殖と加齢の問題がある。加齢と卵細胞の質における基礎研究では、加齢卵が分化多能性へ影響を及ぼすことが実験動物マウスを使い提示でき今後この領域の研究を展開するために重要な研究ツールを提供可能となった。

公開日・更新日

公開日
2009-07-27
更新日
-

文献情報

文献番号
200822003B
報告書区分
総合
研究課題名
超少子化時代のわが国における新たな不妊症原因の究明と社会に即した治療システムの開発
課題番号
H18-子ども・一般-004
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
阿久津 英憲(国立成育医療センター研究所 生殖医療研究部生殖技術研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 章(福島県立医科大学 医学部産婦人科学)
  • 吉村 泰典(慶應義塾大学 医学部産婦人科学)
  • 矢野 哲(東京大学 医学部産婦人科学)
  • 大須賀 穣(東京大学 医学部産婦人科学)
  • 久慈 直昭(慶應義塾大学 医学部不妊・生殖医学)
  • 井ノ上 逸朗(東海大学 医学部基礎医学系分子生命科学)
  • 柳田 薫(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
  • 岡部 勝(大阪大学 微生物病研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
晩婚化・出産時年齢の上昇にともない生殖年齢の期間に好発する生殖器疾患が不妊症の原因となりこれらの合併不妊症の基礎的・臨床的研究と生殖補助医療の適正な供給体制に関する臨床的研究は急務の課題である。本研究では、生殖器疾患のなかでも発症頻度高く不妊症女性の30%以上でその原因となっている子宮内膜症の合併不妊症に対し、挙児に至ることを目的とした治療の最適化・標準化を図る。同時に、病態機序解明と不妊症にいたる機序を解析しその分子メカニズムを明らかにしていくとともに新たな治療法の展開につなげることを目的とする。加えて、女性の年齢と出生率低下の関係において加齢の卵細胞の質への影響に関して科学的裏付けのある確かなエビデンスを獲得すべく、世界的な課題である生殖医療における加齢の問題に対応できる基盤を構築する。
研究方法
子宮内膜症組織を用いて解析を行う。本研究においては、各施設の倫理委員会の承認を受け、適切なインフォームドコンセント手続きを経て遂行している。子宮内膜症を合併する不妊症患者の合理的な生殖補助医療の治療体系について臨床データをまとめ治療ストラテジーの検定を行う。
結果と考察
これまで本研究班では子宮内膜症では様々なケモカイン、サイトカインがその発症、増殖に関わることを報告してきた。創薬に結びつけるために、薬剤と内膜細胞特異的な作用について、例えばジェノゲストやメトフォルミンが内膜症細胞の増殖を特異的に抑えることを専門誌に報告している。新たな治療法の展開へ着実に進んでいる。子宮内膜症合併不妊症に対する合理的で体系的な治療ストラテジーの確立を行い、基礎研究成果を実際の臨床応用に反映するため、子宮内膜症の不妊症治療の最適化・標準化を平行して進め、ガイドラインとして報告した。
結論
生殖器疾患合併不妊症の治療法の最適化・標準化に向けて、明確な治療ストラテジーを提示することができ、生殖医療ガイドラインとして提示できたことは社会に対して貢献できた。子宮内膜症に関して新たな分子メカニズムが解明でき、今後は更に基礎的研究を推進するとともに、臨床研究を治療法の最適化・標準化の確立に向け展開していく基盤が確立できた。加齢と卵細胞の質における解析では、加齢卵が分化多能性へ影響を及ぼすことが実験動物マウスを使い提示でき今後この領域の研究を展開可能となった。

公開日・更新日

公開日
2009-07-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200822003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
子宮内膜症発症機序について多くの新しい知見を得ることができた。内膜症細胞の進展に関わるサイトカイン因子、IL-17、IL-4、CD44などを明確にすることができ治療標的分子を明確にすることができた。子宮内膜症におけるTRAIL誘導性アポトーシス抵抗性があり、子宮内膜症アポトーシス機構を制御するメカニズムを明らかにした。子宮内膜症が腹腔内に進展する足場因子を明らかにし、増殖抑制機構の一端を明らかにした。加齢と卵子の質を解析するシステムとしてES細胞による解析が有用であることを示した。
臨床的観点からの成果
培養子宮内膜症細胞を利用して、新規のプロゲスチンであるジェノゲストが中枢作用機序のみならず子宮内膜症病巣局所に作用することを明らかにし局所療法も含めた治療法の拡大が期待される。子宮内膜症を合併する不妊症患者の合理的な生殖補助医療の治療指針を作成し最終的なガイドラインを提出した(「最適な不妊治療の選択指針」)。
ガイドライン等の開発
「顕微授精」生殖医療ガイドライン2007
「最適な不妊治療の選択指針」生殖医療ガイドライン2007
その他行政的観点からの成果
「iPS研究の現状と方向性 シナジスティックアプローチの必要性」
総合科学学術会議第47回生命倫理調査会, 東京, 1月31日, 2008.
総合科学学術会議第49回生命倫理調査会, 東京, 7月16日, 2008.

その他のインパクト
子宮内膜症の新たな治療法の可能性として新聞に掲載(毎日新聞 H18年度)
子ども家庭総合研究事業公開シンポジウム「安心して子どもを産み、健やかに育てるために」

発表件数

原著論文(和文)
22件
原著論文(英文等)
44件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
45件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Chen AE, Egli D, Niakan K, et al.
Optimal timing of inner cell mass isolation increases the efficiency of human embryonic stem cell derivation and allows generation of sibling cell lines.
Cell Stem Cell. , 4 , 103-106  (2009)
原著論文2
Hasegawa A, Osuga Y, Hirota Y, et al.
Tunicamycin enhances tumor necrosis factor-related apoptosis-induced ligand (TRAIL)-induced apoptosis in endometriotic stromal cells.
Hum Reprod , 24 , 408-414  (2009)
原著論文3
Hirota Y, Osuga Y, Hasegawa A, et al.
IL-1β stimulates migration and survival of first trimester villous cytotrophoblast cells through endometrial epithelial cell-derived IL-8.
Endocrinology , 150 , 350-356  (2009)
原著論文4
Sullivan S, Ichida JK, Umezawa A, et al.
Nuclear reprogramming and the control of differentiation in mammalian embryos. Elucidating nuclear reprogramming mechanisms: taking a synergistic approach.
Reprod Biomed Online , 16 , 41-50  (2008)
原著論文5
Ohta K, Maruyama T, Uchida H,et al.
Glycodelin blocks progression to S phase and inhibits cell growth: a possible progesterone-induced regulator for endometrial epithelial cell growth.
Mol Hum Reprod. , 14 , 17-22  (2008)
原著論文6
浅田弘法、古谷正敬、西尾浩,他
異所性子宮内膜症
産婦人科治療 , 96 , 241-247  (2008)
原著論文7
Fu L, Osuga Y, Morimoto C,et al.
Dienogest inhibits BrdU uptake with G(0)/G(1) arrest in cultured endometriotic stromal cells.
Fertil Steril. , 89 , 1344-1347  (2008)
原著論文8
Hasegawa A, Yoshino O, Osuga Y, et al.
High soluble CD44 concentration in peritoneal fluid in endometriosis.
Fertil Steril. , 89 , 1267-1268  (2008)
原著論文9
栁田薫、猪鼻達仁、藤倉洋子、他
エキスパートに学ぶ体外受精実践講座、顕微授精
臨床婦人科産科 , 62 , 951-956  (2008)
原著論文10
栁田薫
体外受精・顕微授精
日本医師会雑誌 , 137 , 31-34  (2008)
原著論文11
D. Y. Youn, D. H. Lee, M. H. Lim, et al.
Bis deficiency results in early lethality with metabolic deterioration and involution of the spleen and thymus.
Am J Physiol Endocrinol Metab. , 295 , 1349-1357  (2008)
原著論文12
Sullivan S, Dieter E, Akutsu H,et al.
Derivation of human embryonic stem cell lines.
Human Embryonic Stem Cells. , 35-51  (2007)
原著論文13
Takemura Y, Osuga Y, Yoshino O,
Metformin suppresses interleukin (IL)-1beta-induced IL-8 production, aromatase activation, and proliferation of endometriotic stromal cells.
J Clin Endocrinol Metab. , 92 , 3213-3218  (2007)
原著論文14
栁田薫、藤倉陽子、片寄治男、他
不妊因子からみたARTの成績
へるす出版 , 33 , 825-829  (2007)
原著論文15
Akutsu, H. Cowan, CA. and Melton, D.
Human embryonic stem cells.
Methods Enzymo , 418 , 78-92  (2006)
原著論文16
Hirota Y, Osuga Y, Koga k, et al.
The expression and possible roles of chemokine CXCL11 and its receptor CXCR3 in the human endometrium.
J Immunol. , 177 , 8813-8821  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-