全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究

文献情報

文献番号
200822001A
報告書区分
総括
研究課題名
全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究
課題番号
H18-子ども・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武谷 雄二(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 邦夫(社団法人 日本家族計画協会)
  • 安達 知子(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院産婦人科)
  • 新野 由子(医療経済研究機構研究部)
  • 竹下 俊行(日本医科大学産婦人科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の人工妊娠中絶実施件数・実施率は事実を反映したものとなっているのか、仮に人工妊娠中絶実施率が減少しているとしたら、その理由は何か。さらに減少を図る有効な方策とは何かなどについて科学的に実証することを目的とした。
研究方法
分担研究班毎に列挙した。1.「第4回男女の生活と意識に関する調査」は、層化二段無作為抽出法によって16歳から49歳の国民男女3,000人を抽出し1,468人からの回答を得た。また「緊急避妊ピル並びに低用量ピルの処方実態に関する調査」を実施し中絶減少要因を探った。2.避妊指導に特に熱心な開業医8名の施設で行われた中絶事例を収集するとともに、中絶後の避妊指導を徹底し、反復中絶の防止に有効な方法を模索した。最終的には避妊法指導ガイドラインを作成した。3.米国SIECUSが作成した包括的性教育ガイドラインをもとに、成人学習者のためのプログラム案の枠組み作りに取り組んだ。4.分娩事例を対象に人工妊娠中絶歴の有無、機械的子宮内操作既往の有無による妊娠分娩合併症の発生リスクについて集計・分析した。5.性交後72時間以内に緊急避妊ピルであるNorLevo®(1錠中にレボノルゲストレル0.75mgを含有)を2錠1回投与、投与日以降1週ごとに外来を受診してもらい詳細に調査した。
結果と考察
1.回答を寄せてくれた産婦人科医は、低用量経口避妊薬や緊急避妊法の存在が中絶減少の重要な要因であると結論づけた。2.反復中絶の防止には医療スタッフからの働きかけと効果的な避妊法の提供が必要であることから、製作した指導書を全国に配布し実効ある取り組みを展開する。3.わが国で使用できる効果的な避妊指導プログラムの枠組を作成したので有効活用を図る。4.中絶後の分娩転帰について検討しハイリスク妊娠分娩、偶発合併症の発生予防に新知見を得ることができた。5.緊急避妊ピルの臨床試験データを蓄積することによってその作用機序の解明に努めた。
結論
わが国における人工妊娠中絶実施件数並びに実施率は年々減少傾向にあるが、中絶を経験している女性は14.9%、うち25.4%が中絶を繰り返している。さらに、中絶を経験した女性は、「胎児に対して申し訳ない気持ち」45.1%、「自分を責める気持」13.0%と回答している。このような現状からは本研究班が取り組んできた研究成果を活かした中絶防止対策が今後も積極的に遂行されることを願わずにはおれない。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2009-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200822001B
報告書区分
総合
研究課題名
全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究
課題番号
H18-子ども・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
武谷 雄二(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 邦夫(社団法人 日本家族計画協会)
  • 安達 知子(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会総合母子保健センター愛育病院産婦人科)
  • 新野 由子(医療経済研究機構研究部)
  • 竹下 俊行(日本医科大学産婦人科学教室)
  • 中村 好一(自治医科大学公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 子ども家庭総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の人工妊娠中絶実施件数・実施率は事実を反映したものとなっているのか、仮に人工妊娠中絶実施率が減少しているとしたら、その理由は何か。さらに中絶減少を図る有効な方策は何かなどについて科学的に実証することを目的とした。
研究方法
1.層化二段無作為抽出法によって16歳から49歳の国民男女3,000人を抽出し06年と08年に「男女の生活と意識に関する調査」を実施した。2.日本産婦人科医会の協力を得て中絶件数の実態を調査した。さらに反復中絶を防止するための指導書を作成した。3.米国とスウェーデンでの訪問調査を踏まえて、米国SIECUSが作成した包括的性教育ガイドラインをもとに、成人学習者のためのプログラム案の枠組み作りに取り組んだ。4.大学病院における患者データをもとに、中絶経験の有無による各種疾患との関連や妊娠分娩合併症の発生リスクについて解析した。5.性交後72時間以内に緊急避妊ピルであるNorLevo®(1錠中にレボノルゲストレル0.75mgを含有)を2錠1回投与、投与日以降の追跡調査結果から緊急避妊の安全性と有効性、作用機序の解明に努めた。
結果と考察
1.全国的規模による実態調査、中絶手術実施施設に対する調査などを通して、わが国の人工妊娠中絶統計報告が実態との間に差異がないことを明らかにした。また低用量経口避妊薬や緊急避妊法の普及が中絶減少要因に寄与している可能性が高い。3.緊急避妊ピルは現在未承認薬であるが、世界で広く使用されているレボノルゲストレル単独剤が有用であり可及的速やかなわが国への導入が求められている。4.反復中絶の防止には、中絶を実施した医療機関での避妊指導が奏効するだけでなく、女性が主体的に使用できる近代的避妊法の提供と熱心な避妊指導が重要である。5.米国SIECUSが開発した包括的性教育ガイドラインをベースに成人学習者のためのプログラムの開発と実施。6.中絶手術後の後障害としては子宮外妊娠などが起こり得るが、器械的手術ではなく世界で普及している薬物を用いた中絶法の導入が急務である。
結論
わが国における人工妊娠中絶実施率は年々減少傾向にあるが、中絶を経験した女性は、「胎児に対して申し訳ない気持ち」45.1%、「自分を責める気持」13.0%と回答している。このような現状からは本研究班が取り組んできた研究成果を活かした中絶防止対策が積極的に遂行されることを願わずにはおれない。

公開日・更新日

公開日
2009-07-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200822001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究班では2006年と08年の2回にわたって、全国の15歳から49歳の男女3000人を対象とした「男女の生活と意識に関する調査」を実施しているが、これは層化二段無作為抽出法という疫学手法を用いて行われたもので信頼性の高いデータを得ることができた。これらの調査結果から、わが国には人工妊娠中絶経験者が14.9%、うち反復中絶が25.4%にも及んでいること、さらには衛生行政報告例による人工妊娠中絶実施件数が正確であることを明らかにできた意義は大きい。
臨床的観点からの成果
わが国の人工妊娠中絶実施件数・実施率は総数だけでなく20歳未満についても減少傾向が続いている。全国の産婦人科医を対象とした調査では、中絶減少要因として低用量経口避妊薬や緊急避妊法の普及を挙げる者が少なくなかった。さらに反復中絶を防止するには中絶手術直後からのこれら確実な避妊法の指導と提供が必須であると結論づけている。とりわけ緊急避妊についてはその作用機序を検討するとともに安全性と有効性を明らかにした。今後、これらの成果が臨床の場での避妊指導に役立つものと確信している。
ガイドライン等の開発
わが国には公に承認された緊急避妊ピルは存在しないが、その作用機序を明らかにするための研究に取り組むことができたことは、緊急避妊ピル承認後の適正使用ガイドラインの作成に際しても貴重な資料を提供することになる。さらに研究成果を踏まえて作成された「中絶を繰り返さないための避妊指導の実践書―確実な避妊のためのQ&A―」を日本産婦人科医会会員に無料配布する予定であり反復中絶の減少がさらに加速されるものと思われる。
その他行政的観点からの成果
本研究班の主テーマである人工妊娠中絶の減少にとどまらず、研究班が実施した「男女の生活と意識に関する調査」結果は、今後の性教育の在り方、新しい視点に立った少子化対策への重要かつ具体的な提言をすることとなった。特に少子化については、本調査結果からは婚姻関係にあるカップルのセックスレス(1ヶ月以上性交が行われていない)割合が一段と進行していることを明らかにしており、従来の少子化対策に加えて男女間のコミュニケーション・スキルを向上させる施策の遂行が期待される。
その他のインパクト
本研究班の成果の一部について、国内外のメディアを通じて100件を超える取り上げがあった。国外で報道され関心を向けられた一例を挙げれば、初交開始年齢が、「親に対する評価」、(中学生の頃の)「朝食摂取」、「親との会話」などと関係していること、わが国の少子化が性交頻度の少なさと無関係ではないことなどであった。平成20年11月に千葉で開催された第49回日本母性衛生学会学術集会、同月福岡で開催された健やか親子21全国大会家族計画自由集会でシンポジウムが開催され、本研究班の成果が発表された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
37件
その他論文(和文)
34件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
51件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
16件
緊急避妊セミナー、産婦人科医とコメディカルのためのOC啓発セミナー

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hirota Y, Osuga Y, Hasegawa A, et al.
IL-1{beta} stimulates migration and survival of first trimester villous cytotrophoblast cells through endometrial epithelial cell-derived IL-8. 
Endocrinology , 150 (1) , 350-356  (2009)
原著論文2
Hasegawa A, Osuga Y, Hirota Y, et al.
Tunicamycin enhances tumor necrosis factor-related apoptosis-induced ligand (TRAIL)-induced apoptosis in endometriotic stromal cells.
Hum Reprod , 24 (2) , 408-414  (2009)
原著論文3
OuYang Z, Hirota Y, Osuga Y, et al.
Interleukin-4 stimulates proliferation of endometriotic stromal cells.
Am J Pathol , 173 (2) , 463-469  (2008)
原著論文4
Osuga Y, Hirota Y, Taketani Y.
Basic and translational research on proteinase-activated receptors: proteinase-activated receptors in female reproductive tissues and endometriosis.
J Pharmacol Sci , 108 (4) , 422-425  (2008)
原著論文5
Hirata T, Osuga Y, Hamasaki K, et al.
Interleukin (IL)-17A Stimulates IL-8 Secretion, Cyclooxygensase-2 Expression, and Cell Proliferation of Endometriotic Stromal Cells.
Endocrinology , 149 (3) , 1260-1267  (2008)
原著論文6
Takemura Y, Osuga Y, Yoshino O, et al.
Metformin suppresses interleukin (IL)-1beta-induced IL-8 production, aromatase activation, and proliferation of endometriotic stromal cells.
J Clin Endocrinol Metab , 92 (8) , 3213-3218  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-